会社の法人破産手続にかかる全費用の詳細と、支払えない場合の対応方法
法人清算
2023 . 01.31
法人清算
2023 . 01.31
たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也
大阪弁護士会所属/登録番号:38530
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169
東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。
目 次
このコラムでは、会社の法人破産申立にかかる各種費用について解説しています。
裁判所費用が工面できない場合の対応方法についても解説しています。
会社の経営継続が難しいため、廃業を判断される経営者の方が増えてきています。
コロナ禍の補助金や融資が底をつき、厳しい経営環境が依然として続いているためです。
会社の資産が負債を大きく上回っているケース(債務超過)では、① 法人破産申立手続、② 特別清算申立といった裁判手続を検討することになります。
このコラムでは、「法人破産」申立にかかる費用について解説します。
なお、法人破産、特別清算については、下記のコラムで詳しく解説しています。
破産申立にかかる費用全体のイメージは上図のとおりです。
裁判所でかかる最低費用は20万円程度~です。
裁判所に納める費用の種類は「予納金」「申立印紙代」「郵便切手代(予納郵券)」です。
弁護士費用は、依頼される場合に必要です。
法人破産の弁護士費用の相場感は、事業の拠点が一つでその明渡が可能・従業員の解雇予告手当の支払可能などの条件を満たす前提で、100万円前後(税抜)です。
条件を満たさない場合は、拠点数、従業員数、債権者数などにより弁護費用が変わります。
実費は、申立てにかかる実際のコピー代、郵便切手などです。
法人破産にかかる全体の費用をまとめると、次の表のとおりです。
図表 法人破産申立費用の一覧表
上記の法人破産申立に、経営者個人の自己破産申立の手続費用は含まれていません。
これは、裁判所において法人、個人の破産手続は各別になるためです。
そのため、経営者個人の方が自己破産申立をおこなう場合は、別途費用が必要です。
法人破産にかかる費用を知り、「捻出できない」と思われたかもしれません。
ただ、本当に法人破産をしなければならないのかは検討が必要です。
事業資金の借入れで、経営者が連帯保証人となっていないケースでは、そもそも破産申立の必要性がないケースもあります。
本当に会社を破産させるべきかどうかの判断は、一度弁護士に相談されると良いでしょう。
裁判所に納める費用は、原則一括で支払います。
減額や分割で支払うことはできません。
(例外的に、東京地方裁判所の破産管財人に引き継ぐ予納金の納付は分割が認められています。)
裁判所に納める費用の内容(内訳)について、説明します。
申立手数料や裁判所に納める費用は、次のとおりです。
法人破産の申立手数料として、申立書に収入印紙を貼ります。
東京、名古屋、大阪、広島地方裁判所では、1000円分です。
裁判所が申立人への連絡などに利用する郵便切手を、事前に裁判所に納めます。
「予納郵券(よのうゆうけん)」とも言われます。
郵便切手の額面、枚数の組み合わせは裁判所ごとに異なります。
事前に、申立予定の裁判所に確認しておきます。
破産申立後、法人の財産の管理処分をおこなう「破産管財人」が選任され、手続を進めていくことになります。
予納金は、この破産管財人がおこなう手続費用や、その報酬として納めるものです。
法人破産の申立時に、裁判所から納付書を受取り、すみやかに納めます。
なお、電子納付といって、ATMを利用して予納金を納めることも可能です。
この場合、事前に裁判所に登録するなど一定の手続が必要になります。
官報(かんぽう)とは、国が発行している機関紙です。
法人が破産した時、破産申立の事件が終了したことが掲載されます。
この費用として1万数千円を納める必要があります。
この官報公告費用は全国統一の金額です。
破産手続で掲載される官報公告の内容については、次の関連記事でも解説しています。
全国の各裁判所で必要となる費用の目安は次のとおりです。
