法人破産をしたいが「費用がない」場合の対処法を解説
法人破産
2025 . 09.19
法人破産
2025 . 09.19
目 次
💡負債に悩む経営者の方へ
法人の連帯保証人となっている場合、法人と代表者個人がともに破産を申し立てることが、有効な解決策となります。
ただし、いずれも裁判所に納める費用がかかるため、手元に現金があるうちに弁護士に相談されることが大切です。
このまま返済を継続しても立ち行かないと感じた時点で、ご相談ください。
会社の経営状況が悪化し、法人破産を考え始めたものの、「手続きを進めるためのお金がない…」と八方塞がりな気持ちになっていないでしょうか。
本記事は、まさにそのような費用面で法人破産をためらっている経営者の方に向けて、具体的な解決策を徹底的に解説します。
費用がないからと手続きを先延ばしにすると、かえって状況が悪化し、取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。
■ この記事で分かること
一人で抱え込まず、正しい知識を身につけて、再スタートへの第一歩を踏み出しましょう。
法人破産には裁判所への支払いをはじめ、いくつかの費用が発生します。
内訳を理解しておくと、費用確保の計画が立てやすくなります。
主な費用は「裁判所に納める費用」と「弁護士に支払う費用」の2つに大きく分かれます。
早めに費用の見通しを立てることで、手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。
なお、法人破産の費用については次のコラムでも詳しく解説しています。
予納金は、破産手続を進めるために裁判所にあらかじめ納付する費用のことで、破産手続きにおける最も大きな割合を占めます。
この予納金から、裁判所によって選任される破産管財人(会社の財産を調査・管理・換価し、債権者に分配する役割を担う弁護士)の報酬や、その他の実費が支払われます。
破産管財人が活動するための原資となるため、「引継予納金」「管財予納金」とも呼ばれます。
予納金の額は、会社の負債総額に応じて変動するのが一般的です。
以下は、東京地方裁判所における予納金の基準の一例です。
このように、負債規模によっては高額になるため、申立てのタイミングから逆算して、計画的に資金を確保する必要があります。
法人破産の破産申立時には、裁判所への申立手数料として収入印紙1,000円が必要です。
また、裁判所が債権者へ書類を送付するための郵便切手代も実費として納付します。
郵便切手代は、債権者の数によって変動しますが、おおむね数千円から数万円程度です。
債権者が多い中小企業などでは高くなる可能性もあります。
これらの費用が支払われないと、手続きが開始されず、債権者への通知も滞ってしまうため注意が必要です。
破産手続が開始されたことや、手続きが終結したことなどは、国の広報誌である「官報」に掲載することが破産法で義務付けられています。
この官報掲載費用も破産手続きの費用に含まれ、通常は1万円~2万円程度です。
これは、すべての債権者に破産の事実を知らせ、手続きに参加する機会を保障するための重要な手続きです。
申立て時に予納金とあわせて支払うのが一般的です。
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法人破産は手続きが非常に複雑なため、弁護士に依頼するのが一般的です。
また、弁護士を代理人に立てることで、予納金が大幅に安くなる「少額管財」という制度を利用できる可能性があります。
その結果、ご自身で進める場合と比べて、弁護士費用を支払っても費用総額が変わらないケースもあります。
費用が変わらないのであれば、手続きの負担を減らせる弁護士への依頼を検討するのも良いでしょう。
ℹ️参照元情報
Q5 破産を申し立てる費用はどのくらい必要ですか?
