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法人破産(会社破産)を放置するとどうなる?リスク・デメリットから手続きまで徹底解説


法人破産

2025 . 04.10

この記事でわかること

  •  法人破産を放置することはできるか?
  •  法人破産を放置するリスク
  •  法人破産の費用を工面できない場合の対処法
執筆者【 弁護士・税理士 】
たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 橘髙 和芳

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995


京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事
。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。

法人破産(会社破産)を放置するとどうなる?リスク・デメリットから手続きまで徹底解説

法人として本来は破産手続きを行うべきにもかかわらず、これを長期間放置してしまうと、代表者自身が経済的にも精神的にも大きな負担を抱え込むことがあります。

特に、債権者からの取り立てや財産差し押さえのリスクが継続してしまい、法人のみならず代表者個人にまで深刻な影響が及ぶケースも少なくありません。

そこで本記事では、法人破産を放置した場合に想定されるリスクやデメリット、破産を進める際に必要となる費用対策、そして破産手続きの具体的な流れまで詳しく解説していきます。

1.法人破産を放置するとは?基本的な仕組みと背景

まずは、法人破産を放置する状態がどのようなものか、その背景となる事情を確認していきましょう。

法人破産の手続きを行わないまま実質的に事業が継続できなくなると、会社は負債を返済できず、資産を売却してもなお資金が不足している状態となります。

にもかかわらず手続きを行わずにずるずると放置すると、債権者側からの請求や取立てが断続的に続き、経営者は状況を打開できないまま困窮を深めていく可能性が高まります。

法律相談をおこなう中でも、放置の理由として多いものは「破産費用を捻出できない」、あるいは「破産の手続きに対する心理的なハードルが大きい」などが挙げられます。

特に法人破産を検討すべき状況なのに放置する最大のリスクは、債権者対応を先送りにしているうちに財務状況がさらに悪化し、最終的に代表者個人の生活も困窮することです。

まじめな経営者の方ほど、ひとりで最後まで頑張ろうとするケースも多くみられます。
ただ、法人破産手続きでは、裁判所に納める「予納金」「破産管財人費用」が必要です。
その費用も工面できなくなっては、法人破産をおこなうことが難しくなります。

債権者が代表者や連帯保証人に対し強い請求を行うケースもあるため、手元に資金が残っているうちに法律相談を受け、適切な債務整理手続きをおこなうことが大切です。

2.放置による代表者への責任と連帯保証の影響

破産を放置した場合に代表者個人が負う責任や、連帯保証契約の有無による影響を説明します。

基本的に、法人(会社)と個人は別もの(別人格)であるため、法人名義で借り入れをする際に連帯保証人となっているような場合を除き、返済義務を負いません。

ただ、会社が合資会社で無限責任社員や合名会社の社員である場合に、法人が負債の支払ができない場合には返済義務を負い、会社の代表者として破産申立時には破産管財人に協力する義務や、一定の場合に税金(公租公課)の第二納税義務者としての責任が生じることもあります。

 

参考記事 「法人破産における代表者・社長の責任と義務の範囲
法人の滞納税金についての納税義務が発生するケース(第二納税義務)や、法人への賠償責任など、法人(会社)が破産した場合における代表者・社長の責任や、義務の範囲について解説しています。

 

上記のように会社の負債は原則として会社そのものが返済義務を負いますが、例外的に代表者にまで請求が及ぶケースが存在します。

特に連帯保証契約を結んでいる場合は個人の経済的な負担が増大しやすく、また連帯保証人のいないケースでも、不法行為や役員責任追及などによって個人責任が問われるリスクもあります。

これらを踏まえると、破産手続きを先延ばしにするほど代表者自身のリスクが増大する可能性があります。

会社自体が支払い不能であるにもかかわらず適切な法的整理を行わないと、債権者はあらゆる手段を使って債務の回収を目指そうとします。

その結果、代表者個人名義の資産や収入に対する差し押さえまで行われる可能性が高くなります。

こうしたリスクを避けるためにも、代表者は連帯保証の有無に関わらず、早期に法人破産の必要性を検討することが重要です。

手続きを先送りにすると、結果的に個人の財産や信用を失う深刻な事態を招いてしまうことがあるかもしれません。

2-1.代表者が連帯保証人になっている場合

社長として法人の連帯保証人になっていると、法人破産を放置することで代表者個人が返済義務を一手に引き受けるリスクが一気に高まります。

借入先や取引先から、法人名義の債務が返済不能(や返済遅延)となった際に、連帯保証人である代表者個人に対して、直ちに債権者から全額の支払いを請求される可能性があります。

