借金の遅延損害金は免除できる?知っておきたい仕組みと対処法を徹底解説
任意整理
2025 . 10.7
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返済が遅れてしまい、督促状に記載された「遅延損害金」の金額を見て驚いた経験はありませんか?
通常の利息とは別に日々膨らんでいくこの金額に、「このままでは到底払えない」「どうにかして免除してもらえないだろうか」と、強い不安を感じている方も多いでしょう。
結論から言えば、遅延損害金を免除または減額することは不可能ではありません。
しかし、それには正しい知識と適切な手順が必要です。
遅延損害金は、返済期限を過ぎた場合に発生する、いわば「返済が遅れたことへのペナルティ」です。
支払い負担をさらに増やす原因となり、放置すれば元金以上に請求額が膨らんでいく恐れもあります。
さらに、長期にわたり対応を先延ばしにすると、信用情報への悪影響(ブラックリスト状態)や、最終的には訴訟・財産差し押さえといった深刻な事態を招きかねません。
この記事では、まず遅延損害金の基本的な仕組みから、具体的な計算方法と法律で定められた上限利率、放置するリスクまでを分かりやすく解説します。
そのうえで、遅延損害金の免除や減額を目指すための具体的な対処法(「時効の援用」「債務整理」)を、それぞれのメリット・デメリットと共にくわしくご紹介します。
遅延損害金の考え方や発生する仕組みについて説明します。
まずは利息や延滞金との違いを確認し、なぜ免除されにくいかを知りましょう。
遅延損害金とは、契約で定められた返済期限を守れなかった場合に発生する損害賠償の一種です(民法第419条)。
支払う側からすると“ペナルティ”というイメージが強いですが、お金を貸した債権者からすれば「期日通りに返済されなかったことで生じた損害を補填してもらうための正当な権利」です。
したがって、消費者金融や銀行からのカードローンだけでなく、クレジットカードの支払いや家賃の滞納、公共料金や税金の滞納時にも同様の賠償金が発生するケースがあります。
そもそも遅延損害金と利息は混同されやすいですが、発生するタイミングと目的が全く異なります。
利息
契約で定められた返済日まで、お金を借りていることへの対価として発生します。
遅延損害金
契約で定められた返済日の翌日から、返済が遅れていることへの賠償として発生します。
返済が遅れると、それ以降は通常の利息の代わりに、より高い利率の遅延損害金が加算されていくのが一般的です。
放置すればするほど請求額が雪だるま式に増えていくため、一日でも早い対応が重要になります。
遅延損害金、利息、延滞金は似ていますが、以下のような違いがあります。
このように、一般的に「延滞金」という言葉は、公共料金や税金の未納時に使われることが多く、民間の貸し借りでは「遅延損害金」が用いられます。
この記事では、主に民間の貸し借りにおける遅延損害金について解説します。
遅延損害金は、契約で定められた返済期日の翌日から発生し、実際に弁済(返済)を行う日まで1日単位で計算されます。
多くの場合、契約書には支払いが遅れた場合に適用される「遅延損害金利率」が明記されており、その利率に基づいて請求されます。
もし契約書に遅延損害金の定めがない場合でも、債権者は法律で定められた「法定利率」に基づいて遅延損害金を請求することができます。
法定利率は、以前は年5%の固定でしたが、2020年4月1日の民法改正により変動制となり、市中の金利動向に合わせて見直される仕組みになっています。
一度遅延損害金の支払い義務が発生すると、債権者からの電話や書面による督促が始まります。
特に長期間放置すれば、請求額が拡大するだけでなく、後述する信用情報への悪影響(ブラックリスト状態)を招く重大なリスクを伴います。
遅延損害金は、債権者にとっては法律にもとづく正当な権利です(民法第419条)。
「約束の日に返してもらえなかった」ことで生じた損害の埋め合わせであるため、「支払いが苦しいから」といった個人的な事情だけを理由に、債権者が一方的に免除に応じる義務はありません。
これが、単純な交渉で遅延損害金を0円にしてもらうことが難しい主な理由です。
また、貸金業者もビジネスとして貸付を行っているため、安易に免除を認めると他の債務者との公平性が保てなくなるという側面もあります。
しかし、これは「絶対に免除されない」という意味ではありません。
債権者側にも「全く回収できないよりは、多少減額してでも回収できた方が良い」という事情があります。
そのため、支払う意思があることを誠実に示した上で、後述する「直接交渉」や「債務整理」といった法的な手続きを踏むことで、減額や免除が認められる道が開けることがあります。
遅延損害金の金額がどのように計算されるか理解することで、ご自身の状況を客観的に把握しやすくなります。
ここでは計算式と、法律で定められた利率の上限について解説します。
遅延損害金は、以下の計算式で算出されます。
遅延損害金 = 借入残高(元金) × 遅延損害金利率(年率) ÷ 365日 × 延滞日数
例えば、元金50万円、遅延損害金利率が年20%のカードローンで60日間延滞した場合、 50万円 × 0.20 ÷ 365日 × 60日 = 約16,438円 もの金額が、本来の返済額に上乗せして請求されることになります。
延滞日数が長引くほど、この金額はさらに増大していきます。
「ペナルティだからいくらでも高く設定できる」というわけではありません。
遅延損害金の利率には、利息制限法という法律によって明確な上限が定められています。
