相続人全員で相続放棄したのに、放棄前の貯金の引き出しが相続財産管理人の弁護士に発覚してしまいました。
就職や結婚で実家と遠く離れて暮らし、忙しさにまぎれて疎遠になっているというのはよくあることです。そうこうするうちに親が遺言書を残さず亡くなり、高齢の親に代わって財産管理をしていた兄弟から、これがお前の分だと示された遺産が、予想よりはるかに少なかったらどうでしょう。「本当にこれだけしかないの?」と疑うのは当然です。
財産管理をしている兄弟に一方的に相続分を提示されても、言いなりになる必要はありません。遺言書や、介護や生活支援にいくら払うという親子の契約書の様なものがないか、あらためて確かめましょう。公正証書遺言を作っている場合は、公証役場に問い合わせれば存在がわかります。有効な遺言書や契約書がなければ、兄弟は、法定相続分で平等に相続するのが原則です。
財産隠しや生前贈与は、税務署の調査でバレる可能性が高く、その場合、隠していた本人はもちろん他の相続人にも追徴課税の可能性が出て来ます。その意味からも、遺産総額を把握する必要があります。
隠し口座などを探したり、親の預貯金を不当に引き出していないか調べる(入出金履歴や領収書、場合によっては親のカルテなどを取り寄せる必要があります)のは、知識や経験がないとむずかしく、手間もかかりますので、相続問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
相続財産の総額がわかれば、財産目録を作成し、遺産分割協議で各自の相続分を算出し直します。相続税の申告・納税期限は、被相続人の死を知った日の翌日から10ヶ月以内ですから、間に合いそうにない場合は、①当方が把握している相続財産を前提に、未分割として申告・納税する(申告する相続人によって相続財産が異なり税務調査の対象となりやすくなります)、②相続財産の総額や明細を他の相続人と認識を一致させた上で未分割として申告・納税する(分割協議には時間がかかるものの、相続財産の範囲について争いが無い場合はこちらで進めます)のいずれかで対処し、遺産分割協議が整った段階で税金の過不足を税務署に申請して取り戻し(更正の請求)、または追加で納税(修正申告)します。こういった一連の作業は、法と税務の知識が必要ですので、弁護士や税理士にご相談ください。