自己破産はバレる?会社・家族・友人への影響と回避策を徹底解説
個人破産
2025 . 05.19
個人破産
2025 . 05.19
この記事でわかること
たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也
大阪弁護士会所属/登録番号:38530
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169
東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。
目 次
自己破産を検討する際、多くの方が抱く最大の不安の一つが「周囲にバレてしまうのではないか」という点です。
借金の苦しみから解放されるための手続きとはいえ、職場や家族、友人に知られることへの抵抗感は当然のことでしょう。
本記事では、自己破産が会社や家族、友人にバレる可能性や、その具体的なケース、そして自己破産後の生活における注意点などを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、自己破産に関する不安を解消し、ご自身やご家族の将来にとって最善の解決策を見つけるための一歩を踏み出すことができるはずです。
まずは、周囲への影響を最小限に抑え、新しい生活をスムーズにスタートさせるために、正しい知識を身につけましょう。
自己破産が周囲にバレることで、「職場に居づらくなるのではないか」「家族に迷惑をかけるのではないか」「友人関係が終わってしまうのではないか」といった不安や、「恥ずかしい」という感情を抱く方も少なくありません。
残念ながら、自己破産の手続きを誰にも知られずに完了させることは、状況によっては難しい場合があります。
具体的には、以下のようなケースで周囲にバレる可能性があります。
-連帯保証人が家族の場合
保証人である家族に一括請求がいきます。
-会社が債権者である場合
裁判所から破産手続きに関する通知が届きます。
-持ち家(不動産)、自動車など高額資産がある場合
原則として処分が必要で、その過程で周囲に知られることがあります。
-官報に掲載
国の機関紙である官報に、自己破産の事実、住所、氏名が掲載されます。
-資格制限のある職業の場合
警備員や生命保険の外交員など一部の職業では、破産手続中に業務が行えなくなり、結果として会社に知られることがあります。
-給与の差し押さえを受けている場合
自己破産手続開始決定により差し押さえは中止・失効しますが、それまでの経緯で会社に事情が伝わっている可能性があります。
これらのポイントは、自己破産の手続きを進める中で、どのタイミングで、誰にバレる可能性があるのかを示しています。
次からの項目で、会社、家族・友人、結婚相手といった関係性ごとに、バレるリスクと具体的な対処法を詳しく見ていきましょう。
自己破産を検討する上で、最も心配なことの一つが「会社にバレてしまうのではないか」「バレたら解雇されるのではないか」という点でしょう。
ここでは、会社に知られてしまう主なパターンや、解雇の可能性について詳しく解説します。
まず結論から申し上げると、自己破産したことのみを理由として会社を解雇されることは、法律上原則として認められません。
日本の労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。
自己破産は個人の経済的な問題であり、それ自体が直ちに業務遂行能力の欠如や職場規律違反に結びつくわけではないため、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上の相当性」を欠く不当解雇と判断される可能性が高いといえます。
ただし、自己破産の手続き中であることや、過去に自己破産したという事実が、何らかのきっかけで会社に知られる可能性はゼロではありません。また、特定の職業についている場合は注意が必要です。
裁判所から会社に対して「〇〇さんが自己破産しました」と直接通知がいくことは、会社が債権者である場合などを除き、通常ありません。
そのため、会社と特段の金銭的な貸し借りなどがなければ、自己破産が会社にバレるリスクは比較的低いと言えます。
しかし、以下のような状況では注意が必要です。
自己破産の申し立て準備中や手続き開始後に、給与振込口座の変更が必要になるケースがあります。
これは、預貯金口座を保有する金融機関から借り入れがある場合に、その口座が凍結されたり、預金と借入金が相殺されたりするリスクがあるためです。
特に給与振込口座が対象となった場合、生活費の引き出しや各種支払いに支障が出る可能性があります。