通常の保証人と異なり、「まず主債務者に請求してください」と主張する権利(催告の抗弁権)や、「主債務者の財産を差し押さえてください」と主張する権利(検索の抗弁権)がありません。

つまり、連帯保証人は主債務者と同様の返済義務を負うことになります。

そのため、債権者は、主債務者に請求することなく、いつでも連帯保証人に直接請求をすることができます。

さらに、返済に応じない場合には、訴訟や財産差し押さえや給料の差し押さえといった強制執行がなされる可能性もあります。

こうした事態に陥ると、自己破産手続き(個人破産)を検討せざるを得ないケースにまで進むことが多いです。

したがって、代表者が連帯保証をしている場合は、早期に専門家へ相談し、法人破産の選択肢を含めた最適な方法を探ることが得策です。

放置することで負債整理の選択肢が狭まり、被害が拡大するリスクが高まります。

 

参考記事 「自己破産による連帯保証人への影響
主債務者が自己破産した場合の連帯保証人への影響、連帯保証人が自己破産した場合の主債務者への影響の2つのパターンについて弁護士が詳しく解説しています。

 

2-2.代表者が連帯保証人になっていない場合

代表者が連帯保証人でない場合でも、法人破産などの手段を取らずに放置するリスクがあります。

たとえば、債権者が債権者破産を申し立てる可能性があり、その手続きの中で代表者が法的責任を追及される事態もあり得ます

なお、「債権者破産申立」とは、債務者が自ら破産を申し立てる「自己破産」とは異なり、債権者が主体となって行う手続きです。

債権者が、なぜ債務者の破産申立てをおこなうかの主な理由は次の通りです。

 

参照 債権者が債務者の破産を申し立てる理由(主なもの)

・債権回収の見込みがないと判断した場合
債務者が自発的に返済する見込みがなく、他の債権者もいるような状況で、早期に法的手続きを開始することで、少しでも多くの債権を回収しようとする場合。

・債務者の財産状況を明らかにするため
破産手続きを通じて、債務者の財産状況を詳細に調査し、隠された財産がないかなどを確認するため。

・他の債権者との公平性を確保するため
複数の債権者がいる場合に、一部の債権者だけが優先的に回収することを防ぎ、公平な配当を受けるため。

 

代表取締役は、会社全体の経営を担う重要な立場であり、善良な管理者の注意義務をもって職務を行う義務があります。

債務超過や返済滞納に至った原因が、代表取締役の著しい経営判断の誤りや、必要な措置を怠ったこと(例えば、早期に経営改善策を講じなかった、漫然と事業を継続し損失を拡大させたなど)にあると認められた場合、責任追及として会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります

例えば、代表者から会社から多額の使途不明な用途で出金し、会社が倒産に至った場合では、債権者から代表者が責任を問われる場合がありますので、ご留意ください。

結果として、法人の資産だけではなく個人の信用や財産にまで影響が及ぶリスクがあります。

連帯保証なしであっても、放置すれば会社自体の信用力はどんどん低下し、事実上の活動停止状態に陥ることで代表者の社会的信用も損なわれていきます。

放置は決して安全策ではなく、むしろ最悪の事態を招く危険性があることを認識する必要があります。

3.法人破産を放置した結果起こり得る具体的なリスク

法人破産を回避するために放置してしまうと、深刻なリスクが多方面に広がります。

会社の経営が破綻状態にもかかわらず破産手続きを先延ばしにすると、債権者による取り立てや訴訟提起されることで、最終的には会社全体の社会的信用の低下を招く恐れがあります。

こうした状態が続くと、銀行口座の凍結や金融機関からの新たな融資が得られなくなるなど、今後の事業再建を断念せざるを得ない状況に陥りやすくなります。

さらに、法人財産の差し押さえだけでなく、代表者個人にも法的請求が及ぶケースがあります。

結果的に破産手続きが避けられないのであれば、できる限り早い段階で弁護士などの専門家と協力しながら進めることが、事業継続や生活面への悪影響を最小化するための重要な手段となります。

3-1.金銭面でのリスク:差し押さえや債権者破産の可能性

法人破産を放置している間にも、債権者は債務の回収を止めません。

返済滞納などの信用不安の状態にある場合、債権者にとって損失が確定してしまうため、訴訟提起や強制執行による財産差し押さえに踏み切られたり、先ほど説明をした債権者が裁判所に破産を申し立てられたりする可能性があります。

