個人事業者が破産しても「事業継続」をすることは可能か
法人破産
2021 . 05.27
法人破産
2021 . 05.27
たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也
大阪弁護士会所属/登録番号:38530
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169
東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。
目 次
個人事業者(事業をおこなっている個人の方のこと)が破産申立をした場合、事業は継続できるのでしょうか。
結論としては、原則として事業継続することは出来ません。「事業継続」というよりも、破産手続開始決定後に新たに事業を起業・再起するというほうが正確です。
破産管財人の大きな目標のひとつは、破産者に対する債権者への配当の元となる「破産財団(破産者の財産)」を増やすことです。
そのため、破産管財人が、一時的に事業継続をおこなう場合、個人事業者である「破産者の生活のため」に事業を継続するのではなく、「債権者の利益」となるように事業活動をおこないます。
そのため、破産管財人が回収した金額は破産した個人事業者にわたることはありません。
なお、この破産管財人が事業継続する場合とは、破産法36条に規定があります。
破産管財人が事業を継続することによる経済的な損失は「破産財団」の減少に結びつくため、基本的に破産管財人は事業を継続することはありません。
しかし、次のような場合においては、破産財団の「大きな損失」を招く恐れがあるため、事業を継続することもあります。
■ 破産財団への大きな損失
事業継続しないことのリスクの方が大きい場合(多額の違約金が発生するような場合など)
■ 仕掛品、仕掛工事などがある場合
少しの負担、少しのリスクで破産財団を増やすことができるような場合
■ 社会的影響が大きい場合
債権者が多数にのぼる、生活インフラとしての役割であるなど、事業停止により社会が混乱するなど影響が大きいような場合
■ その他
事業を継続することで破産財団を増やすことができるなど、個別具体的な事情により判断されることがあります。
破産手続は、破産開始決定の前と後とでは大きく区分されます。
破産手続開始決定「前」に発生した金銭債権や業務用の財産は、すべて破産管財人が回収、処分することになります(例えば、走行距離が10万kmオーバーの業務用軽自動車のように、買手がいない、廃棄費用が高くかかるなどの特別の事情がある場合には、破産管財人が処分権を放棄し、破産者である個人事業者が自由に使用できるようになる場合もあります。)。
破産手続開始決定「後」に、破産者が取得する財産については、破産管財人の処分権は及びませんので、事業継続を考えると場合には、身内からの援助で工具などを購入して事業を継続することは可能です。
また、破産管財人との交渉で、事業用資産を買い取ることもありますが、破産管財人としては「時価額」以上での購入を要しますので、時価がいくらかで見解の隔たりが生まれることがありますので、事業用資産を使用しないと事業を再起できないという場合には、複数の業者からの見積書などを収集して管財人への説明資料として、早期の交渉を可能とする準備をしておく必要があります。
破産決定「後」に得た資産を使って、事業をおこなうことは問題ありません。
しかし、破産決定「前」の事業用資産については、破産を申し立てた裁判所や破産管財人(候補者)から時価額以上で買い取る必要があります。
破産手続開始後に、事業で使用していた資産を買取できるか気になる方がおられると思います。
破産管財人が就いている場合には、適正な金額により破産者に対して売却されることがあります。
しかし、破産管財人は「債権者のために破産財団を増やす」ことが任務のひとつであり、破産者へ売却する以外に「より高い金額での売却」ができるかどうか検討することになるため、必ずしも破産者において買取できるとは言い切れません。
多くの場合において、破産管財人は次の方法で「適切な売却価格」でお金に換えるための手続をおこないます。
もっとも、事業を継続するための物品を破産管財人から買い取ることができたとしても、得意先が取引を継続してくれるか、仕入先の支払条件が現金取引のみとなり資金繰りが厳しくなる可能性がないかなどの問題のほうが大きいことがあります。
当事務所の経験としては、事業の再起ができるかは、個人事業者のそれまでの取引の姿勢や得意先・仕入先との関係性、事業継続に当たって援助してくれる身内がいるか(返済のために借入れをして破産に至った場合には身内からの借用は難しいと思われます。)が大きいように思われます。
以上のように、破産後も個人事業者は「事業を継続できる」場合があり、その事業継続にあたって「事業用の資産を使用することができる場合がある」ことについて解説しました。
しかし、個別の事情に応じて破産管財人などにおいて判断されるため、ご自身で解決までの見立てをたてることは難しいと思います。
当事務所では、個人事業者の方の廃業手続、負債整理について無料相談をおこなっております。
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