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債務整理のデメリットを徹底解説。知っておきたい影響と対策


任意整理

2025 . 04.9

借金の整理方法には、自己破産、個人再生、債務整理、特定調停の4つがあります。これらの債務整理方法には借金を減額、免除が受けられる大きなメリットがあります。その一方で、さまざまなデメリットもあります。ご自身にとってどの債務整理方法が最適か、この記事を参考に検討のうえ、弁護士に相談を受けるようにしましょう。

この記事でわかること

  •  債務整理(破産・再生・任意整理)の基礎知識
  •  各整理方法によるデメリット
  •  自動車、自宅不動産などへの影響
執筆者【 弁護士・税理士 】
たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 橘髙 和芳

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995


京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事
。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。

目 次

債務整理のデメリットを徹底解説:知っておきたい影響と対策

 

債務整理を検討するタイミングとして、すでに返済滞納、自転車操業状態にある、借金総額が自分の年収の3分の1を超えていることなどが一つの目安になります。

債務整理を検討する上で、メリットだけではなくデメリットについても正しく把握しておくことが大切です。

本記事では、手続きの種類ごとに考えられるデメリットや注意点を整理し、対策についても解説します。

 

まずはおさえたい!債務整理の基礎知識

最初に、債務整理全体の概要や主な手続きについて理解することが重要です。

債務整理とは、借金返済の負担から抜け出すために行われる法的・私的手続きの総称です。代表的な方法として、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停などが挙げられ、それぞれに特徴や減額の度合いが異なります。

債務の状況や将来の見通しによって選択すべき手続きが変わるため、まずは違いを正確に把握しておくことが大切です。

状況に応じた最適な手続きを知ることで、やみくもに借金を返し続けて負担が膨らむ事態を避けることができます。
ただし、どの手続きにも必ずデメリットが存在する点は押さえておきましょう。

メリットとデメリットの両面を理解し、専門家である弁護士と相談しながら進めることが生活再建の鍵になります。

 

債務整理とは?代表的な4種類の手続き

債務整理とは、利息や返済額を軽減することで借金を整理する手段の総称です。

代表的な手続きとして、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4種類があり、返済能力や財産の状況によって取れる選択が異なります。

これらの手続きはいずれも借金の負担を抑える効果がありますが、同時に個人信用情報機関への登録や財産処分などのリスクが生じる可能性があるため、十分な下調べが必要です。
(基本的に、返済の滞納が発生した時点で、個人信用情報機関へ事故情報として登録される可能性があります。登録の判断は、クレジットカード会社、信販会社、銀行・信託銀行などの金融会社それぞれの判断となります。)

 

任意整理とは

任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と交渉し、利息や返済期限を再設定してもらう手続きです。

将来利息や遅延損害金の免除を受けられる場合もありますが、元本自体の大幅な減額は期待しにくい点が特徴です。
任整整理における和解内容の多くは、「利息0、返済期間を3年~5年程度に延ばし毎月の返済額を減らす」というものになっています。

ただし、基本的に月々の分割返済は必要となるため、安定した収入が見込める場合に借金整理のための選択肢のひとつになります。

また、話し合いによって合意を得る必要があるため、債権者が応じない場合は成立が難しく、丁寧な交渉力が求められます。
そのため、弁護士に相談、依頼をされる方も多くおられます。

 

関連記事 「任意整理手続き
債権者との交渉による債務整理手続きについて解説しています。

 

任意整理の相手方となる債権者は、金融機関(銀行、信託銀行など)、クレジットカード会社、信販会社だけでなく、代位弁済後の債権回収会社とも交渉は可能です。

 

個人再生とは

個人再生は、裁判所に申し立てることで借金を大幅に圧縮し、数年かけて返済計画を進める手続きです。

大きな減額が期待できる一方、裁判所を介することで手続きが複雑化し、債権者の合意が必要になるケースや、他の債務整理の方法に比べて費用や期間の負担が増すデメリットがあります。