後者は「債権者破産」と呼ばれ、債権者が会社を強制的に破産状態に追い込む手続きです。

債権者破産が申し立てられると、破産管財人の調査のもと、法人の全財産が換価処分されて債権者に配当されることになります。

法人の代表者は主導的に破産手続きをコントロールできず、不利な条件下で保有資産の処分を迫られることになりかねません。

このように放置状態が続けば、最終的には債権者による強制手続きに巻き込まれ、法人としての再建や代表者の負担軽減を自発的に図る機会を失ってしまう可能性が高まります。

3-2.信用面でのリスク:社会的信用の喪失

法人破産の放置は社会的信用を大きく損ねる要因となります。

取引先や金融機関が、契約や融資を継続することをためらうだけでなく、今後の業務提携や新たな借り入れ契約も難しくなるでしょう。

また、世間一般からも「経営が立ち行かないのに放置している」という印象を持たれやすく、法人のブランドイメージは急激に低下します。

過去の実績や評判が良好であっても、滞納や督促の状況が明るみに出ることで信頼を一気に失う可能性があります。

こうした信用の低下は、たとえ新たなビジネスを始めたいと考えた際にも大きな障害となるでしょう。

最終的には法人のみならず代表者個人の信用にも影響が及ぶため、放置は避けるべきと言えます。

3-3.生活面でのリスク:代表者個人への影響

法人破産の問題を放置すると、代表者個人の生活に影響が及ぶ場合があります。

連帯保証人の場合は、主債務者である法人と同様の返済義務を負うため、口座や自宅不動産などにまで差し押さえが及ぶリスクがあります。

連帯保証人になっていない場合でも、経営状況の悪化にともない収入が減り、個人の生活への影響が生じます。

よくあるケースとして、個人資産を処分して事業資金の返済に充てたり、事業からの収入が減り生活費としての借入れへの返済が滞納したことで、訴訟を起こされたり、差押えを受けたりすることがあります。

他方、連帯保証人でなくとも、会社債務のために代表者が自宅等に抵当権を設定している場合には、会社の債務の支払不能に基づき、当該自宅を担保実行により失う可能性があります。

個人事業者の場合、従業員の未払い給与、社会保険料、消費税、所得税といた税金の滞納は、自己破産でも免責されないため特に注意が必要です。

早い段階で、負債の拡大を止めないと後に個人の生活面に深刻な打撃を与えます。(なお、税金の滞納について、後に生活保護を受けることになった場合には、滞納税について免除される可能性はあります。)

ただ、破産手続に移行した場合には、破産手続開始決定時の滞納税金が破産手続完了後に請求されるケースが少ないようです。

このように、家族や周囲の人にも経済的・精神的な心配をかけることになるため、破産手続きを適切に進めることで負債を整理し、生活再建の道筋を明確にすることが必要です。

放置すればそういった再出発の機会すら失ってしまう危険性が高まります。

4.破産手続に必要な費用がない場合の対処法

法人破産の手続きを行いたくても、予納金や弁護士費用など資金不足が障壁となるケースがあります。

法人破産を申し立てるには、裁判所への予納金や弁護士への報酬が必要になりますが、すでに資金繰りが逼迫している場合にはこれらの費用を捻出するのが難しいこともあります。

そのため破産手続きを後回しにして放置してしまう経営者も少なくありません。

しかし、費用不足を理由に負債整理の問題を放置していると、債権者による差し押さえによる強制執行がおこなわれ、さらに資金が底をつく恐れがあります。

弁護士費用の捻出策や債権者との協議など、できるだけ早い段階で具体的な対策を講じることが肝心です。

4-1.予納金・弁護士費用の工面と注意点

予納金は破産管財人の費用や裁判所の手数料にあたるもので、申立先の地方裁判所の運用、会社の資産換価の状況などに応じて金額が変動します。

破産手続きに必要な費用がない場合の対処法の一つは、「可能な限り早い段階で、弁護士に相談し、法人破産を依頼すること」です。

弁護士に依頼した段階で、返済を止めることができます。
破産申立までに、法人が所有する資産の換価、売掛金の回収などをもって破産申立費用の確保をおこないます。

代表者が連帯保証人になっている場合、同時に破産申立をおこなうことが一般的です。

この場合、代表者自身も返済をストップすることができるため、破産を申し立てまでの間に生活を立て直します。

例えば、個人的な資産の売却や保険の解約などで予納金を確保する方法も検討できます。

また、法テラスの法律扶助といった公的支援制度の利用や知人・親族からの借り入れを利用するのも一案です。
いずれにせよ、事態を長引かせない工夫が求められます。(当事務所では、法テラス利用による法人破産申立事件には対応しておりません。

