自己破産のメリット・デメリットを徹底解説|後悔しないための全知識
個人破産
2025 . 10.6
個人破産
2025 . 10.6
目 次
多額の借金を抱え、返済の目処が立たなくなったとき、「自己破産」は人生を再スタートさせるための強力な法的手段です。
しかし、最終手段というイメージが強く、「すべての財産を失うのではないか」「会社や家族に知られてしまうのでは?」といった不安から、一歩を踏み出せない方も少なくありません。
自己破産は、メリットとデメリットを正確に理解し、ご自身の状況と照らし合わせて慎重に判断すべき手続きです。
この記事では、自己破産の基本的な仕組みから、手続きを検討する上で押さえておくべき重要なポイントを、法律の専門家である弁護士が分かりやすく解説します。
この記事を読めば、自己破産に対する誤解や不安が解消され、ご自身にとって最善の選択をするための具体的な道筋が見えてくるはずです。
借金の悩みから解放され、新しい生活へ踏み出すための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
自己破産とは、裁判所を介して、「支払不能」、つまり収入や財産では借金の返済を継続できない状態であることを認めてもらい、法律に基づいて借金の支払義務を原則としてゼロにしてもらう(免責してもらう)手続きです(破産法1条)。
この手続きは、債務者を借金の苦しみから救済し、経済的な立ち直りの機会を与えることを目的としています。
そのため、単にペナルティを課すものではなく、人生を再建するための前向きな制度であることをまずご理解ください。
手続きには、財産の状況に応じて主に以下の3つの種類があり、それぞれ期間や費用が異なります。
自己破産は、申立人が裁判所に「破産手続開始・免責許可」の申立をおこない、裁判所が免責許可決定を下すことで、借金返済の義務が免除される制度です。
手続きは、裁判所が債務者の財産状況や事情を審査し、「同時廃止事件」と「管財事件(少額管財事件を含む)」のいずれかに振り分けます。
• 同時廃止事件
資産がほとんどなく(目安として20万円未満)、免責不許可事由に該当する問題もない場合に選択されます。破産手続の開始と同時に手続きが終了(廃止)するため、最も迅速かつ低コストです。
免責不許可事由については、このあと解説します。
• 管財事件/少額管財事件
一定以上の財産がある場合や、免責不許可事由の調査が必要な場合に選択されます。
裁判所が選任した「破産管財人(弁護士)」が財産の管理・処分や調査をして、債権者への配当などをおこないます。
どの手続きになるかは、個々の事情に応じて裁判所が判断しますが、弁護士に依頼した場合には、裁判所の費用を抑えられる「少額管財」で進められるケースが多くなっています。
債務整理には、自己破産の他に「任意整理」と「個人再生」があります。
任意整理や個人再生が、安定した収入を前提に返済を継続する手続きであるのに対し、自己破産は原則として返済自体が不要となります。そのため、自己破産は「生活再建の最終手段」と言われることがあります。
債務整理3種類の比較
自己破産は、借金があれば誰でも無条件に利用できるわけではありません。
法律で定められた条件を満たし、かつ「免責不許可事由」に該当しないことが必要です。
破産手続きを開始するためには、債務者が「支払不能」状態にあることが必要です(破産法第15条1項)。
支払不能とは、収入や資産を考慮しても、客観的にみて継続的な返済ができない状態を指します。
そして、借金の支払義務を免除(免責)してもらうためには、免責不許可事由(破産法第252条1項)に該当する行為がないことが原則となります。
例えば、ギャンブルや浪費による高額な借入れ、意図的な財産隠し(わざと所有財産を隠したり、他人名義に変えたりする)など、不誠実な行為があると、免責が認められない可能性があります。
「支払不能」とは、単に「返済が苦しい」という主観的な状態ではなく、「客観的に見て、継続して返済していく能力がない」と判断される状態を指します。
裁判所は、債務者の年齢、職業、収入、資産、負債総額、債権額などを総合的に考慮して判断します。明確な金額の基準はありません。