自宅を手放さずに済む「住宅ローン特則」が利用できる可能性があるため、家族や住居を守りたい人には検討する価値があります。

ただし、任意整理同様に基本、3年間は返済をおこなう必要があるため、裁判所は返済能力を見るために事前に積立をさせたり、収入を見るため、無職であるなどの場合には利用が難しいと言えます。

特に住宅ローン特則の場合には減額された分割金に加えて住宅ローンの支払いも合算した金額を毎月支払うことになりますので、月々の負担は相当なものに上ることが想定されますので、月々の収入で継続できるかのシュミレーションは不可欠です。

個人再生手続きにおいて、裁判所に認可された再生計画案に基づいて計画通りに完済した場合、原則として残りの債務は免除されます。つまり、当初の借金の残りの部分は法的に支払う義務がなくなります。

 

関連記事 「個人再生手続き
裁判所での債務整理手続きである個人再生手続きについて解説しています。

 

なお、個人再生手続きでも、一部の債務は免責の対象となりません。これらは「非免責債権」と呼ばれ、再生計画に基づいて減額されることなく、全額を支払う必要があります。

 

参考 非免責債権

・税金、社会保険料
・養育費、婚姻費用
・故意または重過失による不法行為に基づく損害賠償金  
 (例:交通事故の慰謝料など)
・罰金、科料
・債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金
・従業員の給料、退職金
・その他、法律で定められたもの

 

自己破産とは

自己破産は、最終手段ともいわれる手続きで、裁判所に申立てを行い、借金を帳消しにすることが可能です。

ただし、自己所有が認められた財産以外は処分しなければならず、破産手続き開始から免責許可が下りるまでは一部の職業に就けない資格制限があります。

ギャンブルや浪費が原因などの場合は免責(借金の帳消し)が認められにくい点も含め、自己破産できるかどうかの判断には注意が必要です。

なお、法律で免責不許可事由が定められており、原則としてこれに該当する場合には免責が認められません。

 

参考 免責不許可事由(破産法第252条より)

浪費または賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと
・破産手続開始の決定があった日から遡って1年以内に、支払不能であったことを知りながら、特定の債権者に対して担保を供与し、または債務を弁済する行為をしたこと(偏頗弁済)
・破産手続開始の決定があった日から遡って1年以内に、詐術を用いて信用取引によって財産を取得したこと
・業務及び家計に関する帳簿を隠滅し、偽造し、または変造したこと
虚偽の債権者名簿を提出したこと
裁判所が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと
・不正の手段によって破産財団に属する財産を隠匿し、または損壊したこと
過去7年以内に免責許可の決定または再生計画の認可決定を受けたことがあること
破産法に定める義務に違反したこと

 

ただ、裁判所の裁量によって認められることもありますので、やはり事前に弁護士の無料相談を受けて、免責許可の見通しや債務整理についてのアドバイスを受けておくのが良いでしょう。

なお、税金・保険料の公租公課は、免責によっても免除されませんが、事実上、破産者に請求されることはないようです。

 

特定調停とは

特定調停は、簡易裁判所を通じて債権者との話し合いが進められる手続きです。
任意整理と似た話し合いベースですが、裁判所を介入させるためスケジュール管理や期日の出席など手間や時間を要します。

債権者が協力を拒否した場合は、不成立となってしまうリスクがある点にも注意が必要です。

 

過払い金請求となるケース

かつての貸金業者の多くは、利息制限法の上限金利は超えているものの、出資法の上限金利以下の金利で貸付けをおこなっていました。
この、利息制限法の上限を超え、出資法の上限以下の金利帯が「グレーゾーン金利」と呼ばれていました。

債務者がグレーゾーン金利で長期間にわたり返済を続けていた場合、本来支払う必要のなかった利息を払い続けていたことになります。
過払い金とは、この払いすぎた利息を取り戻す手続きを指します。