このような事態を避けるため、借り入れのない金融機関に新たに口座を開設し、給与振込先を変更することが推奨されます。
勤務先によっては給与振込口座が指定されている場合もありますが、事情を説明して変更を依頼することは可能です。
その際、必ずしも自己破産が理由であると伝える必要はありません。
自己破産手続きでは、申立人の財産を換価して債権者に配当します。
退職金も財産とみなされるため、その一部(または全部)が配当の対象となる可能性があります。
具体的には、退職金が支払われる見込みがある場合、その支給見込額の8分の1(退職間近の場合は4分の1となることもあります)が20万円を超える場合などに、その相当額を破産財団(破産管財人が管理する財産)に組み入れるよう指示されることがあります。
この金額の算定や、実際に組み入れるかどうかは、管轄の地方裁判所の運用や個別の状況によって異なります。
会社員の場合、裁判所や破産管財人から退職金額を証明する書類(退職金規程や退職金見込額証明書など)の提出を求められます。
これらの書類が手元にない場合、会社に発行を依頼する必要があります。
この際、会社に「自己破産のために必要」と伝える義務はありません。
「住宅ローンの借り入れにあたり、ライフプラン検討のため」など、他の理由を伝えることで、自己破産の事実を知られずに書類を入手できる場合があります。
会社の従業員貸付制度を利用している場合や、社内融資を受けている場合、会社は債権者の一人となります。
自己破産手続きでは、すべての債権者を裁判所に申告しなければなりません(債権者平等の原則)。
他方、財形貯蓄や社内預金をしている場合には、自己破産手続では、破産財団に組み入れる必要があります。
そのうえで、99万円までの自由財産の範囲を超える場合には、債権者への配当が行われる余地があります。
この場合には、財形貯蓄又は社内預金の解約を行う必要があり、この手続き中に、会社に破産手続き中であることが発覚する可能性があります。
もし、意図的に会社を債権者から除外するか、財形貯蓄等を除外して手続きを進めようとした場合、以下の重大なリスクが生じます。
- 免責不許可事由に該当する可能性
特定の債権者を隠蔽する行為は、破産法第252条1項7号の「虚偽の債権者名簿(債権者の氏名又は名称、住所及び債権又は担保権の別ごとの数額を記載した書面であって、第六十一条第一項(第六十八条第一項及び第百三十八条において準用する場合を含む。)の規定により裁判所に提出しなければならないもののこと。)を提出したこと」に該当し、免責(借金の支払義務が免除されること)が認められない可能性があります。
また、財形貯蓄などの裁判所に申告しない場合には、同項1号の破産財産に属すべき財産の隠匿に該当するとして免責が認められない可能性があります。
― 詐欺破産罪に問われる可能性
債権者を害する目的で財産を隠したり、虚偽の申告をしたりする行為は、破産法第265条の詐欺破産罪に該当する可能性があり、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
会社が債権者である場合、裁判所や破産管財人から会社宛に、破産手続に関する通知(破産手続開始通知書など)が送付されます。
これにより、会社はあなたが自己破産した事実を知ることになります。
また、会社からの借り入れを優先的に返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、他の債権者との公平を害するため、破産法上禁止されています。
偏頗弁済は免責不許可事由に該当するだけでなく、破産管財人がその返済を否認して会社に取り戻しを求める(否認権の行使)こともあり、結果的に会社に迷惑をかけることになります。
給与の差し押さえを受けている場合も、会社はあなたの経済状況をある程度把握していると考えられます。
自己破産手続が開始されると差し押さえは中止または失効しますが、その過程で会社に知られることは避けられません。
自己破産をすると、その事実は「官報(かんぽう)」という国が発行する機関紙に掲載されます。
官報には、破産手続開始決定や免責許可決定を受けた人の住所・氏名が記載されます。
官報は誰でも閲覧可能ですが、一般の人が日常的にチェックするものではありません。
金融機関、信用情報機関、一部の不動産業者、警備会社などが業務上確認することはありますが、多くの一般企業では官報を定期購読したり、くまなくチェックしたりすることは稀です。
そのため、官報掲載が直接的な原因で会社にバレる可能性はそれほど高くないと言えるでしょう。
ただし、あなたの会社の業種や、上司・同僚がたまたま官報を見る機会があれば、知られるリスクはゼロではありません。
