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自己破産や法人破産で掲載される官報とは(#自己破産官報)


個人破産

2023 . 04.26

執筆者【 弁護士・税理士 】
たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 橘髙 和芳

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事
。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。

1.官報とは

「官報(かんぽう)」とは、日本における機関紙です。
国が発行する新聞のようなもので、日曜日、祝日など行政機関の休日を除いて毎日発行しています。
法律などの公布など国民の権利義務に関する情報、各省庁の人事や裁判所による各種お知らせなどが掲載されています。

会社の決算公告(賃借対照表の公告)について、官報を利用することができるため、法人・会社を経営している経営者の方には、なじみがあるかもしれません。

1-1.官報公告をおこなう理由

破産したことを官報公告(官報に掲載)する理由や目的は、債権者や利害関係人へ広く知らせることで、破産手続への参加する機会を確保するためです。

債権者は、破産申立の必要書類として提出する「債権者一覧表」に記載されます。
自己破産手続のなかで破産者の資産を換価し(お金にかえる)、換価した金銭(破産財団)から債権者一覧表に記載された債権者等に対して配当をおこないます。
なお、従業員の未払い給与などの労働債権、租税公課といった税金は、優先的に配当されます。

申立人や裁判所が把握できていない債権者には、裁判所から配当の通知(連絡)はありません。
破産手続への参加の機会を失うことは、配当の機会を失うことにもなるため、官報公告をおこない、官報に公告することで情報の公開と透明性が確保します。

債権者に対する手続き関与の機会が与えられるため、債権者も自己破産手続きの進行状況を確認することができ、破産手続きに参加することができます。

官報掲載は法律で定められているため、官報公告を拒否したり、削除することはできません。
そのため、破産申立時に官報公告の掲載料を裁判所に納める必要があります。

1-2.官報はどうやって見る

1-2-1.購入

紙媒体での官報は、主に官報販売所などで販売されています。

参考リンク|国立印刷局ホームページ
▼ 官報販売所等一覧

地方裁判所に自己破産申立の手続をおこなった際に、自己破産をしたことが掲載されるのは「本紙」です。

この本紙の販売料金は、143円(税込、令和5年4月1日現在)です。

過去の官報のバックナンバーは1年前までのものがあり、在庫売り切れ次第、販売終了となります。
なお、図書館などによっては、1年以上前の官報が保管されていることがあり、コピーなどにより入手できる場合があります。

1-2-2.図書館で閲覧

官報については、各行政が運営する図書館でも閲覧することができます。

1-2-3.インターネットで閲覧

国立印刷局「インターネット版 官報」では、直近30日間(令和1月27日発行分以降のものは90日間)の官報情報(本紙、号外、政府調達等)の無料閲覧が可能です。

PDFの形式で公開されているため、閲覧には、スマートフォン、パソコンなどの機器のほか、これらにアドビ株式会社が無料提供するソフト「Acrobat Reader」のインストールが必要です。

アドビ株式会社|Adobe Acrobat Reader
▼ ダウンロードページ(外部)

なお、有料契約の「官報情報検索サービス」では、昭和22年5月3日の日本国憲法施行日以降、発行日の午前8時30分以降に公開される最新のものまでを閲覧、情報検索することが可能です。

この利用料金は新規申込の1672円/月~、官報(紙)を定期購読されている方は無料で利用することができます(但し、日付検索のみ。記事検索機能を追加する場合、追加で528円/月の支払が必要)

2.破産手続で官報に掲載される内容(#破産官報)

結論として、個人の方の自己破産については個人情報(住所、氏名)が掲載されます。

しかし、平日の毎日発行され、掲載情報が多いことや、一般方にとって販売や閲覧できる場が限られていることから、あなたのご自宅の周辺にお住いの方や、知人・友人などに「破産」したことが知れる可能性は、かなり低いのが事実です。

融資をおこなう金融機関など、業務上日々官報をチェックする必要がある企業などではない限り、あなたが破産したことは知れることはないと思われます。

ただ、自己破産をされた個人の方を狙って、闇金からのダイレクトメールが郵送されてくることがあります。

経済的な余裕がない方に対して、小口で融資し、高利で返済を求めるといった昔からある闇金・悪徳金融業者の手口です。
原則、二度目の破産はできません。
絶対にこうした手口に乗らないように注意してください。

2-1.個人の自己破産の場合


官報に掲載されるタイミングは個人の方の場合、① 破産手続開始、②破産手続の廃止決定または終結決定、③免責許可決定の時に掲載されます。

なお、債権者に配当するほどの資産がないような場合には、破産手続開始の決定と同時に手続廃止が決定されます。これを「同時廃止」と言います。
この場合、官報には破産手続開始決定と廃止決定が同時に掲載されます。
そのため、1回目は破産開始決定、2回目は免責決定のタイミングで掲載されることになります(合計2回)。

官報公告の掲載例(個人の破産手続・同時廃止)は次のとおりです。

図表|【破産手続の開始決定】時の掲載例

令和5年(フ)第●●●号
大阪市北区堂島〇丁目〇番〇号
債務者 堂島 太郎

1 決定年月日 令和5年4月7日午後1時30分
2 主文 債務者について破産手続を開始する。
本件手続を廃止する。
3 理由の要旨 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する。
4 免責意見申述期間 令和5年6月8日まで