対象となるのは消費者金融のキャッシングだけでなく、信販会社やカード会社からのキャッシングも過払い金の発生の可能性があります。
なお、物販の購入(カードローン)、住宅ローンでは過払い金は発生しません。

2010年の貸金業法の改正により、出資法の上限金利が利息制限法の上限金利と同じ水準まで引き下げられ、グレーゾーン金利は実質的に解消されました。
そのため、現在ではグレーゾーン金利による新たな過払い金が発生することはありません。

この年よりも後から借入れをしている場合には、過払い金の発生は見込めないため、上記のような債務整理の方法による解決をおこなっていくことになります。

 

参考記事 「利息の払い過ぎ(過払い)が発生している場合の返還請求手続きについて
過払い金請求について、対応や請求の流れについて弁護士が解説しています。

 

消滅時効の援用ができるケース

借金の消滅時効援用(しょうめつじこうえんよう)とは、一定期間借金を返済せずに放置した場合に、債務者がその借金の支払い義務を法的に消滅させる手続きのことです。

2020年4月に民法が改正され、「債権者が権利を行使することができることを知った時点から5年間、その権利を行使しないとき」または「権利を行使することができる時点から10年間、その権利を行使しないとき」のいずか短い方が、消滅時効期間となります。

なお、期間経過により自然に借金が消滅するわけではなく、一般的には、内容証明郵便などの書面で、債権者に対して消滅時効を援用する旨を明確に通知しておこないます。

口頭での主張も法的には有効ですが、証拠が残らないため、内容証明などの書面をもって債権者に通知することをおすすめします。

弁護士・司法書士に依頼する重要性

債務整理の各種手続きは専門知識が必要となり、場合によっては交渉や書類作成が複雑化します。

弁護士や認定司法書士に依頼することで、手続き選択や債権者との交渉をスムーズに進めやすくなります。

結果的に手続きが成功しやすくなるほか、精神的な負担も軽減されるため、早めの専門家相談を検討するとよいでしょう。

共通のデメリット:ブラックリスト登録や官報公告など

どの債務整理手続きでも共通して生じやすいデメリットについて解説します。

 

信用情報機関への登録と影響期間

債務整理をおこなうと、信用情報機関に事故情報として登録され、いわゆるブラックリスト状態となります(実際には、返済滞納があった時点で事故情報として登録されている可能性があります)。

信用情報機関ごとに登録期間は5~7年程度であることが多く、その間はクレジットカードの発行や、携帯電話の分割購入や住宅ローンの審査が厳しくなる点は知っておきましょう。

なお、信用情報に登録されている事故情報については、弁護士に依頼しても削除することはできません。

 

参考記事
信用情報(ブラックリスト)の情報は「削除」できるのか(ローン・クレジットを組むと登録される信用情報機関について解説)

主要な個人信用情報機関であるJICC、CIC、KSCについて解説しています。

自己破産後からクレジットカードは使用できるのか。いつ新規契約できるのか。
自己破産後、クレジットカードの利用ができなくなります。その際に、どのような代替手段があるのか、自己破産後にクレジットカードの作成は可能か、などについて解説しています。

 

官報掲載によるプライバシーリスク

官報掲載の影響を軽減するには手続きを検討する段階で専門家に相談し、対処策を考えることが大切です。

また、個人再生、自己破産といった裁判所を利用する法的整理については、官報に氏名や住所が掲載されます。

一般的には検索してまで調べる人は少ないといわれていますが、公開情報である以上、情報が第三者に伝わるリスクはゼロにはできません。
そのため、プライバシー面で心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
官報は誰でも閲覧できるとはいえ、周囲が積極的に調べない限り大きく知られるケースは稀です。
とはいえ、掲載情報を見られたくない場合は、どの手続きを選ぶかを慎重に検討しましょう。

 

参考記事
自己破産や法人破産で掲載される官報とは(#自己破産官報)

個人破産、法人破産、個人再生などの裁判所を介した債務整理手続きをすることで、掲載される官報。その掲載内容などについて解説しています。

 

