個人の自己破産手続きにかかる期間を徹底解説
個人破産
2025 . 10.24
個人破産
2025 . 10.24

目 次
自己破産の手続き期間は、申立人の財産状況に応じて適用される手続き(同時廃止、少額管財、通常管財)によって大きく異なります。
手続き完了までにかかる期間は、最短で約3か月から、複雑なケースでは1年以上に及ぶこともあります。
本記事では、この3つの手続きごとの期間の目安と、期間を短縮するための具体的なポイントを解説します。
自己破産にかかる期間は、申立人の財産状況や借金の理由(免責不許可事由の有無)などに応じて、裁判所が以下の3つの手続きのいずれかを選択することで決まります。
手続きが迅速な順に「同時廃止事件」<「少額管財事件」<「通常管財事件」となります。
(※上記の期間や費用はあくまで目安です。裁判所の運用や事案によって変動します。)
同時廃止事件は、破産手続開始の決定と同時に、財産の換価・配当をおこなわずに手続きを終了(廃止)する決定がなされる手続きです(破産法第216条)。
これは、申立人(債務者)に債権者へ配当できるほどのまとまった財産(目安として20万円以上の価値がある財産)がないことが明らかな場合に適用されます。
破産管財人(財産を調査・管理する弁護士)が選任されないため、その分の費用や調査期間が不要となり、申立てから免責許可決定まで約3〜4か月と、最も短期間で手続きが完了します。
少額管財事件は、同時廃止事件の条件は満たさないものの、通常管財事件ほど複雑ではない事案に適用される手続きです。
破産管財人が選任され、財産調査や換価作業、免責に関する調査(例: 浪費やギャンブルなどの免責不許可事由の有無)がおこなわれます。
同時廃止事件よりは期間がかかりますが、裁判所と破産管財人が連携して手続きを迅速化する運用(特に東京地方裁判所など多くの裁判所で採用)が取られており、申立てから約6か月〜10か月程度で完了するのが一般的です。
通常管財事件は、申立人が高額な財産(不動産、多額の退職金など)を保有している場合や、個人事業主・法人経営者で財産関係や負債が複雑な場合、あるいは深刻な免責不許可事由の調査が必要な場合に適用されます。
破産管財人による厳格な財産調査、不動産の売却(換価)、債権者への配当手続きなどが必要となるため、手続きは長期化します。
申立てから免責まで8か月から1年程度かかるのが一般的ですが、不動産の売却が難航したり、訴訟が絡んだりする場合には、1年以上を要することもあります。
自己破産の手続きは、裁判所への「申立て」だけでなく、その「準備段階」にも期間を要します。
弁護士に自己破産を依頼すると、まず弁護士(代理人)から各債権者(貸金業者、クレジットカード会社、銀行など)へ「受任通知」が送付されます。
受任通知が債権者に届けば、最短即日(通常2〜3日後)で、債権者からの直接の取り立てや返済要求は停止します(貸金業法第21条第1項第9号)。
ただ、信販会社やカード会社のように締め日の都合上、またシステムの問題で、督促状などの書面が送られてくることがあります。
申立準備期間は、申立人の状況によりますが、通常約2か月から6か月程度かかります。
この期間中に、申立てに必要な以下の資料を収集・作成します。
いずれの書類も、財産状況や不審な財産の移動がないかなどを、裁判所が調査するために必要です。
例えば、裁判官や管財人が、経済的に更生できるかを家計簿で確認しています。
申立書類を裁判所に提出し、受理されると手続きが開始されます。
ここからの流れは、同時廃止事件と管財事件で大きく異なります。
裁判所へ申立て
準備した書類を提出します。
破産審尋(しんじん)
裁判官との面接。申立理由や財産状況について質問されます(裁判所によっては省略される場合もあります)。
破産手続開始決定・同時廃止決定
申立てから約1か月後、破産手続きが開始されると同時に終了(廃止)します。
免責審尋
開始決定から約2〜3か月後、再度裁判所に赴き、裁判官から免責を許可すべきか最終確認の面接(集団面接の場合も多い)を受けます。
免責許可決定
免責審尋から約1〜2週間後、裁判所が免責(借金の返済義務を免除すること)を許可する決定を出します。
免責許可決定の確定
官報に掲載され、債権者からの不服申立てがなければ約1か月後に「確定」し、全ての手続きが完了します。
裁判所へ申立て・破産審尋
同時廃止と同様です。
破産手続開始決定・破産管財人の選任
申立てから約1か月後、手続きが開始され、同時に破産管財人(弁護士)が選任されます。
破産管財人との面談
選任後速やかに、管財人の事務所で面談をおこないます。財産状況や借金の経緯について詳細な報告をします。
財産調査・換価・配当
管財人が申立人の財産(不動産、車、保険解約返戻金など)を調査し、必要に応じて売却(換価)し、債権者へ公平に配当します。
債権者集会
開始決定から約3か月後(その後は事案により数か月ごと)、裁判所で管財人が調査結果を報告する集会が開かれます。申立人本人も代理人弁護士とともに出席が必要です。通常管財事件では、財産の換価が終わるまで複数回開催されます。
免責許可決定・確定
財産の配当が終了、または免責不許可事由の調査が完了した後、同時廃止と同様に免責許可決定が出され、確定します。
予定よりも手続きが長引く原因はいくつか典型例があります。
不動産を保有しており、その売却(任意売却や競売)に時間がかかる場合、手続きは長期化します。
ほかにも、下記の場合には、管財事件の中でも特に時間がかかりがちです。
といった場合には、管財事件の中でも特に時間がかかりがちです。
債権者は、裁判所が定める期間内に、申立人の免責(借金の免除)に反対する意見を述べることができます(破産法第251条)。
反対意見が出た場合、裁判所は申立人の言い分も聞いた上で判断するため、その分手続きが遅れる可能性があります。