管財事件の場合には,破産管財人を選任して破産手続を進める費用を用意していただく必要があります。
用意が必要な費用の額は,事件ごとに裁判所が決めることになっています。
大阪地裁倒産部(第6民事部)では,弁護士に依頼して破産の申立てをする場合は最低20万円,弁護士に依頼しないでご本人が破産の申立てをする場合は最低50万円の用意を求めています。
その報酬は案件の複雑さ(債権者数、財産状況など)や会社の規模によって変動します。
法人破産における弁護士費用の相場は、着手金と成功報酬をあわせて50万円~150万円以上と幅があります。
多くの法律事務所では、会社の負債額や財産状況に応じて料金体系を設定しています。
費用がない状況では、この弁護士費用も大きな負担に感じられるかもしれません。
しかし、後述するように分割払いに柔軟に対応してくれる事務所も多いため、まずはあきらめずに相談することが重要です。
「費用がないから」と破産手続きを後回しにすると、事態は好転するどころか、さらに深刻な状況に陥る危険性が非常に高いです。
破産が必要な経営状況で手続きを先延ばしにすると、以下のような深刻なリスクが発生します。
⚠️ 手続きの先延ばしに伴う5つのリスク
1債権者からの取り立てが激化する
支払いが滞れば、当然ながら債権者からの督促は厳しくなります。
最終的には訴訟を起こされ、会社の財産や売掛金が差し押さえられ、運転資金に困り事業経営が更に困難になる可能性があります。
2代表者個人の財産に危険が及ぶ
代表者が会社の借金の連帯保証人になっているケースでは、返済不能となった場合には会社の債務は代表者個人に直接請求され、個人の預金や不動産が差し押さえの対象となります。
3財産が不当に流出・価値が減少する
適切な管理ができないまま時間が経過すると、会社の資産が散逸したり、価値が大きく下がったりする恐れがあります。
適切に換価処分をおこなわなかった場合、破産申立後に破産管財人から責任を追及される原因にもなります(破産手続きが難航する可能性があります)。
4遅延損害金が膨らみ続ける
放置している間も、借金に対する遅延損害金は日々増え続けます。
5従業員や取引先に多大な迷惑がかかる
突然事業が停止すれば、給料が支払われない従業員や、支払いを受けられない取引先が路頭に迷うことになりかねません。
きちんと破産手続きをおこなうことで従業員は、失業保険や未払賃金立替制度を利用することができるようになります。
早期に弁護士へ相談しない最大のデメリットは、「打てる手が少なくなる」ことです。
資金が完全に底をついてからでは、破産費用そのものの捻出が極めて困難になります。
また、弁護士に早期に相談していれば、資産を適正な価格で現金化する時間を確保できたり、債権者との交渉を有利に進められたりする可能性が残されています。
相談が遅れると、これらの選択肢を失い、より困難な状況で手続きを進めざるを得なくなります。
結果として、代表者個人の負担が増え、ご自身の生活再建から遠ざかってしまうのです。
「費用がない」と諦めるのはまだ早いです。
破産手続きに必要な費用を確保するためには、いくつかの具体的な方法があります。
どの解決方法を選択するにせよ、必ず弁護士に相談の上、法的に問題のない方法で進めることが鉄則です。
自己判断で会社の財産を処分すると、後々「財産隠し」と見なされ、深刻なトラブルに発展する可能性があるためです。
代表者個人の預貯金や生命保険の解約返戻金、不動産や自動車などを売却して費用に充てる方法です。
これは、多くの経営者が最終的に選択する方法の一つです。
ただし、注意点があります。
会社と代表者は法律上別人格であるため、代表者の個人資産を会社の破産費用に充てることは、会社に対して代表者が「貸し付け」または「贈与」したという形になります。
また、代表者個人も多額の債務を抱え、自己破産を検討している場合は、個人の財産を安易に動かすことはできません。
必ず弁護士に相談し、法人破産と個人の債務整理を一体で考え、最適な流れを検討する必要があります。
会社に未回収の売掛金があれば、それを回収して費用に充てることができます。
これは会社の正当な財産であるため、最も問題の少ない方法の一つです。
弁護士に依頼すれば、弁護士名義で内容証明郵便を送付するなどして、取引先に支払いをうながすことができます。
自社で回収が難航していたケースでも、弁護士が介入することでスムーズに回収できることが少なくありません。回収した売掛金から弁護士費用や予納金を支払える場合もあります。
なお、社会保険料の滞納により、売掛債権を国に差し押さえられる場合があります。
法人破産を決意し、国税の滞納などがある場合には、早めに弁護士に相談してください。
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会社が所有する不動産、機械、在庫商品などを破産申立て前に売却し、その代金を費用に充てる方法です。
この方法で最も重要なのは「適正価格で売却する」ことです。
例えば、1000万円の価値がある機械を、特定の取引先に100万円で売却するような行為は「詐害行為(債権者を害する行為)」とみなされ、破産手続き開始後に破産管財人によって取引が否認される可能性があります(破産法第160条)。
そうならないためにも、複数の業者から見積もりを取るなど、売却価格が客観的に妥当であることを示す証拠を残しておくことが不可欠です。
この売却処分についても弁護士の指導のもとで行うのが安全です。
多くの法律事務所では、法人破産の弁護士費用について分割払いに応じています。
正式に依頼し、弁護士が各債権者に「受任通知」を発送すれば、会社への直接の取り立てはストップします。