保証人・連帯保証人への請求リスク

債務整理をおこなうと、債権者側は保証人に対して肩代わりとして一括請求を求める場合があります。

ただ、自己破産による解決を考えている場合において、連帯保証人となっている家族や知人に迷惑をかけないために、保証人付きの借入れにだけ返済をおこなうと「偏頗弁済(へんぱべんさい)」となり、免責不許可事由に該当することになるため注意が必要です。

 

ご自身だけで判断せず、まずは弁護士に相談をし、どのような解決策があるのかアドバイスを受けておくことをおすすめします。

 

参考記事
自己破産による連帯保証人への影響

単なる保証人と異なり、主債務者と同じ地位に立つ連帯保証人について、主債務者が破産をすることでどのような影響を受けるのか、その内容について弁護士が解説しています。

奨学金返済は自己破産で免除される?奨学金の連帯保証人が自己破産した場合も解説
当事務所に問合せの多い、奨学金を借り入れた本人、奨学金借入れにあたって保証人となった方の「自己破産」による影響について解説しています。

 

銀行口座の凍結リスク

銀行からの借入がある場合、債務整理を申請した段階で口座が凍結されることがあります。

これは、銀行は債務者名義の口座の預金を借金返済に充当し相殺しようとするためです。

凍結が解除されるまで預金を引き出せないケースもあるため、生活資金や光熱費の支払いなどに支障が出ないよう、給与振込先を借入先ではない金融機関の口座に変更するなどの対策が必要です。

 

家族や会社にバレる可能性と対策

個人再生や自己破産手続きでは官報に掲載されたり裁判所からの郵送物が自宅に届くことで、家族に借金の存在を知られるリスクがあります。

ただし、送付先や封筒に配慮してもらうことや、郵便物が本人限定受取となるように手配するなどでリスクを最小限に抑えられます。

 

任意整理のデメリット:交渉成立の難しさと減額の限界

任意整理は、裁判所を通さない解決方法であるため、柔軟な話し合いが可能です。
裏を返せば、債権者は債務者からの交渉に応じる義務はないため、交渉次第で減額や支払期限の猶予の提示には限界がある点に注意が必要です。

任意整理では裁判所の関与がないため、債権者との直接交渉が成立しない場合は手続きが進みません。
将来発生する利息や遅延損害金のカットは相手の合意が得られないと難しく、すべての債権者が協力してくれるわけではない点を理解しておきましょう。
元本の大幅な減額が期待できないことも多く、返済総額が思ったほど減らない可能性があります。

利息の支払いに追われる状態からは抜け出しやすい一方で、毎月返済を続ける必要がある点は変わりません。
安定的な収入と計画的な返済が不可欠な手段といえるでしょう。

 

債権者が交渉に応じないケース

任意整理はあくまで話し合いによる返済内容の変更を目指す手続きであり、債権者側に交渉を拒否されると成立は困難になります。

過去に滞納するなど支払い実績が悪い場合は、債権者が応じにくいケースもあるでしょう。交渉に失敗した場合は、個人再生や自己破産への切り替えを検討する必要があります。

 

利息・遅延損害金カットに留まる可能性

任意整理で期待できる主なメリットは、将来利息や遅延損害金の減免が中心です。

元本を減らすには、債権者の合意が必要となり、実際には大幅な減額は難しい場合が多いです。
毎月の返済負担が軽くなることはありますが、“借金自体を大きく圧縮したい”という希望には応えにくい手続きといえます。

 

大幅な減額が難しい理由

裁判所が介入しない分、法的な強制力が働かず、債権者の意向が優先されやすいのが任意整理です。

金融機関はあくまで貸した元金を確保したいと考えるため、利息や手数料などの減免には応じても、元本の大幅カットには消極的になりがちです。こうした状況を理解しておくと、任意整理の可否や結果を現実的な目線で判断することができます。

 