なお、詳細や現時点での金額等について変更がないか、裁判所の「破産係」に事前にご確認ください。
(破産予納金については、破産を申し立てようとしている法人の状況により異なる場合あります。)
裁判所の費用の減額、分割払いはできません。
そのため、必要になるものです。
今すぐ裁判所の費用が工面できない場合、弁護士に法人破産の依頼をされることも方法の一つです。
弁護士に依頼すると、債権者からの督促は止まり、支払をせずに済みます(むしろ支払いをしてはならない)。
他方で、売掛金は、弁護士が請求して、弁護士名義の預かり口座に入金依頼をしていきますので、後記5(弁護士費用が支払えない場合)のとおり、その売掛金の回収から弁護費用を捻出することも一つの方法です(ただし、支払を渋る売掛先も一定数存在します)。
また、申立書の必要資料の収集など一定の期間が必要になりますので、その間に働いていただいて少しでも積立をおこない必要となる費用を工面していただくこともあります。
法人破産の弁護士費用の相場は、100万円~(税抜)です。
過去、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準(旧日弁連基準)」により、全国統一の弁護士費用でした。
しかし、2004年に報酬金額は自由化され、現在は各法律事務所で独自に決めています。
ただ、旧日弁連基準を参考にしているケースが多く、上記が相場と言えそうです。
もっとも、事務所の中には、事業所の明渡の有無、債権者数などを考慮せずに一律300万円の弁護士報酬を請求する事務所もあるようです。
(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準 [ 抜粋 ]
資本金,資産及び負債の額,関係人の数等事件の規模並びに事件処理に要する執務量に応じ,それぞれ次に掲げる額
着手金 法人整理 100万円以上
法人破産申立は手続が面倒であるため、弁護士に依頼されることが一般的です。
経営者ご自身で裁判所窓口に相談へ行ったところ、書記官から「弁護士に依頼するように勧められた」という相談者の方のケースもありました。
弁護士に依頼することで次のメリットがあります。
弁護士に破産手続を依頼するという選択肢を考えていなかったという経営者の方も、一度ご検討されてはいかがでしょうか。
● 督促がストップ
弁護士が直接の連絡窓口となり、債権者は直接経営者などに連絡を取れなくなります。
● 返済がストップ
一部債権者への返済は、一部の債権者を優遇し平等に反するため、返済をストップすることになります。
●破産手続のフルサポート
裁判所類の作成、資料の収集、破産申立後の裁判所への出頭同行など、手続き負担を軽減できます。
また、弁護士が代理人としてついている場合には破産予納金が大幅に減額される場合があります。
弁護士費用は、① 弁護士報酬(依頼費用)、② 実費になります。
弁護士報酬の代表的なパターンは次の3つです。
図表:弁護士報酬のパターン
法人破産の場合には、上記の「手数料制」が一般的です。
手数料制の多くの場合、依頼時点で支払います。
なお、経営者個人も法人の借入れの連帯保証をおこなっている場合には、個人破産を検討することになります。
こうした個人破産の申立費用は法人破産とは別に準備する必要があります。
ほとんどのケースでは、代表者の個人破産を同時に申立てる場合、法人破産をおこなう同じ裁判所に対して手続をおこないます。
法人と代表者個人の破産事件に対して、同じ破産管財人が就任します。
実費としては、破産申立書に添付する登記事項証明書などの書類取寄せ費用や、交通費などです。
弁護士を選ぶ時、破産手続の弁護士費用をシビアに比較されている方が多い印象です。
破産手続では「手数料」制をとっている事務所が多いため、ホームページを見た方が着手金額を単純に比較しがちですが、これには注意が必要です。
「債権者数」「事業所数」「事業所の明け渡し作業」など各種条件により、着手金以外に追加費用が発生する場合があります。
更に、追加費用による依頼も「何回まで対応」など、内容に制限を設けていることもあります。
そのため、事前に費用の見積もりを受けておくと良いでしょう。