弁護士、司法書士、税理士、公認会計士などの士業、生命保険募集人、宅地建物取引士、警備員、旅行業務取扱管理者など、一部の職業や資格には「資格制限(または欠格事由)」が設けられています。
これらの職業に就いている人が自己破産手続を開始すると、破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間(通常3ヶ月~半年程度、管財事件の場合はそれ以上かかることも)、その資格を用いた業務を行うことができなくなります。
また、会社の役員(取締役など)の場合、破産手続開始決定が出ると一旦退任しなければならないことがあります(委任契約の終了。ただし、その後の株主総会で再任されることは可能です)。
資格制限により業務が行えなくなれば、当然ながら会社にその事実を伝えざるを得ません。
会社によっては、休職や配置転換といった措置が取られることがあります。
ご自身の職業が資格制限の対象となるか否か、事前に弁護士などの専門家に確認しておくことが非常に重要です。
前述の通り、法人の役員(取締役、監査役など)は、破産手続開始決定により委任契約が終了し、一旦退任となります(民法第653条)。
その後、株主総会の決議により再任されることは可能ですが、この過程で他の役員や株主に知られることになります。
万が一、自己破産の事実が会社に知られた場合、解雇や不利益な処遇を受けるのではないかと心配されるのは当然です。
前述の通り、自己破産したことのみを理由とする解雇は、労働契約法第16条に基づき、原則として不当解雇とされ無効です。
自己破産は個人のプライベートな問題であり、それ自体が直ちに職務遂行能力の欠如や、会社の信用を著しく損なう行為とは言えないためです。
労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。
自己破産という事実は、通常、この「客観的に合理的な理由」や「社会通念上の相当性」には該当しません。
ただし、例外もあります。
前述した資格制限のある職業の場合、破産手続中に業務を行えなくなるため、その結果として会社が雇用契約を継続できないと判断する可能性があります。
これは自己破産そのものが理由ではなく、「業務遂行が不可能になった」という理由によるものです。
同様に、会社の役員が破産した場合も、一旦退任となるため、その後の再任がなされなければ、結果的に職を失うこともあり得ます。
また、経理担当者など金銭を扱う職務に就いている場合、会社によっては配置転換を検討される可能性も否定できません。
しかし、これも直ちに解雇に結びつくものではなく、まずは配置転換などの措置が検討されるのが一般的です。
もし、自己破産を理由に不当な解雇や不利益な扱いを受けた場合は、弁護士や労働基準監督署に相談することを検討しましょう。
自己破産について、会社以上に知られたくないのが家族や親しい友人かもしれません。
ここでは、家族や友人にバレる主なケースとその理由、そして特に注意すべき点を解説します。
家族や友人への発覚で最も多いのは、手続きに関連する書類のやり取りや、財産処分に伴う変化、保証人への連絡などがきっかけとなるケースです。
家族や親族、友人があなたの借金の連帯保証人や保証人になっている場合、あなたが自己破産すると、債権者は保証人に対して残債務の一括返済を請求します。
これは、自己破産によってあなた自身の返済義務は免責されても、保証人の保証債務まで消滅するわけではないためです(保証契約の独立性)。
保証人にとっては、突然多額の借金を肩代わりすることになるため、大きな影響が出ます。
この請求をきっかけに、あなたの自己破産は保証人に必ず知られることになります。
保証人に迷惑をかけたくないという気持ちは当然ですが、事前に状況を正直に説明し、謝罪するとともに、保証人自身も債務整理を検討する必要があるかもしれない旨を伝えることが重要です。
場合によっては、保証人も自己破産や個人再生などの手続きを検討する必要が出てきます。
このような事態を避けるためにも、安易に保証人を立てることは慎重になるべきです。
自己破産をすると、生活に必要な最低限の財産(自由財産)を除き、一定価値以上の財産は処分され、債権者への配当に充てられます。
ー 持ち家(不動産)
持ち家(一戸建て、マンションなど)は、通常、価値が高いため処分の対象となります。住宅ローンが残っている場合は、金融機関が抵当権を実行し、競売にかけられることが一般的です。
競売手続きが進むと、裁判所の執行官が自宅調査に来たり、競売情報が公開されたりするため、同居家族や近隣住民に知られる可能性が高まります。
ー 自動車
年式や車種にもよりますが、一定以上の査定額がつく自動車も処分の対象となります。
ローンが残っている場合は、ローン会社に引き揚げられることが一般的です。