また、弁護士費用に関しては、分割払いの相談を受け付けている事務所もあります。

債権者に充ててた毎月の返済額をもって、分割で費用を積み立てることができます。

ただし、費用面ばかりにとらわれて質の低いサポートを選ぶと、後々手続きの不備でトラブルが発生するリスクがあるため注意が必要です。

費用をどう捻出するかが難しい場合でも、一度専門家である弁護士へ相談すると適切な対応策が見つかることがあります。
早めに相談し、最悪の事態を避けるのが賢明です。

4-2.特別清算や他の法的整理との比較

債務超過にある法人の借金問題は、法人破産以外にも任意整理があります。

これ以外の倒産手続きとして、会社更生、民事再生や特別清算といった解決方法もあります。

しかし、特別清算には債権者の合意を得る必要があり、全ての債権者の協力が得られない場合は成立しません。

また、会社更生や民事再生は裁判所に納める費用が高額であり、継続事業の収益見込みがないと実行は難しくなるでしょう。

このように、これらの手続きには高いハードルが存在します。

そのため、結論として個人事業主や中小企業にとって解決のための選択肢になることはほぼありません。

最適な法的整理方法は会社の状況や規模などに左右されるため、どの方法を選ぶにせよ専門家のサポートを得たうえで検討することをおすすめします。

 

5.代表者のみの破産は可能か?個人破産との違い

結論として、会社の代表者個人のみが自己破産を申立てることができる場合があります。

管轄の裁判所によって運用が異なるものの、法人と一緒に破産申立をするよう指摘を受けることがあります。

法人破産の必要があるにも関わらず、法人の破産予納金などの費用を用意することが難しいことから、代表者個人だけ破産申立を検討することがあります。

ただ、代表者が破産すると会社との委任関係が終了するため、債務超過状態にある法人は事実上放置されることになります。

債権者としては、税法上の損金処理ができず、法人資産が散逸や財産状況が不明確になるため、債権回収がより困難となります。

また、従業員にとっても、国の未払賃金の立替制度の利用による給料や退職金の支払いを受けることもできません。
従業員の生活にも多大な影響を与えます。

こうした破産予納金の問題に対して、東京地方裁判所では「少額管財」と呼ばれる予納金の低額化(最低20万円)を図る制度があります。

また、大阪地方裁判所でも「一般管財」と呼ばれる類型では、管財人予納金は216,000円と低額な設定になっています。

 

参考記事 「会社の法人破産手続にかかる全費用の詳細と、支払えない場合の対応方法
会社破産(法人破産)にかかる全費用について解説しています。また法人破産の費用を工面できない場合の対応方法についても解説しています。

 

いずれにせよ、法人破産をするかどうかはさておき、手元に資金がのこっているうちに、弁護士に相談し、今後の具体的な対処法についてアドバイスを受けておくのが良いでしょう。

 

6.解散や休眠会社として放置する方法は有効か?

法人を解散や休眠状態にすることで債務問題を回避できるのか、実務面での注意点を解説します。

代表者において法人の連帯保証人となっておらず、個人名義での借入れもない場合に休眠届出を提出するケースも考えらえます。

しかし、解散や休眠届を出しただけでは、法人の債務が完全に消滅するわけではありません。

休眠届出は、法人が事業活動を一時的に停止することを税務署や都道府県税事務所などに知らせるための手続きであり、支払い義務が消滅するわけではありません。

したがって、休眠中であっても、納付期限を過ぎた税金(滞納税金)の納付義務は依然として存在し、その遅延に対しては延滞税が課されます。

また、事業活動を停止している場合でも、法人住民税の均等割など、申告・納付義務が発生する税金があります。

休眠届出を提出する際には、これらの税務上の義務についても確認しておく必要があります。

滞納税金を放置すると、延滞税が加算され続け、さらに税務署や地方自治体による財産の差押えなどの強制的な徴収手続きが行われる可能性があります。

休眠しているからといって、これらの手続きが免除されるわけではありません。

債務超過状態にある法人の休眠届出は、一時的な手続き費用の回避や精神的な負担の軽減といった表面的なメリットはあります。

ただ、根本的な債務問題の解決にはならず、債権者からの法的措置のリスクや、将来的な事業再開の困難になるなど、多くのリスクを抱えることになります。

7.法人破産をスムーズに進めるための準備・手順

法人破産に踏み切る際は、あらかじめ準備しておくことでスムーズに手続きを進めやすくなります。

 

参考記事 「法人破産手続の申立準備から終了までの流れ
法人破産の手続きの流れについて基本知識を分かりやすく、かつ詳しく解説しています。

 

