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「民泊」の廃業・破産手続きの注意点~法人破産を扱う弁護士が解説する経営者コラム~


法人破産

2020 . 09.12



0.はじめに

民泊業の経営者の方に知っておいていただきたい廃業・破産手続きの注意点について解説しています。

1.民泊業を取り巻く環境(廃業の状況)

近年、海外観光客のインバウンド需要の高まりを受けて、国内宿泊施設の不足が懸念されたことから住宅宿泊(民泊)の利用促進・普及が進んでいました。

こうした中、Airbnbなどの民泊仲介のWEBサイトが人気を集めるなど、ホテル・民宿などの宿泊施設との競合が高まり、既存施設では店舗拡大、民泊においては不動産事業として物件所有者、旅行業者、不動産管理会社などによる積極的な取り組みが行われていました。

2020年の本来開催されるはずであった東京オリンピックを予定していたこともあり、政府においても訪日外国人観光客の数値目標を4000万人、2030年には6000万人に設定し、民泊(住宅宿泊)普及を目した住宅宿泊事業法、国家戦略特区法や各自治体における条例の整備などがおこなわれています。

そのような中で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う急激な国内外の旅行者の動きが止まったため、ホテル・民宿、民泊などの宿泊施設の対象となる「延べ宿泊者数」の減少が続いています(令和2年5月時点・宿泊旅行統計調査:国土交通省 官公庁「観光統計 宿泊旅行統計調査(令和2年5月・第2次速報、令和2年6月・第1次速報)」https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000420.html)。

観光庁の統計調査によると、令和2年における月の推移は、3月の延べ宿泊者数は2,394万人泊(前年同月比 -48.9%)、4月1,079万人泊(前年同月比-76.8%)、5月779万人泊(-84.9%)と大幅に減少しています。

6月に入ってから延べ宿泊者数1,394万人と上昇に転じたものの前年同月比では-69.6%となっています。

ただ、民泊宿泊の廃業届出事態は、2019年頃から増加傾向にあったため、新型コロナウイルス感染症による影響のみならず、競争環境の変化による簡易宿泊所への業態転換含め、さまざまな理由が考えられるかもしれません。

1-1.[新型コロナ対応] 民泊業が利用できる助成金、補助金など

2020年現在、新型コロナウイルス感染症により売上減少などの影響を受けた民泊事業の経営者の方が利用できる「助成金」「給付金」や「融資」は次のとおりです。なお、これらの制度は日々変更などがあるため、最新情報は給付等を行う各手続窓口の情報を参照してください。

また、下記に挙げている以外の「融資」関連の支援は、取引金融機関、商工中金、日本政策金融公庫などが窓口となる特別貸付などがあります。

※【ご注意ください】
2020年6月時点での情報に基づいて掲載しております。
最新情報は各窓口にお問合せ・ご確認いただけますようお願い致します。

参考情報

「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」

  • 資金繰り
  • 設備投資・販路開拓
  • 経営環境の整備

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf (経済産業省)

[ 助成金・給付金等 ]
持続化給付金
 条 件
 売上が前年同月比で50%以上減
 概 要
 前年総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)
 法人は200万円以内
 個人事業者等は100万円以内を支給
 窓 口
 中小企業 金融・給付金相談窓口

[ 融資関連 ]
新型コロナ特例リスケジュール
 条 件
 既往債務の支払いが困難な事業者
 概 要
 中小企業再生支援協議会が、主要債務者の支援姿勢を確認して、1年間の元金返済猶予を要請。その後計画のサポート等あり。
 窓 口
 都道府県中小企業再生支援協議会

小規模企業共済制度の特例緊急経営安定貸付等
 条 件
 最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して
 5%以上減している小規模企業共済の貸付資格を有する契約者
 概 要
 契約者が納付した掛金の総額の7~9割の範囲内で、2,000万円が貸付上限
 償還期間
 貸付金額500万円以下の場合4年
 貸付金額505万円以上の場合は6年(据え置き期間は1年)
 窓 口
 中小企業基盤整備機構共済相談室

契約者貸付制度
 条 件
 生命保険料が払えない契約者
 概 要
 契約の解約返戻金の9割を限度に貸付。
 特例措置として9月末まで無利息(各保険会社によって対応が異なる)
 窓 口
 契約先の各保険会社

