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個人事業者が破産しても「事業継続」をすることは可能か


法人破産

2021 . 05.27

 

執筆者【 弁護士・税理士 】
たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 橘髙 和芳

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事
。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。

 

1.個人事業者が事業継続できる場合

個人事業者(事業をおこなっている個人の方のこと)が破産申立をした場合、事業は継続できるのでしょうか。

結論としては、原則として事業継続することは出来ません。「事業継続」というよりも、破産手続開始決定後に新たに事業を起業・再起するというほうが正確です。

1-1.破産管財人とその役割

破産管財人の大きな目標のひとつは、破産者に対する債権者への配当の元となる「破産財団(破産者の財産)」を増やすことです。

関連記事 | 破産管財人とは(破産手続における役割と権限)
個人・法人の破産手続で一定の場合に選任される「破産管財人」について、その職務と役割について解説しています。

そのため、破産管財人が、一時的に事業継続をおこなう場合、個人事業者である「破産者の生活のため」に事業を継続するのではなく、「債権者の利益」となるように事業活動をおこないます。

そのため、破産管財人が回収した金額は破産した個人事業者にわたることはありません。

なお、この破産管財人が事業継続する場合とは、破産法36条に規定があります。

 

参照条文:破産法36条(破産者の事業継続)
第三十六条 破産手続開始の決定がされた後であっても、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができる。

 

破産管財人が事業を継続することによる経済的な損失は「破産財団」の減少に結びつくため、基本的に破産管財人は事業を継続することはありません。

しかし、次のような場合においては、破産財団の「大きな損失」を招く恐れがあるため、事業を継続することもあります。

「破産後に管財人が事業継続をおこなう場合(例示)」

■ 破産財団への大きな損失
 事業継続しないことのリスクの方が大きい場合(多額の違約金が発生するような場合など)
■ 仕掛品、仕掛工事などがある場合
 少しの負担、少しのリスクで破産財団を増やすことができるような場合
■ 社会的影響が大きい場合
 債権者が多数にのぼる、生活インフラとしての役割であるなど、事業停止により社会が混乱するなど影響が大きいような場合
■ その他
 事業を継続することで破産財団を増やすことができるなど、個別具体的な事情により判断されることがあります。

1-2.個人事業者が事業再起をおこなうことができる場合とは?

破産手続は、破産開始決定の前と後とでは大きく区分されます。

破産手続開始決定「前」に発生した金銭債権や業務用の財産は、すべて破産管財人が回収、処分することになります(例えば、走行距離が10万kmオーバーの業務用軽自動車のように、買手がいない、廃棄費用が高くかかるなどの特別の事情がある場合には、破産管財人が処分権を放棄し、破産者である個人事業者が自由に使用できるようになる場合もあります。)。

破産手続開始決定「後」に、破産者が取得する財産については、破産管財人の処分権は及びませんので、事業継続を考えると場合には、身内からの援助で工具などを購入して事業を継続することは可能です。

また、破産管財人との交渉で、事業用資産を買い取ることもありますが、破産管財人としては「時価額」以上での購入を要しますので、時価がいくらかで見解の隔たりが生まれることがありますので、事業用資産を使用しないと事業を再起できないという場合には、複数の業者からの見積書などを収集して管財人への説明資料として、早期の交渉を可能とする準備をしておく必要があります。

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たちばな総合法律事務所
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電話 06-6770-7210
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1-2-1.破産前から保有する事業用資産を使用することは可能か

破産決定「後」に得た資産を使って、事業をおこなうことは問題ありません。

しかし、破産決定「前」の事業用資産については、破産を申し立てた裁判所や破産管財人(候補者)から時価額以上で買い取る必要があります。

1-2-2.破産前から保有する事業用資産の買取は可能か

破産手続開始後に、事業で使用していた資産を買取できるか気になる方がおられると思います。

破産管財人が就いている場合には、適正な金額により破産者に対して売却されることがあります。

しかし、破産管財人は「債権者のために破産財団を増やす」ことが任務のひとつであり、破産者へ売却する以外に「より高い金額での売却」ができるかどうか検討することになるため、必ずしも破産者において買取できるとは言い切れません

多くの場合において、破産管財人は次の方法で「適切な売却価格」でお金に換えるための手続をおこないます。

「破産管財人による資産売却の方法例」
1.入札方式
 業界専門業者、同業者などに買い手を募集します。
2.従前取引先(債権者など)に連絡
 従前の納品先などに連絡し、仕掛品を売却するなど適正な価格での売却をおこないます。

1-2-3.実際問題としての事業再起

もっとも、事業を継続するための物品を破産管財人から買い取ることができたとしても、得意先が取引を継続してくれるか、仕入先の支払条件が現金取引のみとなり資金繰りが厳しくなる可能性がないかなどの問題のほうが大きいことがあります。

当事務所の経験としては、事業の再起ができるかは、個人事業者のそれまでの取引の姿勢や得意先・仕入先との関係性、事業継続に当たって援助してくれる身内がいるか(返済のために借入れをして破産に至った場合には身内からの借用は難しいと思われます。)が大きいように思われます。

2.個人事業者の廃業手続について(まとめ)

以上のように、破産後も個人事業者は「事業を継続できる」場合があり、その事業継続にあたって「事業用の資産を使用することができる場合がある」ことについて解説しました。

しかし、個別の事情に応じて破産管財人などにおいて判断されるため、ご自身で解決までの見立てをたてることは難しいと思います。

当事務所では、個人事業者の方の廃業手続、負債整理について無料相談をおこなっております。

初回相談時に、① 負債整理の見立て、② 個別の事情に応じた解決策のアドバイス、③ そのほか疑問点について対応しております。

まずは、お気軽に当事務所までお問合せください。

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