一般的には「借金総額を3年(36回)で分割返済できない」状態が一つの目安とされています。
無職の方や生活保護を受給している方も、支払不能と認められれば自己破産は可能です。
この判断は専門的な知見を要するため、まずは弁護士などの専門家による無料相談で状況を診断してもらうことをおすすめします。
免責不許可事由とは、その行為があると原則として免責が許可されない、破産法第252条1項で定められた特定の行為のことです。
代表的な例としては、下記のようなものが挙げられます。
• 浪費やギャンブル
収入に見合わない高額なショッピング、旅行、ギャンブルなどが借金の主な原因である場合(同4号)。
• 財産隠し
財産を隠したり、意図的に価値を減少させたりする行為(同1号)。
• 換金行為(現金化)
クレジットカードのショッピング枠で商品購入し、それをすぐに換金して現金化する行為(同2号)。
• 偏頗弁済(へんぱべんさい)
特定の債権者(例:友人や親族)にだけ優先的に返済する行為(同3号)。
• 詐術による借入れ
返済能力を偽って信用取引(借入れやクレジットカード利用)を行った場合(同5号)。
• 過去7年以内の免責
過去7年以内に自己破産で免責を受けている場合(同10号)。
もしこれらの事由に該当する場合でも、自己破産を諦める必要はありません。
裁判所が、破産に至った経緯や債務者の反省の度合い、手続きへの誠実な協力姿勢などを考慮し、その裁量によって免責を許可する「裁量免責」(破産法第252条2項)という制度があります。
実際には、免責不許可事由があっても、多くの場合でこの裁量免責が認められています。
免責不許可事由にあたる行為がある場合、裁量免責の可能性について申立前に弁護士に相談されると良いでしょう。
法律相談において具体的なアドバイスを受けようとする時には、正直に事情を説明することが大切です。
自己破産はデメリットばかりではありません。
むしろ、それを上回る大きなメリットがあるからこそ、多くの方が利用している制度です。ここでは主な3つのメリットを解説します。
これが自己破産の最大のメリットです。
裁判所から免責許可決定が確定すると、消費者金融や銀行からの借入れ、クレジットカードの残債など、原則として全ての借金の支払義務が法的に免除されます。
利息だけでなく、元金そのものがゼロになるため、借金問題を根本的に解決し、経済的な再スタートを切ることができます。
ただし、全ての支払いが免除されるわけではありません。
下記のような特定の請求権は「非免責債権」(破産法第253条1項)として、自己破産後も支払義務が残ります。
【注意】免責されない借金(非免責債権)
• 税金や社会保険料などの公租公課
• 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
• 故意または重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
• 養育費や婚姻費用の分担金
• 従業員への給料(あなたが個人事業主で従業員を雇用していた場合)
これらの債務がある場合は、自己破産をしても支払いが続くことを理解しておく必要があります。
弁護士や司法書士に自己破産手続きを依頼すると、債権者に対して「受任通知」が送付され、取り立てや督促がストップします。
貸金業法により、受任通知を受け取った後の直接の取り立ては法律で禁止されています。
貸金業法の規制対象外ですが、弁護士が代理人となった場合、事実上、本人への直接連絡は止まるのが一般的です。
さらに、裁判所に破産手続開始の申立をすると、すでに始まっている給与の差し押さえなどの強制執行も停止・失効します。
これにより、精神的なプレッシャーから解放され、落ち着いて手続きに臨むことができます。
日々の生活費を確保し、生活の立て直しに集中できる点は、非常に大きなメリットです。
次に、自己破産を選択する前に必ず理解しておくべきデメリットを解説します。
これらを把握した上で、メリットと比較検討することが重要です。
自己破産をすると、個人信用情報登録機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されます。
これにより、手続中はもちろん、手続き終了後も一定期間、新たな借入れやクレジットカードの作成、ローンの契約などができなくなります。