個人再生のデメリット:複雑な手続きと最低弁済額

大幅な元本減額が期待できる一方、裁判所を介するため手続きが複雑になりがちです。

個人再生は減額効果が高い手続きですが、その分、提出書類や裁判所とのやり取りが多くなります。

手続き完了までに1年近くかかることもあり、弁護士費用や裁判所費用などの初期負担にも留意が必要です。

最低でも100万円以上の返済義務が残る可能性がある点も、借入総額によっては大きな負担となるでしょう。

ただし、マイホームを残せる住宅ローン特則が利用できるなど、他の手続きにはないメリットは見逃せません。

個人再生手続きにおける住宅ローン特則とは、住宅ローンを抱えている方が、原則として自宅を手放すことなく個人再生の手続きを進めることができる特別なルールです。

簡単に言うと、通常、個人再生では債務が大幅に減額されますが、住宅ローンについては、その減額の対象外とし、従前の契約内容に基づいて返済を継続していくことができます。

住宅ローン自体が家計の負担となっている場合には、別の債務整理の方法を検討します。

安定した収入があり、返済を継続できる見込みが立つ人に向いた方法といえます。
家族の同居や将来設計を踏まえた上で、弁護士と相談しながら慎重に判断するとよいでしょう。

官報公告によるプライバシーへの懸念

個人再生の場合も自己破産と同様に官報への掲載が行われます。

住所や氏名などの個人情報が公開されるため、周囲に知られるリスクがゼロではありません。
ただし、一般的に官報を日常的にチェックする人は稀であり、実際に知人に見られる機会は少ないといわれています。

 

住宅ローン特則と家を残すための要件

住宅ローン特則を適用することで、個人再生の手続きを行いながらマイホームを維持できる可能性があります。

ただし、住宅ローンの返済状況や担保の設定など、いくつかの要件を満たす必要がある点に注意してください。

これらの条件に合致するかどうかを弁護士や司法書士に確認しながら、返済計画を立案することが重要です。

100万円以上の返済が残るケース

個人再生では、再生計画による減額後の残額が原則100万円以上になるケースが多く見られます。

たとえ借金が大幅に減額されても、その残債を確実に返済できるかどうかがカギとなります。生活費と返済額のバランスを見極め、無理のない計画を立てましょう。

 

参照 個人再生における最低弁済額の目安

債務額の合計(住宅ローンを除く) 最低弁済額
100万円以下            全額
100万円超~500万円以下       100万円
500万円超~1500万円以下       債務額の5分の1
1500万円超~3000万円以下     300万円
3000万円超~5000万円以下     債務額の10分の1

 

手続きの長期化と費用負担

裁判所を通すため、書類準備や審査の流れが任意整理と比べて煩雑となり、手続き完了までに時間がかかります。

さらに、弁護士費用や個人再生委員が選任された場合の報酬、裁判所への予納金などの負担も考慮しなければなりません。

 

自己破産のデメリット:財産処分や資格制限に注意

借金が帳消しになる、とてもメリットのある手続きですが、その分大きな制約やリスクが伴います。

高額な財産や資産の処分

自己破産は最も大きな借金減免効果を得られる一方で、「現金99万円」「差押禁止財産(自己破産申し立てをする債務者において、生活に欠くことのできない家財道具など)」といった自由財産以外の財産は、一定の処分が求められることがあります。

 

参考記事
自己破産でどれくらい手元に財産・家財道具は残せるの?(自由財産について解説)

自己破産の手続きをおこなっても、生活の債権に必要な範囲で所有財産を手元に残すことができます。この自由財産について解説しています。

 

裁判所により運用が異なる場合がありますが、例えば東京地裁では次の財産の評価額が20万円いかの場合には自由財産として取り扱ってもらえるよう裁判所に願い出ることができます。

 