利息制限法第4条では、遅延損害金の上限利率は、通常の利息の上限利率の1.46倍までと規定されています。
通常の利息の上限は、元金の額に応じて以下の通りです(利息制限法第1条)。
• 元金10万円未満:年20%
• 元金10万円以上100万円未満:年18%
• 元金100万円以上:年15%
これを1.46倍すると、それぞれの遅延損害金の上限利率は以下のようになります。
ただし、利息制限法第7条により、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者からの借入れについては、元金の額にかかわらず一律で年20%が上限と定められています。
多くの消費者金融やカードローンの契約で、遅延損害金利率が「年20.0%」と設定されているのはこのためです。
もし、これを超える利率で契約させられている場合、その超過部分は法律上無効であり、支払う必要はありません。
約定利率とは、消費者金融や銀行との契約書で個別に定められた利率のことです。
遅延損害金を計算する際には、まずこの約定利率が適用されます。
契約時に渡される契約書の控えや会員ページなどで確認することができます。
一方で、法定利率は民法で定められた利率を指します。
これは、友人間の貸し借りなど、契約書で利率の取り決めがなかった場合に適用されます。前述の通り、2020年の民法改正以降は変動制となっています。
消費者金融などからの借入れの場合、ほぼ全てのケースで契約書に約定利率が明記されているため、法定利率が直接適用されることは稀です。
計算式は「借入残高 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365日」が基本です。
例えば、借入残高が50万円、遅延損害金利率が年20%、延滞日数が30日間の場合は、以下のようになります。
50万円 × 0.20(20%) × 30日 ÷ 365日 ≒ 8,219円
この金額が延滞日数に応じて日々積み上がっていきます。
これが90日(約3ヶ月)になると約24,657円にもなります。
長期的に放置すれば数万円、数十万円単位で増える可能性があり、完済までの道のりがさらに遠のいてしまいます。
2020年4月1日の民法改正で、法定利率が年5%の固定制から3年ごとに見直される変動制に変わりました(民法第404条)。
この改正は、主に契約書で利率の定めがない個人間の貸し借りなどで適用される法定利率に関するものです。
多くの消費者金融やクレジットカードの契約では、前述の通り上限である年20%の「約定利率」が定められているため、この民法改正による直接的な影響は限定的です。
支払いが滞っているのに対策を取らず放置すると、事態は悪化の一途をたどります。
ここでは具体的な3つのリスクを解説します。
遅延損害金の支払いを放置していると、電話やハガキによる督促が続くだけでなく、債権者からの信頼を完全に失うことになります。
その結果、以下のような深刻な事態に発展する可能性が非常に高くなります。
返済を2〜3ヶ月以上延滞すると、その事実が信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)に「異動情報」として登録されます。
これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
一度ブラックリスト状態になると、以下のような影響が出ます。
この記録は、滞納を解消してから5年~7年程度は消えません。
ただ、登録期間を経過した後も新たな借り入れやクレジットカードの与信審査に通らない可能性もあります。
くわしくは、次のコラムで解説しています。
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「信用情報(ブラックリスト)の情報は「削除」できるのか(ローン・クレジットを組むと登録される信用情報機関について解説)」
返済が長期的に滞ると、多くの契約では「期限の利益の喪失」という状態になります。
これは「分割で返済できる権利」を失うことを意味し、貸金業者やカード会社は残っている借金の元金、利息、そしてその時点までの遅延損害金の全てを一括で返済するように請求してきます。
この一括請求に応じられない場合、債権者は裁判所に訴訟(貸金返還請求訴訟)や支払督促の申立てといった法的手続きを開始します。
裁判所から届いた通知(訴状や支払督促)も無視していると、債権者の主張が全面的に認められた判決等が下され、最終的には強制執行(差し押さえ)がおこなわれます。
差し押さえの対象となるのは主に以下の財産です。
こうなると、自身の意思とは関係なく財産を失い、生活の基盤が大きく揺らぐことになります。場合によっては家族にも影響が及ぶ可能性があります。
膨らんでいく遅延損害金にどう対処すればよいのでしょうか。
免除や減額を実現するための方法は、大きく分けて「①消滅時効の援用」、そして最も効果的な「②債務整理」の2つです。 (※債務整理については次の5章で詳しく解説します)
一般的に、債権者にとって遅延損害金は正当な権利であるため、単純に「免除してください」というお願いが通ることはまずありません。
しかし、法的な根拠や適切な交渉手順を踏むことで、状況を打開できる可能性があります。
消費者金融やクレジットカード会社からの借金には、消滅時効という制度があります。
原則として、最後の取引(返済や借入)から5年間、一度も返済せず、かつ債権者から裁判上の請求もされていない等の条件を満たした場合、時効が成立します(民法第166条)。