これらの財産を処分する過程で、同居家族には隠し通すことが難しくなります。
特に持ち家を失う場合は、引っ越しも必要になるため、家族への説明は避けることはできません。
自己破産の申し立てを行うと、裁判所から、手続きに関する書類が郵送で送られてきたり、電話連絡が入ったりします。
これらの郵便物(「〇〇地方裁判所」と記載された封筒など)を同居家族が見たり、電話応対をしたりすることで、自己破産の手続きを進めていることが察知される可能性があります。
書留郵便などで本人限定受取にしたとしても、何度もそのような郵便物が届けば不審に思われるかもしれません。
弁護士に依頼した場合、多くの書類は弁護士事務所宛に送付してもらうように調整できます。
自己破産の申し立てには、家計全体の収支状況を示す書類(家計簿、通帳のコピーなど)や、家族の収入証明書、保険証券のコピーなど、同居家族の協力がなければ収集が難しい書類が多数必要になります。
これらの書類の提出を依頼する際に、何のために必要なのかを説明せざるを得なくなり、結果として自己破産のことを知られるケースがあります。
クレジットカードの家族カードを利用している場合、本会員であるあなたが自己破産すると、家族カードも利用できなくなります。
これにより、家族に事情を察知される可能性があります。
また、直接的にはあなたの借金でなくても、家族名義で借金をして生活費に充てていたような場合、その借金の扱いについても検討が必要になり、家族に相談せざるを得ない状況になることがあります。
自己破産したからといって、直ちに子どもの進学や就職に影響が出るわけではありません。
しかし、家計状況が大きく変わることで、私立学校の学費の支払いが難しくなったり、奨学金の利用を検討したりする必要が出てくるかもしれません。
こうした変化を通じて、間接的に子どもやその周囲に影響が及ぶ可能性は考慮しておく必要があります。
友人や知人に自己破産の事実がバレる主なきっかけは、以下の通りです。
ー 官報の閲覧
会社の場合と同様、一般の友人・知人が官報を日常的に確認している可能性は極めて低いです。
しかし、何らかの理由であなたの名前を検索したり、たまたま官報を見る機会があったりすれば、知られるリスクはゼロではありません。
ー お金の貸し借り
友人・知人から借金をしている場合、その友人は債権者となります。
自己破産手続きでは全ての債権者を申告する必要があるため、その友人に裁判所または弁護士から通知が送付され、知られることになります。
ー SNSなどでの情報漏洩
あなた自身がSNSなどで経済的な苦境や手続きを匂わせるような投稿をしてしまうと、そこから情報が広がる可能性があります。
また、親しい友人に打ち明けた話が、意図せず他の知人に伝わってしまうこともあり得ます。
ー 共通の知人からの噂
特に地域社会や共通のコミュニティ内で、誰か一人に知られると、そこから噂として広まってしまうことも考えられます。
結婚を控えている方や、既に結婚している方にとって、自己破産の事実は非常にデリケートな問題です。
自己破産の手続き中に婚約者や配偶者に知られる可能性としては、これまで述べてきた家族にバレるケース(郵送物、財産処分など)と同様のものが考えられます。
結婚後の生活への影響としては、主に以下の点が挙げられます。
ー 信用情報への影響(ブラックリスト)
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆる「ブラックリストに載る」状態)。
この情報は、契約終了から5年~7年程度(官報情報は10年を超えない範囲で登録される場合もあります)残るため、その期間は新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだりすることが非常に難しくなります。
これは、住宅ローンや自動車ローンだけでなく、スマートフォンの分割払いなども含みます。
ー 保証人になれない
あなたが自己破産しても、配偶者自身の信用情報に直接影響はありません。
配偶者名義であれば、クレジットカードの作成やローンの契約が可能な場合があります。ただし、あなたが保証人になることはできません。
ー 夫婦共有財産が処分対象になる可能性
自己破産の手続きでは、あなたの名義の財産が処分の対象となります。配偶者固有の財産(結婚前から所有していた財産や、相続・贈与で得た財産など)は原則として処分の対象外です。
しかし、夫婦の協力によって形成された共有財産とみなされるものについては、処分の対象となる可能性があります。
ー 精神的な影響
経済的な問題を抱えていたこと、そして自己破産という選択をしたことを伝えることで、相手に不安や不信感を与えてしまう可能性は否定できません。