参照 個人再生における最低弁済額の目安

・預貯金及び信用金庫出資金
(およびこれに準ずる出資金含む)
・生命保険解約返戻金
参考記事
自己破産で生命保険の解約が必要な場合と、契約を維持するための4つの方法
・自動車(メーカー発表の車両本体価格300万円以下の国産車で初年度登録後7年経過の場合、無価値0円として評価)
・居住用家屋の敷金債権(返戻金)
・電話加入権
・退職金債権(支給見込額の8分の1で評価。近々退職金支給が見込まれる場合は4分の1)

 

東京地裁において、基本的に20万円以上の価値をもつ財産は換価処分の対象となります。
自宅不動産や自動車などは原則的に手放さなければならず、生活の立て直しに大きな影響が出る可能性があります。

中には手元に残せる資産もあるものの、習慣的に使用しているものが処分対象になることもあるため注意が必要です。
もしも、負債整理の中で特定の財産を残したい場合には、弁護士の法律相談の中で手元に残すことができるかも合わせて確認しておくと良いでしょう。

 

ギャンブル・浪費が原因の場合の免責不許可リスク

ギャンブルやFXなどの投機的行為が原因で生じた借金による破産申立ては、裁判所が免責不許可事由に当たると判断する場合があります。
その結果、免責が認められず、借金が帳消しにならない可能性がある点には十分に注意してください。

なお、デイトレーダーのように職業としてFXや投資を行っていた場合には、免責不許可事由には当たらない可能性があります。

一般的に、免責不許可行為とされる「浪費又は賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」(破産法第252条第1項第2号)は、偶然の利益を期待して行う射幸性の高い行為を指すと解釈されています。FXや宝くじは、その典型例と言えるでしょう。

しかし、職業的投資家が行う投資行為は、一般的に以下のような3つの特徴を持つため、単なる射幸行為とは区別される可能性があります。

 

・専門的な知識や分析に基づいた判断
職業的投資家は、市場分析や経済状況、企業分析など、専門的な知識や情報を基に投資判断を行います。
・リスク管理
投資のリスクを理解し、分散投資などのリスク管理を行っている場合があります。
・事業としての側面
職業的投資家にとって、投資は生計を立てるための事業活動の一環であると考えられます。。

 

ただし、以下のような場合には、職業的投資家の投資行為であっても免責不許可行為に該当する可能性があります。

 

・過度な投機性
専門的な知識や分析に基づかない、極めてリスクの高い投機的な取引を繰り返した場合。

・生活状況や事業資金を大きく逸脱した投資
自身の経済状況を考慮せず、過大な資金を投じて投機的な取引を行った結果、破産に至った場合。

・投資という名目の浪費
実質的には浪費に近いような、合理性のない投資行為を行った場合。

・破産直前の悪質な行為
破産を免れるため、あるいは債権者を害する目的で、故意に投機的な取引を行い財産を減少させた場合。

 

とはいえ、最終的な判断は裁判所がおこないます。
職業的投資家の投資行為が免責不許可行為に当たるかどうか不安な場合は、個々のケースの具体的な事実に基づいて、裁判所が総合的に判断します。投資の目的、規模、頻度、リスク管理の状況、破産に至った経緯などが考慮されるでしょう。

ご自身のケースが免責不許可行為に該当するか、自己破産の手続きに詳しい弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

手続き中の一部職業・資格制限

自己破産における資格制限(欠格事由)とは、破産手続き開始決定を受けると、特定の職業や地位に就くことが一時的に制限されることです。

これは、破産者が一定の責任能力や信用を失っていると考えられるため、社会的な保護や信頼を維持する目的で設けられています。

 

参照 資格制限の対象となる主な職業・地位

法律関係: 弁護士、公証人、司法書士、行政書士など
金融関係: 銀行員、信用金庫職員、証券会社の役員・社員、保険募集人など
不動産関係: 宅地建物取引士
警備・保安関係: 警備員
その他: 会社の取締役(会社の定款による場合)、公務員の一部(任命権者の判断による場合)、生命保険募集人、質屋、古物商など

 