また、ギャンブルや浪費(免責不許可事由:破産法第252条第1項)が借金の主な原因である場合、破産管財人はその程度や申立人の反省状況を詳細に調査します。
この調査や、裁判官が裁量免責(同条第2項)を認めるかどうかの判断に時間を要するため、手続きが長期化する傾向があります。
裁判所や破産管財人(管財事件の場合)は、申立人に対して追加の資料提出や報告を求めることがあります。
これに対して、申立人本人が非協力的であったり、必要な書類(例: 家計簿、銀行口座の取引履歴)の提出が大幅に遅れたりすると、手続きは停滞します。
破産管財人や裁判所の指示には迅速に対応しましょう。
手続きの期間は裁判所の運用や事案の内容に左右されます。
申立人自身の準備によってスムーズに進められる可能性は高まります。
自己破産を決意したら、できるだけ早く債務整理(借金問題)の経験が豊富な弁護士に相談することが手続きをスムーズに進めるポイントになります。
弁護士は法律の専門家として、申立てに必要な書類を正確に準備し、裁判所や管財人とのやり取りを代理人としてスムーズにおこないます。
なお、破産手続きの運用が裁判所ごとに異なり、必要書類や手続きの流れはそれぞれ違うことがあります。
そのため、地元の弁護士に相談することをおすすめします。
同時廃止事件は、最も迅速な手続きです。
可能であれば、弁護士と相談の上、法的に問題のない範囲で、同時廃止を目指す準備ができないか検討するのが良いでしょう。
申立て前の準備段階で、必要な書類を迅速に揃えることで、申立てまでの期間が短縮されます。
また、手続きに必要な費用(弁護士費用、裁判所への予納金)の準備も求められます。
特に管財事件の場合、予納金(最低約20万円)が納付できなければ手続きが開始されません。
免責許可決定が確定すると、借金の返済義務は免除されますが、その後も一定期間、いくつかの影響が残ります。
自己破産することで、次の影響があります。
自己破産をすると、手続きの「開始決定時」と「免責許可決定時」の計2回、氏名と住所が官報(国の広報誌)に掲載されます。
官報は公的な文書ですが、日常的に確認している人は金融機関や一部の職業の方に限られるため、周囲の人に知られるリスクは限定的です。
自己破産の手続きを行うと、個人の金融取引履歴である「信用情報」に事故情報として登録されます。
これにより新規でローンを組んだり、クレジットカードの審査に落ちたりすることがあります。
信用情報に事故情報が登録されている期間(上記 5〜7年間)は、原則として新規のクレジットカード作成、ローンの契約(住宅ローン、自動車ローンなど)、新たな借り入れはできません。
この期間が経過し、信用情報から事故情報が削除されれば、再び金融サービスの利用の利用ができることがあります。
ただし、最終的な審査は各金融機関が個別に判断します(特に破産手続きで迷惑をかけた会社(社内ブラック)での再契約は困難な場合があります)。
(※登録期間は各機関の運用により変更される可能性があります。)
自己破産手続き中は、一部の資格や職業に就くことが制限されます(破産法第255条)。
具体的には、弁護士、司法書士、税理士などの士業のほか、警備員、保険外交員、宅地建物取引士(登録の欠格事由)などが該当します。
重要なのは、この制限が続くのは「破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまで」の期間(同時廃止で約3〜4か月、管財事件で数か月〜1年程度)である点です。
免責許可決定が確定すると、法律上当然に資格は「復権」(破産法第256条)し、制限は自動的に解除されます。
特別な手続きは不要で、再びその資格を用いて仕事をすることが可能になります。
自己破産の期間に関して、個別のケースでよく寄せられる質問にお答えします。
A. お客様ご自身の状況によりますが、通常2か月から6か月程度を要します。
弁護士からの受任通知で取り立ては止まりますが、その間に申立てに必要な書類(家計簿、多数の銀行口座の履歴、財産資料など)を収集・作成する必要があります。
資料の収集がスムーズに進めば準備期間は短縮されます。
A. 原則として、弁護士や裁判所からご家族や会社へ連絡がいくことはありません。
ただし、以下のようなケースでは知られる可能性があります。
くわしくは下記のコラムで解説しています。
A. 手続きの種類によります。
なお、任意整理、個人再生は残る借金を分割払いで和解し、3年~5年の間返済を継続するため、安定した収入が必要になります。
したがって、自己破産の「同時廃止事件」は、他の法的整理(個人再生)と比べても迅速に完了する手続きと言えます。
A. 長くなる可能性が高いです。
前回の免責許可決定から7年以内の再申立ては、原則として免責不許可事由(破産法第252条第1項第10号)に該当します。
7年経過していても、2回目であるという事実は裁判官や管財人による厳格な審査対象となります。
そのため、同時廃止にはなりにくく、管財事件(少額管財または通常管財)として、借金の経緯や家計状況が詳細に調査されるため、期間は長引く傾向にあります。
自己破産の手続き期間は、個人の財産状況によって適用される手続きが異なるため、一概には言えません。
自己破産の手続きは非常に専門的であり、申立書や家計簿の作成、裁判所とのやり取りには法的な知識が求められます。
ご自身のケースでどれくらいの期間がかかるか、どの手続きが最適かを知るためにも、まずは借金問題に精通した弁護士へご相談ください。
たちばな総合法律事務所では、借金問題に関する無料相談を受け付けています。
法律相談は、電話(10分)、来所相談(60分)にておこなっています。
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