相続の基礎知識

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遺言書の確認

被相続人が亡くなられたら、遺言書が残されているかどうか確認します。
遺言書が・見当たらない・法的に無効・遺産分割の指定がない・内容に不満のある相続人がいる、などの場合は、次の項でご説明する『法定相続人の確認』や『遺産分割協議』をする必要があります。

遺言書が見当たらないときは?

故人が遺言書を書いていないか、故人が書いてどこかに保管しているか、または誰かに隠されている可能性が考えられます。

書いていない

故人の、生まれた時から死亡までの戸籍謄本を集めて『法定相続人の確認』をし、『遺産分割協議』をする必要があります。『法定相続人の確認』と『遺産分割協議』は別の項でご説明しています。

書いている可能性がある

探さなくてはならないのですが、実際にはなかなかむずかしいことです。金庫や銀行の貸金庫に保管したり、親しい友人やきょうだいに預けている可能性もありますし、弁護士や信託銀行に保管してもらっている場合もあります。遺言書が本にはさまれているケースもありましたし、ベッドとマットレスとの間にあったケースもありましたし、コートのポケットに入っていたこともありましたので、入念に探す必要があります。

公正証書遺言を作った可能性がある

最寄りの公証役場に問い合わせると、検索システムを利用して、作成した(原本を保存している)公証役場を探してもらえますので、そこへ、公正証書遺言のコピー(謄本)を請求します。
※秘密証書遺言も公証役場で検索できますが、原本の保存はされていません。

≪原本請求に必要な書類など≫
  • ・故人の死亡が確認できるもの(除籍謄本など)
  • ・請求者が相続人であることが確認できるもの(戸籍謄本)※相続人でない遺言執行者が請求する場合は、公証役場にお問合せください。
  • ・請求者の本人確認書類(マイナンバーカード、健康保険証、運転免許証など)
  • ・実印と印鑑登録証明書

誰かが隠しているようだ

遺言書を隠したことが発覚すると、遺産相続の資格がなくなります(民法891条5号)。遺言書がなければ、相続人全員で『遺産分割協議』をします。

遺言書や遺言が入っているかもしれない封筒が見つかったときは?

自筆証書遺言や遺言書らしきものが入っている封筒が見つかったら、開封せずに家庭裁判所に持って行き、『検認手続』をする必要がありますのでご注意ください。

公正証書遺言が見つかった

公証役場で公証人が作成した遺言ですから、『検認手続』や『相続人の調査』などをしなくても、すぐに遺言内容を実行できます(3分の1はAさんに、3分の2はBさんに遺贈するなどの割合的包括遺贈の場合には、協議を要します)。

自筆証書遺言が見つかった

遺言書は、封筒に入れていなければいけないという法律はないので、封筒に入っていなくても①被相続人が手書きして、②日付を入れ、③署名・押印するなど民法で定められた書式通りに書いているものは遺言書の効力が認められます。家庭裁判所で『検認手続』を行なわなければ、遺言内容を実行できません。

遺言書が入っていると思しき封筒が見つかった

開封せずに検認の申立てをする必要があります。検認手続前に開封してしまうと、過料の制裁のほかに、せっかくの遺言について効力がないとされてしまうことがあります(封筒の封の箇所に押印があり、中の遺言書に押印がない場合、封筒と遺言書を一体と見て有効とした裁判例があり、もし、上記事案で開封してしまうと、遺言書を入れ替えられた可能性が残り、遺言の効力が認められないことになります)。

押印がない遺言書が見つかった

押印がない場合には、遺言書の効力は認められませんが、当該書類が相続開始後すぐに見つかったという状態を保存するという意味で、検認の申立てをしたほうが良いでしょう。例えば、遺言無効確認請求訴訟、遺留分侵害額請求訴訟などでは、遺言者の生前の意思を証拠から探ることになるので、遺言としての効力は無くても、上記書類は、有力な証拠となります。しかし、往々にして、死亡後に筆跡を似せて作られたという攻撃を受けることがあるので、遺言者が書いたと思しき相続に係る書面については検認の申立てをしたほうが良いでしょう。

『検認手続』とは?