上記はあくまで一部であり、法律や各団体の規定によって他にも制限される資格や職業があります。

資格制限は、破産手続き開始決定から免責許可決定が確定するまでの間です。免責許可決定が確定すると、原則としてこれらの資格制限は解除されます。
ただ、資格制限を受ける期間中は、その業務に就くことができないため経済的な面で影響を受ける可能性があります。

なお、免責不許可となった場合、資格制限の解除を求めて、復権のための申立てをおこなうなど別途対応が必要になります。

以上のように、破産が確定するまでは一部の資格や職業への就業が制限される点を踏まえて、債務整理の方法を選択する必要があります。

 

特定調停のデメリット:調停不成立のリスクと手続きの負担

簡易裁判所での話し合いで解決を図る特定調停にも、いくつかのデメリットがあります。

債権者が拒否する可能性

特定調停はあくまで話し合いを前提とした方法であるため、債権者が欠席したり合意しない場合、交渉が難航する場合は調停が不成立になります。
調停不成立となった場合には、再度別の手続きによる債務整理を検討せざるを得ません。

裁判所とのやり取りで時間と手間がかかる

特定調停では、簡易裁判所に出頭する期日が設定されます。

仕事や家庭の都合を調整し、定期的に裁判所に足を運ばなければならない点は大きな負担です。
さらに、調停が長期化すればするほど、精神的ストレスや日常生活への影響が大きくなるリスクがあります。

弁護士をつけることで、直接債権者と交渉しなくてもよくなり、交渉から書面作成手続きも代行してもらうことができるため、精神的・事務的な負担を大幅に軽減することが可能です。

 

家や車などの財産への影響

債務整理をすることで、マイホームや自動車などの財産を維持できるかどうかも大きなポイントです。

多くの人にとって、家や車は日常生活に欠かせない財産です。
そのため、債務整理でそれらを失わずに済むかどうかは重要な検討事項といえます。

特に自己破産では高額資産の処分が原則ですが、個人再生では住宅ローン特則を利用して自宅を守れる可能性があるなど、手続きによって扱いが異なる点を押さえておきましょう。

車のローンと所有権留保の注意点

車のローンでは、ローン会社に所有権が留保されていることが一般的です。
返済が完了するまでは車はローン会社の所有物とみなされるため、債務整理をすると車を引き上げられるリスクがあります。

通勤や生活(車がないと通勤・通院できないなど)に欠かせない場合は、ローン付きの車をどう扱うかを早めに検討し、手続き方法を専門家と話し合う必要があります。

 

参考記事
自己破産で自動車を処分せずに手元に残す方法

自己破産手続きでは一定の価値がある財産を処分しなければなりません。ただし、特定の場合には手元に残すことができます。所有自動車についても、初年度登録から一定の年数が経過しているなどの場合には手元に残すことができる場合もあります。

 

住宅を手放さずに債務整理する方法

前述したとおり、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、条件を満たすことで家を手放さずに借金整理を行える可能性があります。

任意整理でも住宅ローンを対象から除外することで自宅を守ることができる場合がありますが、債務総額や他の借入状況の兼ね合いで慎重な検討が必要です。
将来の住まい環境を守るためにも、複数の手段を比較検討して最適な生活再建方法を見つけることが大切です。

 

解決後の財産形成に向けたポイント

債務整理が完了した後は、新たな借入が制限される可能性が高いため、無理のない家計管理が欠かせません。

毎月の予算を決めて支出をコントロールし、貯蓄を積み重ねていくことで将来の財産形成を目指すことができます。
また、信用情報が回復した後も過度なローンに頼らず、手持ち資金を増やす姿勢を続けることが重要です。

 

債務整理に関するよくある質問

手続きを進めるにあたって、結婚・就職・クレジットカードなどの身近な疑問点を解説します。

債務整理は、個人の経済状況に深くかかわる問題である一方、周囲への影響も心配になることがあるでしょう。

結婚や就職などのライフイベントへの影響や、クレジットカード利用の可否など、実生活との結びつきは思った以上に大きいです。
ここでは、よくある疑問点に対する基本的な知識をお伝えします。

 

結婚や就職への影響はある?

