相続人全員で相続放棄したのに、放棄前の貯金の引き出しが相続財産管理人の弁護士に発覚してしまいました。
仲の良かった兄弟姉妹が、離れて暮らすうちに疎遠になり、何年も連絡さえとっていないというのはよくあること。そのうち、子どものいない兄弟姉妹が亡くなり、残った兄弟姉妹の間で相続にまつわるトラブルが発生するのは珍しいことではありません。配偶者に多くの遺産を遺すことは問題ないのですが、兄弟姉妹の相続に不公平がある場合、特に、亡くなった方が認知症を患っていた様なときは、誰かが自分の有利になるように働きかけた可能性が大いにあるので、弁護士などの協力を得て、遺言書が有効かどうか、隠し財産がないか、などの確認をする必要があります。
遺言書が法的に有効な形式で書かれたものでも、その後作成し直した、新しい遺言書が存在すれば、そちらの内容が優先されます。他の相続人が、自分に不利な内容の新しい遺言書を隠してしまう場合も考えられますので、確認が必要です。
今ある遺言書が公正証書遺言なら、隠された新しい遺言書も公正証書遺言の可能性があります。その場合は、相続人が公証役場に問い合わせれば、検索して確認してもらえます。自筆証書遺言があるかは、亡くなった方の自宅や入居していた施設などの荷物を探すことが重要です。もし自筆証書遺言らしきものがあった場合、その内容を確認するのであれば、日付や内容など、細かい証拠を集めて検討する必要がありますから、どちらにしても、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。
被相続者に配偶者がおらず、兄弟姉妹の1人が世話をしていたような場合、遺言書に書かれていない財産がないか、預金通帳を隠していないか、資金援助など多額の生前贈与がなかったか、などを調べ、正当な相続財産を洗い出します。財産隠しや生前贈与は、税務署の調査でバレる可能性が高く、その場合、修正申告を迫られ、隠していた本人ばかりか、関与していなかった他の相続人にも追徴課税の可能性が出てきます。
遺言書には多大な影響力がありますから、遺言者は合理的な判断能力(遺言能力)が必要であるとされています。そこで、遺言者が認知症などで遺言能力がなかったと判断された場合、遺された遺言書は無効になる傾向にあります。認知症を患っておられた場合、弁護士が、かかりつけの病院のカルテを取り寄せて、有効性の確認をする場合もあります。