しかし、これを隠したまま結婚生活を続けることは、将来的にさらに大きな問題に発展するリスクも伴います。
結婚相手には、できる限り誠実に状況を説明し、今後の生活設計について共に話し合うことが、長期的な信頼関係を築く上で重要と言えるでしょう。
自己破産の手続きには、大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件(少額管財事件を含む)」の2つの種類があり、どちらの手続きになるかによって、手続きの期間や複雑さ、そしてバレやすさにも若干の違いが出てくることがあります。
ー 同時廃止事件
申立人にめぼしい財産がなく、免責不許可事由もないと見込まれる場合に適用される、比較的簡易な手続きです。
破産手続開始決定と同時に破産手続が終了(廃止)するため、破産管財人は選任されません。手続き期間も短く、通常3~4ヶ月程度で終結します。
ー 管財事件
一定以上の財産がある場合や、免責不許可事由の疑いがある場合(例:ギャンブルや浪費による借金など)に適用される手続きです。
裁判所によって破産管財人が選任され、財産の調査・管理・換価処分や、免責に関する調査が行われます。手続き期間は同時廃止事件よりも長く、半年~1年以上かかることもあります。
少額管財事件は、管財事件の中でも比較的簡易迅速に進められる運用です。
裁判所によって破産手続きの運用に違いがあるため、最寄りの弁護士などに相談をしておくと良いでしょう。
バレやすさへの影響
ー 手続き期間
管財事件の方が手続き期間が長いため、その間に周囲に知られるリスクは相対的に高まると言えます。
ー 破産管財人の調査
管財事件では、破産管財人が財産調査や免責調査のために、関係者に問い合わせをしたり、書類の提出を求めたりすることがあります。
この過程で、家族や会社に事情が伝わる可能性が同時廃止事件よりも高くなる場合があります。
ー 郵便物の増加
管財事件では、破産管財人からの連絡も増えるため、郵便物がきっかけで家族に知られるリスクも若干高まります。
どちらの手続きになるかは、申立人の財産状況や借金の原因などによって裁判所が判断します。
弁護士に相談すれば、ご自身のケースがどちらに該当する可能性が高いか、ある程度の見通しを立てることができます。
できる限り周囲に知られずに自己破産の手続きを進めたいと考えるのは当然です。
ここでは、そのための具体的な対処法をいくつかご紹介します。
自己破産を検討する際は、まず弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談することが最も重要です。
ー 守秘義務
弁護士や司法書士には法律上の守秘義務が課せられています(弁護士法第23条、司法書士法第24条)。
相談内容や依頼した事実が、本人の許可なく外部に漏れることはありません。
ー 郵便物の送付先を法律事務所にする
弁護士に依頼すると、裁判所や債権者からの連絡窓口を弁護士事務所にすることができます。
多くの書類が弁護士事務所宛に送付されるため、自宅への郵送物が減り、同居家族に知られるリスクを大幅に軽減できます。
ー 債権者との窓口になってもらう
弁護士が代理人として債権者と交渉や連絡を行うため、債権者からあなたや自宅や勤務先への直接取り立ての連絡が来ることを防げます(貸金業法第21条1項9号により、弁護士等から受任通知を受けた貸金業者は、正当な理由なく債務者等に直接連絡することが禁止されます)。これにより、精神的な負担も軽減されます。
ー 適切な手続き選択と進行
専門家は、あなたの状況に合わせた最適な手続き(自己破産、個人再生、任意整理など)を提案し、複雑な申立書類の作成や裁判所とのやり取りを代行してくれます。
これにより、手続きがスムーズに進み、不備による遅延や、それに伴う発覚リスクを抑えることができます。
自己破産以外にも、借金問題を解決するための債務整理手続きがあります。
状況によっては、これらの手続きの方が周囲に知られるリスクを低く抑えられる場合があります。
ー 任意整理
裁判所を通さずに、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや分割払いの和解を目指す手続きです。
・バレにくさ
裁判所の手続きではないため、官報に掲載されることはありません。また、特定の債権者を選んで交渉できるため、例えば保証人がついている借金や会社からの借金を除外して手続きを進めることも理論上は可能です(ただし、生活を立て直すことや公平性の観点から全ての債権者を対象とすることが望ましいです)。
このため、他の手続きに比べて周囲に知られるリスクは最も低いと言えます。
・デメリット