債務整理により、結婚や就職を制限されることはありません。
(自己破産による資格制限はあります)

ただし、新たに住居を借りる際のローンの審査において、ブラックリスト状態が不利に働くケースも考えられます。パートナーとの生活において、将来的に経済的な面で負担となる可能性はあります。

 

クレジットカードやスマホ分割払いはどうなる?

債務整理後は、事故情報が記録されている間、カードの更新や新規のクレジットカードを作ることやスマホ(携帯電話)の分割払い審査に通ることが難しくなります。

個人信用情報機関の事故情報や自社のデータを、カード作成や契約時の審査でどの程度参考するかは各社の判断となります。

そのため、デビットカードやプリペイドカードなど、代替手段を活用する方法で対応される方もいらっしゃいます。
事故情報が消えた後も、過去の延滞履歴が残っている場合は審査に影響が出ることがあることも考えられます。

 

家族や会社に内緒で手続きできる?

自己破産、個人再生では官報に掲載されることで自宅住所や氏名が掲載されたり、債務整理の解決の状況によっては勤務先に対する給料差押えなどの強制執行が行われたりすることで、家族や職場に借金がバレる可能性がゼロではありません。

なお、自己破産や個人再生をしたことがバレたとしても、解雇されることは基本的にはありません。

官報への掲載や裁判所からの郵便物など、完全に秘密を維持するのは難しい面があります。とはいえ、家族や会社に通知が直接届くことは通常ありません。郵便物を本人限定受取にするなどの工夫や、手続きを依頼する事務所に相談して送付方法に気を配ることで、バレるリスクを下げることは可能です。

 

生活保護のため自己破産の費用が用意できない

自己破産申立て時には、裁判所に納めるお金(予納金)や、申立手数料として収入印紙や郵便切手などを費用が必要になります。

こうした裁判手続費用にかかるお金を工面できない場合、法テラスの費用立替制度を利用して自己破産手続きをおこなうことも可能です。

 

参考記事
法テラス利用で自己破産する方法

法テラス利用による自己破産申立てをする方法について紹介しています。

 

まとめ:デメリットを理解した上で冷静に対処を

各手続きのデメリットを踏まえつつ、専門家と相談しながら最適な方法を選ぶことで、借金問題を解決する道が開けます。

債務整理には、信用情報への影響や官報公告に掲載されたり、財産処分が必要になるなどのデメリットがある一方で、返済負担を軽くし再スタートを切る手段として有効です。

どの手続きを選んでも少なからずリスクや制限があるため、自身の状況や将来設計を慎重に踏まえた上で判断する必要があります。

早期に専門家へ相談することで、最適な解決方法や対処法を見つけやすくなり、手続きの成功率も高まるでしょう。

きちんと債務整理をおこなうことで借金問題を解決できるケースが多いため、リスクやデメリットに対して過剰な不安を感じて、借金整理のタイミングを先延ばしにするのは得策ではありません。
まずは、デメリットも十分に理解したうえで冷静に行動することが重要です。
あなたに合った方法を見極め、正しい知識をもとに行動することが、人生の再構築への第一歩になります。

たちばな総合法律事務所では、生活再建に向けた個人の方の負債整理(個人再生・自己破産・任意整理)についてサポートしています。
破産管財人の経験を持つ、解決実績たしかな弁護士が相談から手続きが終結するまで、しっかり対応いたします。

弁護士にご依頼いただくことで、① 債権者からの督促がストップする(精神的に楽になる)、② 債権者との代理交渉をおこなってくれる、③ 手続きを任せることができる(事務処理の負担軽減)といったメリットがあります。

なお、借金問題に関する初回相談料は無料です。
法律相談は、電話(10分)、来所相談(60分)にておこなっています。
まずはお気軽に、電話やメールなどでお問い合わせください。

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