遺言書の偽造や変造を防ぐため、相続人立合いのもと、家庭裁判所の裁判官が遺言書を開封し、遺言書が確かに存在し、日付は死亡前で、署名・押印がある、などを確認します。封がされていなくても、公正証書遺言以外は、この手続が義務付けられています。『検認手続』を受けずに、勝手に開封や遺言の実行をすると、5万円以下の過料が科せられ、改めて検認手続を受けなければなりません。
検認を受けるには、申立書、故人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)、故人の住民票除票、相続人全員の戸籍謄本が必要で、申立てをして約1ヶ月後に検認期日が指定されます。
ただしこの手続きは、遺言が有効かどうかということの確認手続ではなく、遺言書の状態を確認・固定する手続です。前述のとおり、押印がない遺言であっても、遺言者の意思を知ることができるものである場合には、検認の申立てをしたほうが良いでしょう。

遺言の内容がおかしいな?と思ったら

故人がこんな遺言を書くはずはない、など、内容に疑問を持ったら、弁護士に相談するなどしてすぐに行動を起こしましよう。
例えば、認知症で判断力の無くなった被相続人に、相続人の誰かが、自分に都合の良い内容の遺言書を書かせたことが立証できれば、たとえそれが公正証書遺言といえども、無効になる可能性があります。
ただし、裁判で争うとなると、証拠となる、要介護認定の調査票や主治医の診断書などが必要ですから、それらが保存されているうちに(自治体の保存期間3年のため、亡くなって3年経過していると収集ができないおそれがあります)、収集する必要があります。また、病院のカルテや介護施設の介護記録などにも、職員と遺言者との会話が記載されて、そこに相続に係る考えが記載されていたり、遺言をする能力の欠如をうかがわせる記載があることもあるので、これらの資料を収集する必要があります。
当事務所では、相続問題についての10分の無料電話相談クリックで案内ページへ移動を実施していますので、相続の手続きやトラブル対応など、お気軽にご相談ください。

弁護士の現場から

こんなご相談がありました

病院で亡くなったお父様のベッドの下から、手書きの遺言書が出て来ました。何かの書類の裏に、家族への恨みつらみと遺産分割の方法が脈絡無く書き連ねられており、故人の遺志が読み取りにくい上、修正箇所には訂正印も押されていない状態でした。ただ、署名と押印、日付はありました。
この遺言書が有効かどうか、相続人の間でもめたため、相続人のお一人であるBさんが、当事務所の10分の無料電話相談を利用されました。

当事務所からのアドバイスは

  1. 手書きの遺言書は、まず最初に、家庭裁判所で検認手続をする必要があること。
  2. 検認手続の方法について。
  3. 検認手続では、遺言書が有効かどうかの判断はしないので、遺言無効・有効確認訴訟を提起するかは弁護士などの専門家への相談を勧めること。

まとめ

当事務所に相談に来られたBさんは、裁判で争うことを希望され、裁判で有効との判決を得ました。
自筆証書遺言は、公正証書遺言と違い、比較的短時間で手軽に作成できるので、入院中などの事情がある方にもお勧めできます。ただし、文章の書き方など、作成するにあたって注意しなければならないポイントがあるので、ご家族が後で困らない明確な内容にしておくためには、弁護士などのプロにしっかりと確認やアドバイスを受けて書くことが大切です。一例を挙げると、「◯◯に△△△をあげる」と書くと、遺言執行人が必要ですが、「◯◯に△△△を相続させる」と書くと、執行人抜きで相続手続きが可能になります。
また、ご家族への思いは、遺産の分配とは別に最後にまとめて書かれると、内容が整理できてお気持ちが伝わりやすくなります。

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