大阪地方裁判所第6民事部


図表|【免責許可決定】時の掲載例

令和5年(フ)第●●●号
大阪市北区堂島〇丁目〇番〇号
破産者 堂島 太郎
1 決定年月日 令和5年8月10日
2 主文 債務者について免責を許可する。

大阪地方裁判所第6民事部

上記のように、個人の自己破産では「住所」「氏名」が掲載されます。

2-2.法人破産の場合

法人破産の場合には、「会社の所在地」「会社名」「代表者の氏名」が官報に掲載されます。

なお、代表取締役の自宅住所は掲載されません。(法人の商業登記簿謄本には、代表者の自宅住所は登記されています。そのため、破産会社の代表者の住所は追跡・調査される可能性はあります。)

法人破産における破産決定時の官報公告の掲載例は次の通りです。

令和5年(フ)第●●●号
大阪市北区堂島〇丁目〇番〇号
破産者 株式会社ファンシーショップたちばな
代表者取締役 堂島 太郎
1 決定年月日 令和5年4月1日午後5時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。
3 破産管財人 弁護士 〇〇 〇〇
4 財団状況報告集会・廃止意見聴取・掲載報告の期日 令和5年7月1日午後2時

大阪地方裁判所第6民事部

3.破産がバレる可能性(官報公告によるデメリット)

官報公告により、個人の自宅住所が掲載されると、どのようなリスク・デメリットがあるのでしょうか。

考えられる影響としては「掲載自体への心理的な負担」があります。

 ・ 家族への影響(プライバシーへの影響がないか不安)
・ 闇金、不動産業者からのアプローチ

販売や閲覧方法は限られ、日々掲載される破産情報が膨大であることから、あなた個人の破産情報を特定することは難しいと言えます。
そのため、官報公告が原因で、周囲の友人、会社に破産したことを知られることはほぼありません。

そうは言っても、経済的な弱みにつけこみ「お金を融資する」「自宅を売りませんか」といった闇金業者などから勧誘行為を受けることもあるため、不安がつのることがあります。

なお、破産したという情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆるブラックリストにのる)。

信用情報は融資の際の与信審査を目的に利用されることがあるため、実際上の問題として、新規で会社設立をした際に、金融機関から融資を受けることが難しい場合があります。

関連コラム |「信用情報(ブラックリスト)の情報は「削除」できるのか(ローン・クレジットを組むと登録される信用情報機関について解説)」
返済が遅れる、滞納した際に登録される信用情報登録機関について解説しています。
登録情報の確認方法などについても説明しています。

3-1.破産者マップ

無料のインターネット版官報では破産情報が公開されています。
しかし、文字検索ができず、個人の破産情報においてはインターネット上に残ることは可能性としてほぼありません

しかし、そうした官報などで公開されている情報をもとに、Googleマップ上で破産者の住所上にピンを立てて個人情報を可視化したホームページが開設されたことがあります。

「破産者マップ」と呼ばれるホームページです(現在は閉鎖)。

同ホームページに対して、プライバシー権の侵害などをもとに訴訟が起こされるなどしたことで、サイトは閉鎖されるにいたりました。

しかし、同サイトが閉鎖して以降も、類似のホームページが公開されるなどしていますが、個人情報保護委員会が捜査機関に告発するなど、都度対応がおこなわれています

官報から得た情報の漏洩は罰則の対象になる可能性

官報から知りえた情報を、むやみにインターネットで公開し、それが名誉毀損にあたるような行為をおこなった場合には、刑事事件で罪(名誉棄損罪:刑法230条 懲役または禁錮3年以下、または罰金50万円以下)に当たる可能性があります。

個人を特定する住所、氏名は個人情報に該当するため、そうした行為は個人情報保護法違反となる可能性もあります。

そのため、事業として業者が個人情報をむやみに公開することは、刑事罰を受け賠償リスクがあるため、継続的に情報を公開されるリスクは低いと言えるでしょう。

4.まとめ


自己破産により官報に個人情報が掲載されることで、自己破産後の日常生活に支障はほぼありません。

個人の住所、氏名が半永久的に掲載されることに不安を感じられるかもしれません。

しかし、離婚にあたっての養育費など一部を除いて、借金返済の義務が免除される「自己破産」は、やはり大きなメリットがあります。

もちろん、債務整理の手段には、裁判所を利用しない「任意整理」、住宅ローンつきの自宅不動産を守りながら負債を減らす「個人再生」などもあります。

任意整理は官報に掲載されず、借金が周囲にバレにくいというメリットがあります。
ただ、この任意整理、個人再生は、一定の収入があって返済をすることを前提にした方法です。

各債務整理の方法にはメリット、デメリットがあります。
当事務所では弁護士による個人、法人からの借金問題の無料相談をおこなっています。

個別の事情をお伺いし、具体的な解決方法の説明やアドバイスをさせていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。

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