時効が成立すれば、元金・利息・遅延損害金の全ての支払い義務がなくなります。
しかし、注意点が3つあります。
時効の判断は法的に複雑なため、必ず弁護士や司法書士に相談してください。
遅延損害金を含めた借金全体を、現実的に解決するための最も強力な方法が債務整理です。債務整理は、法律に基づいて借金の減額や免除を目指す手続きの総称です。
債務整理には主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。
それぞれで遅延損害金の扱いやメリット・デメリットが異なります。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、各債権者に「受任通知」が送付されます。
この通知を受け取った貸金業者は、法律により債務者本人への直接の取り立て(電話、訪問、手紙など)が一切できなくなります。
これにより、精神的なプレッシャーから解放され、落ち着いて生活の再建に集中できるという大きなメリットがあります。
任意整理は、弁護士や司法書士が代理人となり、債権者と直接交渉する方法です。
交渉では、和解日までの遅延損害金と、これから発生する将来利息を原則として全額カットし、残った元金のみを3〜5年(36〜60回)程度の分割で返済していく内容の和解を目指します。
貸金業者はこの交渉に応じてくれることが多く、借金返済の出口が見え、精神的にも経済的にも負担を大きく減らすことができます。
裁判所を通さないため、手続きが比較的早く、費用も抑えられるのが特徴です。
ただし、あくまで相手の合意があって初めて成立する方法であり、必ずしも話し合いによる解決が成功するとは限りません。
交渉を成功させるには、感情的に「払えません」と訴えるだけでは不十分です。
客観的な資料に基づいて、返済の意思を示すことが何よりも重要です。
これらの準備をしっかり行うことで、交渉の場で説得力が増し、債権者に「この計画なら回収できるかもしれない」と前向きに検討してもらいやすくなります。
個人再生は、裁判所に申立てを行い、借金総額を大幅に圧縮(例えば500万円の借金が100万円になるなど)してもらう手続きです。
圧縮後の借金には、基本的に再生手続開始後に発生した遅延損害金や将来利息は含まれません。
住宅ローンが残っていても「住宅ローン特則」を利用すれば、マイホームを手放さずに他の借金だけを整理できるという大きなメリットがあります。
借金総額が大きく、任意整理では完済が難しい場合に非常に有効な手続きです。
ただし、手続きが複雑であり、継続的な収入が見込めることが条件となります。
自己破産は、裁判所に「支払不能」であることを認めてもらい、「免責許可決定」を得ることで、税金など一部の債務を除き、原則として全ての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。
当然、遅延損害金も全て免除の対象となります。
借金の額が大きく、返済の目途が全く立たない場合の最終的な救済手段です。
一定以上の価値のある財産(目安として20万円以上)は手放す必要がありますが、生活に必要な最低限の財産は手元に残すことができます。
これらの債務整理において、ご自身に最適な解決方法を選択することが難しいときは、一度弁護士に相談されてみると良いでしょう。
遅延損害金に関してよく寄せられる質問にお答えします。
返済期日までは「利息」が、返済期日の翌日からは「遅延損害金」が発生します。
通常は「期日までの利息」と「期日を過ぎてからの遅延損害金」については支払いが必要です。
時効期間(原則5年)のカウントが始まる「起算点」は、次の通りです。
・返済期日
・最後に返済した日
・期限の利益を喪失した日
ただし、業者からの通知を無視して裁判を起こされると時効は更新(リセット)されてしまうため、時効の成立を待つのはリスクが高い方法です。
任意整理で和解した内容を2回以上(多くの和解書に記載あり)滞納してしまうと、「期限の利益」を再び喪失し、残額と新たな遅延損害金の一括請求を受ける可能性があります。
その場合は、再度任意整理(再和解)を交渉するか、個人再生や自己破産といった別の手続きを検討することになります。
支払いが難しくなった時点で、すぐに依頼した専門家へ相談することが重要です。
変動するのは、契約書で利率の定めがない場合に適用される「法定利率」です。
消費者金融やカードローンの契約では、ほとんどの場合「年20%」といった約定利率が定められているため、民法の法定利率が変わっても、あなたの遅延損害金の利率は変動しません。
ここまで、遅延損害金の基本知識から計算方法、そして具体的な対処法までを網羅的に解説しました。
遅延損害金は、放置すればするほどあなたの生活を圧迫する深刻な問題です。
しかし、正しい知識を持って早めに行動を起こせば、解決の道はあります。
借金の悩みは一人で抱え込まず、専門家に相談することが解決への一番の近道です。
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税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也
大阪弁護士会所属/登録番号:38530
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169
東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。
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