相続でモメている兄弟たちが葬儀の際の立替え金を返してくれません。
『相続の開始』と『死亡届』
相続手続には期限が決められているものもありますが、期限の起点となる『相続の開始』と、最初の手続である『死亡届』についてご説明します。
『相続の開始』とは?
民法(882条)では、「相続は死亡によって開始する」と定めています。
つまり、財産を残す方(被相続人)が亡くなった瞬間が『相続の開始』になり、これより相続人は、死亡届の提出から始まる様々な手続を、決められた期限内にクリアしていかなければなりません。
『相続の開始』の日時は、次にご説明する『死亡届』の、「死んだとき」の欄に記入して提出し、戸籍簿に記載されます。
『死亡届』とは?
『死亡届』は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡された場合は3ヶ月以内)に、市区町村役場に提出しなければなりません。期限を守らないと、制裁を受ける場合もあります。
届出用紙は1枚で、右側が死亡を確認した医師が作成する死亡診断書(死体検案書)、左側が届出人の書く死亡届になっています。死亡診断書の作成後に医師から渡されますので、死亡届に必要事項を記入して提出します。用紙は市区町村役場や葬儀会社でももらえますが、死亡診断書(死体検案書)が作成されていないと受け付けてもらえません。
事故死・自殺・突然死・原因不明死などの場合は、死亡診断書ではなく死体検案書となり、医師が異状死ではないと判断して作成します。
提出は基本的に誰が行ってもよく、葬儀業者などに代行してもらっても問題ありません。
死亡診断書は、生命保険の請求などで必要になることがあるので、コピーを取っておきましょう。
死亡していたことを後になって知った場合は、どうなりますか?
相続の放棄などは、相続開始を「知った日」を起算日としています。そのため、戸籍簿に記載された死亡(または死亡推定)の日付と、相続放棄の熟慮期間の起算日や遺留分侵害額請求の消滅時刻の起算日とは一致せず、ズレが生じることになります。
弁護士の現場から
Aさんが、長らく音信不通だった弟さんの死亡を知ったのは、警察からの連絡でした。弟さんは独身の一人暮らしで、孤独死されていたのです。どうしていいかわからなかったAさんは、当事務所の10分の無料電話相談を利用されました。
- 弟さんの死亡届を出すこと。Aさんの住所地や弟さんの亡くなった病院の住所地などの市町村役場でかまいません。
- 死亡の事実を知った日の証拠として、警察からの連絡日を記録しておくことが重要です。
- 弟さんの相続財産(借金などの債務も)を調べること。場合によっては、期限内に相続税申告や相続放棄の手続が必要です。
まとめ
被相続者(遺産を残される方)が亡くなると、法律上、相続が開始します。
死亡届から始まる必要な手続が色々あり、期限が定められているものもありますので、計画的に対応し、必要なら、早めに弁護士や司法書士などに相談しましょう。
裁判になった場合は、弁護士しか対応できませんので、もめそうだと思われたら、最初から弁護士に相談されることをお勧めします。
Aさんの例では、他に相続人がいなかったので、相続財産や負債の有無を確認し、相続するかどうかを判断して解決しました。しかし、もし、弟さんに内縁の配偶者がいたら、相続手続が複雑になり、もめる可能性もあったと思われます。
主なタイムスケジュール
- 戸籍謄本の収集・・・・約3週間
- 相続財産の調査・・・・3~5ヶ月
- 遺産名義確認等の裁判・・・・約1年
- 遺産分割の交渉・・・・3~6ヶ月
- 遺産分割の調停・・・・1~1.5年
日数は弁護士に依頼した場合の目安です。ご自身で手続をされると、一般的にはさらに手間と時間がかかります。