まずは会社の資産負債状況を整理し、銀行口座や在庫、売掛金などを正確に把握することから始めましょう。

書類や帳簿をきちんとまとめておくと、破産申立書の作成や破産管財人とのやり取りがスムーズになります。

次に、弁護士に相談することで、実務的な手続きや費用の明確化が期待できます。

法人破産の経験が豊富な専門家であれば、ケースに応じた最適な対処法や助言を得られるでしょう。(なお、法人破産について司法書士も相談をおこなっていることがありますが、書類作成の代行を基本とし、裁判所によっては弁護士が代理人となる場合よりも管財予納金が高額になるケースがあるので注意が必要です。)

無事、破産手続きが開始されると、裁判所が選任する破産管財人が会社の資産を換価処分し、配当を行います。

代表者は必要な書類や情報を適時に提供し、管財人の調査に協力する姿勢を示すことで、全体の手続きを円滑に進めることができます。

 

 

8.よくある質問

法人破産の相談でよくある質問について紹介します。

8-1.個人事業者の被相続人ですが、法人破産をした方がいいですか。

債務超過状態にある個人事業の代表者が死亡した場合、多くの場合は「相続放棄」により対応します。

家庭裁判所の相続放棄手続きをおこなうことで、相続開始当初から相続人ではなかったものとして取り扱われ、相続債権者への返済義務もなくなります。

その一方で、基本的に資産を相続することができません。
例えば、被相続人所有の自宅不動産に同居していた場合には、そこから退去する必要があります。

相続放棄をすべきか、資産と負債の確認、相続放棄による影響をよく考える必要があります。

なお、相続放棄できる期間に制限があります。

原則として、ご自身に相続の開始を知った時から3か月以内です。
そのため、早めに弁護士に相談をするなど対応を進める必要があります。

 

参考記事 「“ひとり社長”が急死したの場合における対応方法
個人事業主やひとり社長の法人において、代表者が死亡した場合における残された家族がとれる対応方法について解説します。

 

8-2.債務超過にある法人を放置して、第二会社を設立するリスクは?

結論として、次のリスクがあります。

① 第二次納税義務等のリスク

旧法人に滞納国税(法人税、消費税、源泉所得税など)がある場合、一定の要件を満たすと、旧法人の代表者個人が第二次納税義務を負う可能性があります。

これは、旧法人が破産手続きを行わずに放置されたとしても同様です。

第二次納税義務を負うと、代表者個人の財産が滞納国税の徴収対象となる可能性があります。

また、まれではありますが、放置前法人と同一地で、同一事業を同一代表者の下でなされている場合であれば、法人税法11条の実質課税者課税の原則に基づき、新設法人に課税される可能性もあります。

② 詐害行為取消権の対象となるリスク

旧法人の債務超過の状態を知りながら、債権者を害する目的で、旧法人の資産を不当に廉価で新会社に移転したり、事業を譲渡したりした場合、債権者(税務署を含む)は、これらの行為を詐害行為に当たります。

滞納国税を被保全債権として差し押さえることも考えられます。

③ 信用毀損のリスク

債務超過の法人を放置し、新たな会社を設立する行為は、社会的な信用を損なう可能性があります。

金融機関からの融資や取引先との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 刑事責任のリスク

意図的に税金や債務を免れる目的で、資産を隠匿したり、虚偽の申告を行ったりするなどの行為があった場合、脱税や詐欺破産などの罪に問われる可能性があります。

9.まとめ・総括

法人破産を放置することのリスクと、適切な手続きの重要性を振り返ります。

法人破産の手続きを長期的に放置すると、差し押さえや強制執行による資産の流出、債権者からの社会的信用の失墜など、多方面にわたる悪影響を免れられません。

連帯保証の有無に関わらず、代表者個人にも大きな責任が波及する可能性があります。

また、破産手続きに必要な費用が捻出できない場合でも、弁護士への相談を行い、予納金の工面や特別清算などの代替手段を検討することで、最善の解決策を模索するチャンスが生まれます。

放置するよりも、早期に対処することで負担を軽減しやすくなります。

最終的には、法人破産を適切に進めることで債務を整理することで、新たなスタートを切ることができます。

放置によってさらなるトラブルを招くより、専門家と協力しながら手続きを進めることを検討してみてはいかがでしょうか。

たちばな総合法律事務所では、法人の破産・廃業や生活再建に向けた個人の方の負債整理(個人再生・自己破産・任意整理)についてサポートしています。

破産管財人の経験を持つ、解決実績たしかな弁護士が相談から手続きが終結するまで、しっかり対応いたします。

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