元本自体は減額されないことが多く、あくまで利息カットと分割払いの交渉が中心です。
定期的に安定した収入があり、分割払いで返済できる見込みがある場合に適しています。
ー 個人再生
裁判所に申し立てを行い、再生計画の認可を受けることで、借金を大幅に減額(通常5分の1~10分の1程度)してもらい、残りを原則3年(最長5年)で分割返済していく手続きです。
・バレにくさ
自己破産と同様に裁判所の手続きであり、官報に掲載されます。そのため、官報から知られるリスクは自己破産と同程度あります。
しかし、自己破産のように全ての財産を失うわけではなく、一定の条件を満たせば持ち家(住宅ローン特則を利用)や自動車などを手元に残せる可能性があります。
そのため、財産処分に伴う発覚リスクは自己破産よりも低い場合があります。
・デメリット
手続きが複雑で、定期的な返済を基本とするため、安定した収入が必要です。
どの手続きがご自身の状況や希望に最も適しているか、バレるリスクとメリット・デメリットを総合的に比較検討するためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産申立前の準備段階で、周囲にバレないように注意すべき点は次の通りです。
ー 不用意な言動を避ける
親しい人にであっても、安易に借金の苦しさや自己破産を考えていることを話すと、そこから情報が漏れる可能性があります。相談する相手は慎重に選びましょう。
ー SNS等の利用
自身の経済状況や法的手続きに関する情報をSNSなどに書き込むのは絶対に避けましょう。
ー 関連書類の管理
借金に関する書類や裁判所への提出書類などを家族の目に触れやすい場所に置かないよう、管理を徹底しましょう。
自己破産手続きが無事に終わり、免責許可決定が確定すると、原則として借金の支払義務から解放され、経済的な再スタートを切ることができます。
しかし、その後の生活にはいくつかの注意点があります。
自己破産をすると、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に事故情報として一定期間登録されます。
これが、一般的に「ブラックリストに載る」と言われる状態です。
ー 登録期間
「 CIC(株式会社シー・アイ・シー)」および「JICC(株式会社日本信用情報機構)」では、自己破産の情報は契約期間中および契約終了後5年以内とされています。
「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」では、自己破産の情報は破産手続開始決定の日から7年間(官報情報を参照)登録されます。
ー 影響
この期間中は、新たにクレジットカードを作成したり、ローン(住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローンなど)を組んだり、分割払いで商品を購入したりすることが非常に難しくなります。
また、賃貸住宅の保証会社が信用情報を照会するタイプの場合、入居審査に影響が出ることもあります。
前述の通り、信用情報に事故情報が登録されている期間は、原則としてクレジットカードの新規発行やローンの利用はできません。
しかし、登録期間が経過すれば、必ずしも永久に利用できないわけではありません。
登録期間が過ぎた後に改めて申し込みをすれば、審査に通る可能性は出てきます。
ただし、過去に自己破産をしたという事実は、各金融機関の内部情報(いわゆる社内ブラック)として半永久的に残る場合があり、その金融機関や関連会社では審査が厳しくなる傾向があります。
自己破産後の生活で最も重要なのは、二度と同じ過ちを繰り返さないことです。
☑ 家計管理の徹底
収入と支出を正確に把握し、予算を立てて計画的な生活を送ることが不可欠です。家計簿をつけるなどして、無駄な支出をなくしましょう。
☑ 現金での生活
クレジットカードが使えない期間は、基本的に現金での支払いとなります。手元にある収入の範囲で生活をおこなえるようにしましょう。
☑ 新たな借金をしない
安易に新たな借金に手を出さない強い意志が必要です。2回目の自己破産は法律上可能ですが、裁判所・破産管財人から厳しく追及を受ける可能性があります。
☑ 貯蓄の習慣化
少しずつでも良いので、将来のために貯蓄をする習慣を身につけましょう。
☑ 誘惑に負けない
ギャンブルや高額な買い物など、再び多重債務に陥る可能性のある行動は避けましょう。
自己破産は、決して人生の終わりではありません。
法的に認められた、借金の苦しみから解放され、経済的に再起するための正当な手段です。
過去を反省し、それを教訓として生活を再建していきましょう。
Q1. 自己破産したら、今住んでいる家(持ち家)はどうなりますか?