1-2.民泊事業の継続判断のタイミング

 これらの融資、返済猶予などを受けながら、事業の継続・再開の模索を行うことになるかと思います。

 しかしながら、政府からの都道府県をまたいだ移動の制限自粛要請や緊急事態宣言の発令の可能性、大規模イベントの自粛、海外渡航の制限などコロナ禍感染拡大の封じ込めの目途が立たない限り、こうした制限・制約は解除されず、従前の環境に戻るには長期の期間が必要となることは明らかです。

 民泊経営を行う事業者において、事業自体の清算を行う倒産手続等をとる場合に大きな負担となるのは次の内容です。

2.民泊事業で特有の「負担」とは

2-1.民泊事業用に利用していた賃貸物件の明け渡し作業

賃貸物件を民泊事業として利用していた場合、明け渡しの際の費用や賃貸人に対する原状回復費用の支払いがあげられます。

賃貸人に対して敷金などの保証金を預けている場合でも、原状回復費用の追加費用の発生や、撤去費用などがさらにかかることがあります。
そのため、手持ち資金に余裕があるうちに事業廃止の判断をし、弁護士に相談されるのが良いでしょう。

2-2.取引業者への対応

清掃などをオペレーター業者に依頼している場合があります。

2-3.リース会社への対応

備品(れいぞうこ、TVなど)をリースしている場合があります。

2-4.宿泊予約のお客様への対応

 旅館ほどではないですが、WEBサイトへ掲載する案内文の出稿を事前に準備しておく必要があります。

3.民泊業の廃業で特に必要となる作業とは

3-1.廃業届出書の提出(住宅宿泊事業法)

 民泊事業をおこなっている方において、住宅所在地を管轄する行政機関(都道府県知事等)に住宅宿泊事業届出書を提出しているかと思います。
廃業の際も、各自治体において廃業届出の提出期限などが定められているため、届け出をおこなった自治体に確認することが必要です。

たとえば、大阪府においては「事業を廃止した場合は、30日以内に届け出」るように定められています

住宅宿泊事業者としての届出者の住所、氏名、届け出の理由、届出事由の生じた日、届け出住宅に人を宿泊させた日数など住宅宿泊事業に関する事項などを記載した廃業等届出書と添付必要書類を提出することになっています。

これらの届け出は住宅宿泊事業法にもとづく届け出となっています。(引用・参照 大阪府 健康医療部 生活衛生室 環境衛生課「住宅宿泊事業法届出の手引き 令和2年4月」変更・廃業等届出より ·http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/33059/00000000/guidance8.pdf 、大阪府「住宅宿泊事業に関する情報提供」 http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyoeisei/minnpaku/index.html)

4.民泊業の代表的な廃業手続は4つ(法人破産・民事再生・特別清算・清算手続)

4-1.民泊業が知っておきたい「法人破産手続」

 法人の破産手続は、所在地を管轄する地方裁判所に対して手続をとることになります。

 資産を換価し、債権者に対して配当をおこない、法人を消滅させる手続です。これにより法人としての負債の返済が必要なくなります

 流れとしては大きく、① 裁判所への申立て② 破産決定・破産管財人の選任(法人の財産を管理者が裁判所から選任され、管財人が以降の手続を進めます)、③ 債権者集会など、④ 債権者への配当、⑤ 終了となります。
法人格(株式会社など)を持たない個人経営の民泊業店の方は「個人破産(自己破産手続)」による手続を行なうことになります。

4-2.民泊業が知っておきたい「民事再生」

 法人における民事再生手続は、借入れの返済期間の延長や、その借入れを一部減額して返済を行うための手続です。

 そのため、資金繰りが厳しく運転資金さえ危うい場合には向いていません

 この手続も、地方裁判所に対して手続を行う必要があり、裁判所へ納める費用(予納金)も300万円以上を要するなど高額であることも、手続を行ううえで支障となる可能性があります。

 民事再生手続の流れは、① 裁判所への申立て(予納金をこのとき納付)、② 保全処分命令・監督委員の選任、③ 債権者に対しての説明会開催、④ 再建の可能性があれば手続開始決定、⑤ 財産目録や報告書などを裁判所へ提出、⑥ 債権者からの債権届出、⑦再建方法の計画案提出、⑧再生計画に対する監督委員からの意見や債権者の認否、⑨認可決定となります。