上記以外でも、①事務所の明渡費用、②解雇予告手当が事実上必要な費用となります。
①事務所を賃借されている場合、明渡せずに破産申し立てをすると、破産管財人が明渡作業をすることになり、予納金が100万円以上に跳ね上がることになります。
また、破産開始決定(破産申立後に出される決定)以後の賃料相当損害金は、財団債権として優先的に払わなければならないという問題もあり、問題が複雑化してしまいます。
また、②従業員の生活を考慮すると、1か月分の解雇予告手当の支払ができるかは、申立に当たっての重要な要素となります。
取引先に知られて取り付け騒ぎなど信用不安の問題が起きない場合には、従業員に1か月後に廃業すると宣言して1カ月働いてもらう、賃金を支払うことも可能です。
いずれにせよ、少なくとも、離職票は解雇と同時に渡せるように準備しておいて、失業手当をすぐに受給できるように配慮する必要があります(債権者集会で出頭する債権者として多いのは、買掛先と元従業員が多く、あれた債権者集会にならないようにする観点からも配慮を要します)。
上記のうち①の費用は、見積もりを取ると予想外に多額な費用が必要となるということがよくありますので、明渡費用を念頭に置きながら必要な費用を準備する必要があります。
なお、当事務所では事務所・工場などの明渡作業も対応・サポートが可能です。
安心してご相談ください。
裁判所に納める費用だけでも、結構な金額になります。
いろんな弁護士が「早めに専門家に相談する」ことを勧めているのは、最低限の資金を確保できないと、破産申立すら難しい状況におちいってしまうことを知っているからです。
複数の廃業の選択肢を残すためにも、資金に余裕があるうちに弁護士までご相談ください。
しかし、資金が底をつくまで頑張ってしまう経営者の方は多く、「裁判所の申立費用のお金がない」と頭を悩ませるケースがあります。
その際に、破産手続の必要費用を工面する方法として、弁護士が検討するのが次の内容です。
シンプルに法人資産をお金に換えることです。
ただ、破産申立直前の資産売却行為は、市場価格より安い値段で不当に処分をおこなっていないか、申立後に裁判所から問題視される場合があります。
破産法人の資産は、お金に換えた後、債権者に配当します。
そのため、不当に安い価格で処分することは、債権者の利益を損なうことになり許されません。
後に問題とならないよう資産処分を進める必要があるため、弁護士に相談しながら進めると安心です。
なお法人資産の売却代金を、裁判手続費用などに使用した場合には、裁判所や破産管財人から質問を受けた際に答えられるよう、その使い道について証拠資料とともに記録を残しておくようにします。
保険解約の返戻金、小規模共済の解約手当金など現金として支払いが受けられるものがあれば手続をとります。
破産申立後の裁判所からの指摘に備え、解約の際の証明書などを保管しておきます。
取引先に仕掛品を、同業他社に板金加工機械などを売却します。
ただ、単に売却処分をすればいいわけではありません。
適正価格の処分となるよう、(A)相見積もりのうえ最高価格を値づけした業者に売却、(B)複数動産の売却時には、どの動産をいくらで処分したか見積書に明細を記載してもらうなど、売却価格の透明性を確保するようにしましょう。
売却価格が10万円以上になるような高額動産の処分については特に注意が必要であることを覚えておきましょう。
売掛先からの代金の回収をおこなう際に、注意することがあります。
事業資金の借入先となっている銀行口座を、振込先に指定している場合、その指定口座を変更することです。
事業資金が未返済の銀行口座に入金されると、借金と相殺される可能性があります。
そのため、振込先口座の変更が必要になります。
これは、売掛金に関わらず、売却代金や法人の賃貸物件の賃料の回収の入金先の口座指定の際に気を付けるべきポイントです。
不動産の売却で注意するポイントは、(A)査定書・相見積もりをとること、(2)経営者親族などへの不当に安い価格での売却です。
破産申立後に問題となりやすいのは「適正価格での売却」かどうかの裁判所・破産管財人からの指摘です。
そのため、不動産法人から周辺の売却実績、路線価などをもとにした査定書を取り、適正な相場価格での売却であることが証明できるようにし、処分を進めます。