A1. 持ち家(不動産)は、原則として処分の対象となり、売却されて債権者への配当に充てられます。
住宅ローンが残っている場合は、金融機関が抵当権を実行し、競売にかけられることが一般的です。
ただし、個人再生という手続きを選択すれば、一定の条件のもとで住宅ローン特則を利用し、持ち家を残せる可能性があります。
Q2. 生命保険は解約しなければなりませんか?
A2. 解約返戻金が一定額(通常20万円)を超える生命保険は、原則として解約して返戻金を破産財団に組み入れる必要があります。
ただし、契約者貸付を利用して解約返戻金額を減らすなどの方法で、保険契約を維持できる場合もあります。
個別の状況によりますので、弁護士にご相談ください。
Q3. 自己破産したら、今の仕事は続けられますか?
A3. 原則として、自己破産を理由に解雇されることはありません。
ただし、前述の通り、弁護士、司法書士、警備員など一部の資格制限のある職業については、破産手続中に業務が行えなくなるため、会社と相談の上、休職や配置転換などの対応が必要になる場合があります。
Q4. 自己破産すると、家族に借金の請求がいきますか?
A4. あなたが自己破産しても、原則として家族があなたの借金を肩代わりする必要はありません。
ただし、家族があなたの借金の連帯保証人や保証人になっている場合は、その家族に対して債権者から請求がいきます。
Q5. 自己破産の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
A5. 手続きの種類によって異なります。
財産がほとんどなく、免責不許可事由もない場合の「同時廃止事件」であれば、申立から免責許可決定まで3~4ヶ月程度です。
一定以上の財産がある場合や免責不許可事由の調査が必要な「管財事件」の場合は、半年~1年以上かかることもあります。
Q6. 自己破産後、何年くらいローンが組めませんか?
A6. 信用情報機関に事故情報が登録される期間(いわゆるブラックリスト)は、概ね5年~10年程度です。
そのため一定期間は、新たなローンを組むことは非常に難しくなる可能性があります。
個人信用情報登録期間の登録期間経過後において、住宅ローンが組めるかどうかは申込先の金融機関の審査にもよりますので、必ず審査に通るわけではありません。
自己破産が周囲にバレるのではないかという不安が大きい方にとって、手続きを検討する上で非常に大きな壁となることでしょう。
本記事で解説した通り、官報への掲載という点では誰でも情報を閲覧できますが、実際に会社や家族、友人がそれを知る可能性は、状況によって大きく異なります。
また、会社からの借り入れがないか、家族が保証人になっていないか、高価な財産を所有していないかなど、ご自身の状況を正確に把握することが、バレるリスクを判断する第一歩です。
そして、そのリスクを最小限に抑えるためには、弁護士や司法書士といった法律の専門家に早期に相談し、依頼のうえ適切なアドバイスとサポートを受けることが何よりも効果的な対処法です。
専門家は、あなたの状況に合わせた最適な解決策(自己破産だけでなく、任意整理や個人再生なども含めて)の提案や、手続きの流れを丁寧に説明してくれます。
自己破産は人生の終わりではなく、新たなスタートを切るための法的な手段です。
周囲にバレることだけを恐れて債務整理の方法を検討するのではなく、生活をどう立て直すかを最優先に検討しましょう。
たちばな総合法律事務所では、借金問題に関する無料相談を受け付けています。
法律相談は、電話(10分)、来所相談(60分)にておこなっています。
まずはお気軽に、電話やメールなどでお問い合わせください。
来所による法律相談では、家計やご希望を丁寧にお伺いしつつ、① 解決策のご提案、② 解決までの見通し、③ ご不安や悩みといった個別の質問への回答をおこなっています。
来所相談は随時WEBフォームでも受付中ですので、ご予約の上、ご相談ください。
なお、お問い合わせ自体も外部に漏れることはありません。
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