そのため、これまで返済に充てていたお金を弁護士費用や予納金の積立に回すことが可能になります。
まずは相談時に、費用がない現状を正直に説明し、分割払いが可能か確認してみましょう。
予納金についても、裁判所によっては事情を考慮し、分納を認めてくれるケースがあります(破産法第23条第1項)。
ただ、実際に認められることは少なく、分納期間は短いです。
そのため、やはり申立前に破産費用全額を確保しておく必要があります。
少額管財とは、一定の要件を満たす場合に、通常の破産手続きよりも低い予納金で手続きを進められる制度です。
東京地裁の場合、予納金の最低額が20万円と、通常管財(最低70万円)に比べて大幅に低く設定されています。
これにより、費用負担を大きく軽減できます。
ただし、少額管財を利用するためには、代理人弁護士による十分な事前調査と申立書準備がされていることが必須の条件です。
つまり、弁護士に依頼しなければ利用できない制度となります。
親族や知人から資金援助を受けて費用を捻出する方法です。
心情的に頼みづらいかもしれませんが、事業の最後をきちんと締めくくるための費用であることを誠心誠意伝えれば、力を貸してくれる方がいるかもしれません。
ただし、援助を受ける際は、それが「贈与」なのか「貸付」なのかを明確にしておくことが大切です。
貸付けであれば、破産申立書の債権者一覧表に債権者として記載する必要があります。
破産財団(破産管財人が管理する会社の財産)から手続き費用を支出することが見込まれる場合に、裁判所が一時的に費用を立て替える「仮支弁制度」の利用も理論上は考えられます。
しかし、実務上、この制度が利用されることは稀です。
これらの方法は、あくまで例外的な選択肢として弁護士に相談する程度に留めておくのがよいでしょう。
法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕のない方向けに無料の法律相談や弁護士費用の立替えを行う公的機関ですが、原則として法人の破産案件は利用対象外です。
法テラスの民事法律扶助制度は、あくまで「個人」を対象としています。
ただし、例外として、代表者個人の自己破産や民事再生の申立てとあわせて相談する場合には、法人の問題についても相談に乗ってもらえたり、代表者個人の案件で制度を利用できる可能性があります。
利用できるかどうかは、収入や資産などの条件審査があるため、まずは最寄りの法テラスに問い合わせてみるのがよいでしょう。
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中小企業の場合、多くは金融機関からの借入れの際に代表者が連帯保証人になっています。
この場合、会社が破産しても代表者の保証債務はなくなりません。
そのため、法人破産と同時に、代表者個人も自己破産の申立てを行うケースが非常に多いのが実情です。
むしろ、両方を同時に弁護士に依頼し、手続きを進めることで、以下のようなメリットがあります。
✅ 法人と代表者が同時に破産申立てをするメリット
💰費用の効率化
別々に依頼するより、トータルの弁護士費用を抑えられる可能性がある。
⚙️手続きの円滑化
会社の財産と個人の財産の区別(公私混同の有無など)の調査がスムーズに進み、管財人の負担が軽減される。
😌精神的負担の軽減
会社の破産と個人の借金問題を同時に解決することで、先の見えない不安から解放され、新しい人生の再スタートを切りやすくなる。
会社の借金問題は、連帯保証のケースでは経営者個人の問題と不可分です。
費用がないと悩む前に、ご自身の状況も含めて弁護士に相談し、最適な解決策を見つけることが重要です。
会社の状況によっては、破産以外の方法で事業を整理・再建できる可能性も残されています。
ただし、これらの手続きも費用がかかる上、破産よりも複雑になるケースが多いため、弁護士との十分な相談が不可欠です。
事業活動を完全に停止し、法人格だけを残す方法です。
代表者個人が連帯保証人となっていない場合には、次のメリットがあります。
しかし、休眠中も税務申告の義務は残りますし、役員の任期が来れば登記も必要です。
何より、債務そのものは消滅しないため、根本的な解決にはなりません。
債権者から訴訟を起こされるリスクも残り続けるため、あくまで一時的な措置と考えるべきです。
特別清算は、債権者の協力が得られるなど、比較的友好的な状況で会社を清算する手続きです。
通常の破産よりも手続きが簡易で、予納金も安くなる可能性があります。
ただし、債権者の3分の2以上の同意が必要など、利用できる条件は限られます。
任意解散は、債務を完済できる見込みがある場合(資産超過)にのみ選択できる手続きです。
債務超過の状況では選択できません。
これらの手続きと破産のどちらが適しているかは、会社の財産状況や債権者との関係性によって大きく異なります。
自己判断はせず、必ず専門家である弁護士に相談するなどして、最適な事業再生または清算の方法を検討しましょう。
法人破産の費用が用意できないと追い詰められている状況でも、打つ手は残されています。
本記事で解説したように、費用を確保し、負担を軽減するための様々な方法が存在します。
最後に、重要なポイントを振り返ります。
💡 この記事のポイントまとめ
最も大切なことは、「費用がないから」と一人で悩み、行動をためらってしまうことです。状況は刻一刻と悪化していきます。
多くの法律事務所は、初回相談を無料で受け付けています。まずは勇気を出して、専門家である弁護士に現状を話してみてください。
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