 各手続は煩雑で専門的な内容となっているため、個人事業者など本人での手続は難しく、弁護士に依頼されることが一般的です。

4-3.民泊業が知っておきたい「清算手続」

 「資産」が「負債」を上回っている場合(資産超過)の場合に利用できる、廃業手続のひとつです。

 負債が資産を上回っている「債務超過」の場合には、次に説明する「特別清算」手続などの利用を検討することになります。

 清算手続は、これまで解説してきた「破産」「民事再生」とは異なり、裁判所を通さない事業廃止の手続です。
 しかし、廃業にあたっては、各監督官庁などに書類などを提出し、法律にしたがって会社を清算する「清算人」の選任や、その清算人による清算事務(会社の資産売却や債務の弁済など)を行うことが必要です。

4-4.民泊業が知っておきたい「特別清算手続」

 特別清算は、通常の「清算手続」とは異なり、資産よりも負債が上回っている場合に利用される廃業手続のひとつです。

 株式会社のみが利用できる裁判手続になり、通常の清算手続と同様に株主総会で財産の管理処分権を有する清算人を選任できることから、会社に一定の主導権があります。

 しかし、大口の債権者の賛成(全体の債務の2/3以上の同意など)が得られない場合には、特別清算手続は利用できません

 特別清算には① 協定型(書面投票者を含む出席議決権者の過半数、かつ、総議決権額2/3以上の同意を受け可決と裁判所の認可を受けた協定にもとづき弁済)、② 和解型(債権者との個別の和解契約にもとづき弁済)の2種類があります。

 債権者との同意などが得ることが難しい場合には、法人破産などの他手続を検討する必要があります。

 特別清算は再建型の手続ではないため、手続が終了した際には、法人破産同様に会社の法人格は消滅します。

 結論として法人が消滅することに変わりはないため、特別清算手続を本当にとる必要があるのか、法人破産などの手続によるほうが良いのか、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

 なお、特別清算手続が取られるケースのひとつとして、収益事業を会社分割や事業譲渡により新会社等に承継させて、不採算事業が残る旧会社(既存会社)については特別清算手続をとり、法人格を消滅させるという方法もあります(第二会社方式)。

 メリットとしては① 従業員への雇用維持、② 既存取引先への返済、③ 債務引継ぎの回避、 ④ 会社継続の道を残すなどが挙げられます。一方でデメリットとしては、① 新会社等において許認可を再度取得する必要があること(費用など)、② 資金調達や資金繰りが問題となりやすい、といった点が挙げられます。

5.民泊業経営者の代表的な負債整理方法は3つ

 経営者個人が、会社の保証人となっている場合、会社の廃業とともに個人への保証債務の請求がおこなわれます。

 そのため、廃業と合わせて、個人の負債整理を行うことが殆どです。

 民泊経営者の方において考えられる主な負債整理の方法は、次の3つがあります。

 インターネットから情報を得ることは簡単にできますが、ご自身の事情などに合った最適な解決方法はこれらの手続の専門家である弁護士に相談しながら選択されることをお勧めします。

5-1.民泊業経営者の負債整理方法その1「自己破産(個人破産)」

 個人の破産手続は、裁判所を利用した借金免除のための手続です。

 自宅、生命保険などの資産を処分し、債権者への配当を行うことで、借金返済を免除されます。
 一定の負担があるため、マイナスイメージが付きまといますが、国が認めた生活再建のための手続です。デメリットや負担について正しく知り、うまく利用されるのが良いでしょう。

5-2.民泊業経営者の負債整理方法その2「個人再生手続」

 個人の民事再生手続(個人再生)は、負債の一部を返済することで、残る負債を免除してもらう手続です。

 裁判所を利用した手続のひとつです。大きなメリットとして挙げられるのは、個人破産と違い「自宅」を手放さなくて済む、という点です。
 自宅を手放したくない、という経営者の方は当手続を検討されてみるのも良いでしょう。

5-3.民泊業経営者の負債整理方法その3「任意整理」

 任意整理は、裁判所を利用しない負債整理の方法です。

 債権者と将来利息のカット、返済期間を伸ばすなど返済条件等の変更を交渉し、和解をおこないます。あくまで、任意の交渉になるため債権者が和解に応じてくれるかどうかは分かりません。

6.まとめ

 以上のように、民泊業経営者として考えられる事業撤退のタイミングや、廃業時に問題となりやすい手続やそのポイントについて解説しました。

 当事務所では、事業撤退に伴う破産申立て手続などによる、経営 者の方の生活再建を支援しています。お気軽にご相談ください。

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