事業用店舗、工場、駐車場などを賃借している場合、支出を押さえ、保証金の返還を受けるために解約・明け渡しをおこないます。
しかし、返還保証金よりも明渡費用が過大で、むしろ資産状況がマイナスになる場合には慎重な検討が必要です。
動産、不動産と同様に、不当に安い価格での売却処分とならないように、複数社から見積書を取得し、最高価格での売却をおこないます。
事業資金を経営者が借り入れて補填していた場合で、消費者金融から利息制限法を超える借入れをおこなっていた場合、利息の払い過ぎを返してもらえる可能性があります。
2010年6月18日に貸金業法は改正されたため、それよりも以前の取引があったかどうかを確認するようにしましょう。
親族、知人、友人から借入れをおこない工面されることもありますが、これには注意が必要です。
経営者個人で借り、個人としても破産申立をおこなう場合、借りた金額の返済は他の債権者同様に破産手続の中で配当という形をとります。
配当は債務者の財産をお金に換えて、配当できる場合におこなわれます。
多くの場合、債務超過(借金が資産を上回る)のため、配当はできず、事実上親族の方などの手元にお金は戻りません。
そのため、「貸して欲しい」というよりも、「破産申立の費用をお願いしたい、援助してほしい」、「再起のために無理をお願いしたい、破産費用を助けてほしい」などと正直に伝える必要があります。
法人資産をお金に換えるだけではなく、月の支出を抑えることも検討します。
事業が事実上停止している場合には、賃借物件、携帯電話、公共サービスなどの不要な契約の解約などをおこない、節約をします。
破産申立後に、裁判所・破産管財人から「債権者の利益に損害を与えた」と指摘されることがないように気をつけます。
① 財産を不当に安い価格で処分
(経営者親族に名義変更・安い価格で譲渡した)
② 財産を隠した
③ 返済できないことを知りつつ、破産申立費用を金融機関等から借り入れ
④ 一部の債権者のみに返済
(偏波弁済:へんぱべんさい。親族借入のみ優先的に返済するなど)
上記の行為は、破産手続の進行において問題となります。
いずれも、債権者に配当するための原資となる財産の価値をそこなう行為で、破産手続開始後に破産管財人から否認される可能性が高いと言えます。
当事務所の弁護士相談では、① 法人破産の必要性、② 破産する場合の流れの説明、③ 個別の事情に応じたアドバイスを初回無料でおこなっています。
ご相談いただくことで、次のようなメリットがありますので、早めのご相談をお待ちしております。
資金が完全に底をついてからでは、破産費用が工面できず手続をすることが難しくなります。
法人経営に不安がある場合、複数の選択肢・資金をもっている状況下であれば、早めに弁護士に相談されるのが得策です。
ご相談の内容によって、破産の必要性がない場合があります。
個別のご事情によるもので、具体的に借入れの状況などを伺い、その判断・診断が可能です。
インターネットの情報だけで、ご自身で判断されるより、一緒に今後のことについて、弁護士から具体的にアドバイスを受けてみませんか。
弁護士に依頼されると、債権者対応は一括して弁護士がおこないます。
債権者への返済、支払い自体を止めていただきます。
返済がストップしている間に、破産に必要な申立費用の積み立てをおこなうことが可能です。
経営者の方の生活再建についても、同時に相談が可能です。
自宅を守りたい場合には、個人再生手続による借金整理ができるかの検討もできますので、お気軽にご相談ください。
以上のように、会社の法人破産と代表者個人の自己破産は同時におこないます。
申立てに必要な資料の収集、申立費用の工面などの対応を自分だけでおこなうのはかなりの負担です。
当事務所では、そうした準備から破産手続開始後の破産管財人への対応までフルサポートしております。
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資金面で余裕があるうちの、早めの無料相談のご利用をおすすめしています。
現状における具体的な解決策を弁護士がご提案いたします。
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