登録期間の目安は下記の通りです。
この期間は、生活の様々な場面で不便を感じる可能性があります。
例えば、スマートフォンの分割購入や、一部の賃貸物件の契約が難しくなるケースがあります。
自己破産によるクレジットカード契約への影響については、次のコラムで詳しく解説しています。
参考記事
「自己破産後からクレジットカードは使用できるのか。いつ新規契約できるのか。」
自己破産をすると、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回、氏名と住所が「官報」という国の機関紙に記載・公告されます。
官報は誰でも閲覧可能ですが、一般の方が日常的に見ることはまずありません。
そのため、官報からご近所や会社に自己破産の事実が知られる可能性は極めて低いと言えます。
ただし、一部の金融機関や宅地建物取引業者などは官報をチェックしている場合があるため、関連する職業の方は注意が必要です。
官報公告のサンプル、掲載内容などについて詳しくは、次のコラムで解説しています。
参考記事
「自己破産や法人破産で掲載される官報とは(#自己破産官報)」
自己破産の手続き期間中、一部の職業や資格に就くことが制限されます(資格制限)。
下記のような資格を持つ方は、手続きが終了し「復権」するまで、その資格を用いた業務ができなくなります。
• 弁護士、司法書士、税理士、公証人などの士業
• 警備員
• 生命保険募集人
• 宅地建物取引士
多くの会社では、これが直接の解雇理由になることはありません。
しかし、該当する職業の方は、手続き期間中の業務内容について事前に会社と相談が必要になる場合があります。
なお、この制限は手続き中の一時的なものであり、免責許可が確定すれば復権し、再び業務に就くことができます。
また、借金に保証人がいる場合、自己破産をするとその保証人に残債務の請求がいきます。
これは避けられないデメリットであり、保証人に多大な迷惑をかけることになります。
事前に必ず保証人に事情を説明し、保証人自身の債務整理についても含めて弁護士に相談することが不可欠です。
あなたが主債務者の場合、連帯保証人の場合にそれぞれ、どのような影響があるのかについて、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事
「自己破産による連帯保証人への影響」
自己破産手続きにおいて、債務者の財産が一定の価値を超える場合、売却し金銭にした上で債権者に配当をおこないます。
「自己破産すると全財産を没収される」というのは最も多い誤解の一つです。
破産者の生活再建のため、法律で「自由財産」として手元に残せる財産が認められています。
自由財産として認められるのは、主に以下のものです。
さらに、裁判所の判断により、預貯金や生命保険の解約返戻金額、退職金(一定の割合を乗じて評価した額)、自動車の査定額が、20万円未満であればそれぞれ手元に残せる可能性があります(自由財産の拡張)。
特に生命保険は、解約返戻金額が20万円未満であれば解約は不要となるケースが多いです。
このように、生活再建に必要な最低限の財産は法律で保護されているため、全ての財産を失うわけではないことを正しく理解しておきましょう。
デメリットに関連して、自己破産後の生活についてよくある質問をまとめました。
A. 本体代金の分割払いはできませんが、通信契約自体は可能です。
携帯電話の端末については、一括払いで現金購入するか、手持ちの端末を使い続けることになります。
ただし、債権者である通信会社を自己破産手続きによる債務整理の対象とする場合には、当該通信会社とは契約ができない可能性があります。
A. 可能です。
ただし、信販系の家賃保証会社を利用する物件は、審査に通らない可能性があります。
公営住宅や、保証会社の審査がない物件、連帯保証人で対応できる物件などを探すことになります。
A. 新たに開設することは可能です。
既存の口座も、借入のある銀行でなければ、基本的にはそのまま利用できます。
A. 子ども本人への直接的な影響は一切ありません。
戸籍や住民票に記載されることもありません。
ただし、奨学金の保証人に親がなれなくなるため、「機関保証」の利用を検討する必要があります。
A. 影響ありません。
公的年金は差押禁止財産であり、将来の受給額が減ることもありません。
A. なくなりません。
選挙権や被選挙権などの公民権が制限されることは一切ありません。
A. 免責許可決定が確定すれば、自由に海外旅行に行けます。
ただし、手続き期間中は裁判所の許可なく居住地を離れることが制限されます。
実際に自己破産の手続きを進める際の、大まかな流れと費用の内訳を解説します。
自己破産の手続きは、弁護士に依頼するのが一般的です。大まかな流れは下記の通りです。
弁護士・司法書士への相談・依頼
まずは専門家へ相談し、正式に依頼します。
受任通知の発送・債権調査
弁護士が債権者に受任通知を送り、取り立てをストップさせます。並行して正確な債権額を調査します。
必要書類の準備・申立書の作成
住民票や給与明細、債権者名簿など、多数の書類を準備し、申立書を作成します。
裁判所への破産手続開始・免責許可の申立
準備が整ったら裁判所に書類を提出します。
破産審尋(裁判官との面談)
裁判官と面談し、支払不能に至った事情などを説明します。
破産手続開始決定
裁判所が手続きの開始を決定します。
(管財事件の場合)破産管財人との面談・債権者集会
財産調査や配当が行われます。
免責審尋
再度、裁判官と面談し、免責を許可すべきか最終確認が行われます。
免責許可決定・確定
裁判所が免責を許可します。官報に公告され、約1ヶ月後に確定し、手続きは終了となります。
手続きにかかる期間は、同時廃止事件で3~6ヶ月、管財事件では半年~1年程度が目安です。
自己破産には、大きく分けて「裁判所に納める費用」と「弁護士・司法書士に支払う費用」の2種類がかかります。
自己破産の種類別 費用目安
費用の金額は決して安くありませんが、多くの法律事務所では分割払いに対応しています。
また、収入が一定基準以下の方は、国が設立した「法テラス(日本司法支援センター)」の民事法律扶助制度を利用すれば、費用の立て替え払いが可能です。
まずは無料相談を活用し、費用面についても確認してみましょう。
関連記事
「個人の自己破産にかかる費用を徹底解説|手続き別・依頼先別の相場と対策」
自己破産には、ネガティブなイメージからくる多くの誤解が存在します。
ここでは、特に多い誤解と、手続きを進める上での注意点を解説します。
「自己破産=全財産没収」ではありません。
持ち家は資産価値が高額なため、基本的に手放すことになります。
しかし、車については、ローンが完済しており、かつ時価(査定額)が20万円以下であれば、自由財産として手元に残せる可能性が高いです。
年式が古い車などは、処分対象とならないケースも少なくありません。
一概に「家も車も失う」と決めつけず、専門家に資産状況を正確に申告し、見通しを確認することが重要です。
「自己破産手続における持ち家の処分と、破産後も住み続ける方法」
自己破産の影響は、原則として申立人本人に限定されます。
ただし、最も注意すべきは保証人です。
あなたが自己破産すると、保証人(連帯保証人)に返済義務が移ります。
これが家族や友人である場合、その人に直接的な迷惑がかかることは避けられません。
保証人がいる場合は、手続きを開始する前に必ず誠実に事情を説明し、理解を得ることが不可欠です。
今回は、自己破産のメリット・デメリットについて網羅的に解説しました。最後に重要なポイントを整理します。
自己破産の主なメリット
自己破産の主なデメリット
自己破産は、借金問題を根本的に解決し、人生を再スタートさせるための強力な制度です。しかし、デメリットや守るべきルールも存在するため、正しい知識を持って慎重に検討する必要があります。
「自分の場合は自己破産すべきだろうか?」
「他の方法はないだろうか?」
もしあなたが今、このような悩みを抱えているなら、一人で決断せずに、まずは債務整理を専門とする弁護士や司法書士にご相談ください。
専門家は、あなたの状況を客観的に分析し、自己破産が最善の策なのか、あるいは個人再生や任意整理といった他の選択肢があるのかを的確にアドバイスしてくれます。
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