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計画倒産とは?違法性や計画的な倒産との違いを徹底解説


法人破産

2025 . 09.1

計画倒産とは?違法性や計画的な倒産との違いを徹底解説

目次 [ 開閉 ]

計画倒産の概念図と法律の天秤

計画倒産とは、払わなければならない借金や支払い義務を免れるために、意図的に会社を倒産させる行為を指します。

破産法などの正規手続きにのっとった倒産とは異なり、詐欺的手法を用いて債権者に損害を与える恐れがあるような、強い違法性や倫理的に問題視されるケースも「計画倒産」と言われることがあります。

本記事では計画倒産とは何かをはじめ、正当な計画的な倒産との違いや実際に起こり得るリスクについて解説します。

破産手続きにあたり違法な行為をおこなうことで、詐欺罪や詐欺破産罪など重い罪に問われることもあるため、経営者として正しい知識を身につけることが重要です。

当コラムは、詐欺的な計画倒産に対して、債権者として経営者に責任を追及するため方法について記載したものではありません。
また、当事務所では、従業員や債権者の立場からの経営者に対する責任追及のご相談、対応はおこなっておりません。

1.計画倒産の定義と通常の倒産との違い

「計画倒産」の2つの使用方法

① 通常の倒産手続き

閉業の日をあらかじめ決め、法的な手続きに則って倒産手続きをすること。

② 悪質な詐欺行為としての倒産

経営者が自身の利益を確保することを目的に、金融機関、取引先、顧客、従業員を騙して、融資や支払いを受け返済を踏み倒し、倒産すること。
この場合、以下の重いペナルティが科される可能性があります。

詐欺破産罪10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(または両方)

免責不許可代表者個人の借金が免除されず、返済義務が残る

このコラムでは、便宜上、「事前に資金や業務の裏付けがないことを知りながら、銀行から融資を受けたり取引先と取引を行ったりしたうえで、債権者への返済を行わずに倒産してしまう詐欺的な行為」を「計画倒産」。

それに対して、通常通り、破産手続きに向けて準備をし、手続きをおこなう「計画的な倒産」と言葉を使い分けて説明します。

2.計画倒産と計画的な倒産の違い

同じように聞こえる言葉でも、計画倒産と計画的な倒産には大きな法的・倫理的違いがあります。

計画倒産は、債権者が本来回収すべき金額を意図的に踏み倒す目的で会社を潰す行為です。
金融機関から多額の融資を受けたり、取引先に大量の商品を仕入れさせたりしておきながら責任を回避する性質があり、被害額が膨大になることも珍しくありません。
破産手続き後に破産管財人から詐欺行為として指摘され、後述する罪に問われる可能性があります。

一方、計画的な倒産は、債権者や社員に責任をできる限り果たしたうえで、将来の再建に向けてあらかじめ倒産手続きを準備する方法です。

具体的には、倒産のタイミングを慎重に選び、資金繰りや従業員に対する解雇予告など可能な限り準備をして、適切に対応をおこないます。
適切に破産手続き進めることで、経営者がスムーズに早期に生活を再建することが期待できます。

3.計画倒産が違法になる3つのケース

計画倒産は状況によって違法性が高まるケースがあります。
代表的な3つのパターンを解説します。

計画倒産は、単に経営が立ち行かなくなった結果の倒産とは異なり、初めから債権者を欺く意図がある点が特徴です。
違法な計画倒産が発覚すれば、刑事責任を含めて厳しく追及される可能性が高いでしょう。

3-1.融資を受けたケース

銀行や消費者金融といった金融機関から融資を受ける際、返済する意思や能力がないのに資計画を偽って資金を調達し、そのまま倒産してしまう行為が挙げられます。

これによって金融機関は大きな損失を被り、詐欺として刑事罰の対象となる可能性があります。

特に事業計画やキャッシュフローの見通しに虚偽があった場合は、詐欺行為と判断されるリスクが非常に高まります。

問われる可能性のある罪

【詐欺罪(刑法246条)】

▶ 10年以下の拘禁刑

当初から返済の意思や能力がないにもかかわらず、偽の事業計画などを提示して金融機関を騙し、金銭を交付させた行為は詐欺罪に該当する可能性があります。

3-2.取引先から大量の商品を仕入れたケース

支払いが不可能になることを知りつつ、取引先から大量の商品や資材を仕入れ、その代金を踏み倒す手口も計画倒産の典型例です。

短期で資金調調達が難しい状況にありながら、意図的に仕入れ量を増やし利益を上げて、それを経営者が持って逃げるケースも考えられます。

取引先としては売掛金が回収できず、莫大な損害につながる恐れがあるため、早期の信用調査が重要です。

問われる可能性のある罪

【詐欺罪(刑法246条)】

▶ 10年以下の拘禁刑

融資のケースと同様に、支払い能力がないことを知りながら、それを隠して商品を仕入れる行為は、取引先をあざむいて財物(商品)を交付させたとして詐欺罪に問われる可能性があります。

3-3.会社の財産を格安で処分するケース

債権者への配当の原資となる会社の財産(破産財団)を、意図的に減少させる行為も不正と見なされます。

具体的には、債権者を害する目的で、会社の不動産や設備などを不利益な条件で処分(廉価売却など)したり、財産そのものを隠匿・名義変更したりする行為が典型例です。

問われる可能性のある罪

【詐欺破産罪(破産法265条)】

▶ 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方

適正評価に基づかない取引は、調査の過程で不正とされ、詐欺破産罪などに問われるリスクがあります。

4.計画倒産をすると問われる罪の種類

計画倒産が刑事事件に発展する場合、特に問題となるのが「詐欺罪(刑法246条)」と「詐欺破産罪(破産法265条)」の成立です。

これらは法律上の構成要件が異なり、いずれも経営者個人に極めて重い刑事責任が問われる可能性があります。

詐欺罪が成立するのは、加害者の「欺罔(ぎもう)行為;だますこと」によって、被害者が錯誤(思い違い)に陥り、その結果として財産を交付した場合です。

典型的なのは、当初から返済する意思も能力もないにもかかわらず、虚偽の事業計画を提示して金融機関から融資を引き出したり、支払い不能状態を隠して取引先から商品を大量に仕入れたりするケースです。
これは、相手方を欺いて財産的利益を得る行為そのものを罰するものであり、10年以下の拘禁刑という重い刑罰が科されます。

一方、詐欺破産罪は、破産手続きにおける債権者の利益を守るための犯罪です。

破産手続の開始前後を問わず、債権者を害する目的で、破産財団に属すべき財産を隠匿(いんとく;隠す)・損壊したり、不利益な条件で処分(廉価売却など)したりする行為が処罰の対象となります。

たとえば、会社の資産隠しや不当な名義変更、親族に相場よりも安い価格で不当に会社の財産を売り渡すなどの行為がこれにあたり、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(またはその両方)が定められています。

単なる経営の失敗ではなく、意図的に債権者を欺き、害する行為は、このように厳しい刑事責任の追及を免れないことを深く認識しておく必要があります。

5.計画倒産の具体例・実例

実際に起こった事例を通して、どのような手口が使われているかを紹介します。

📖 事例:商品を騙し取る詐欺

詐欺罪(刑法246条):10年以下の拘禁刑

融資のケースと同様に、支払い能力がないことを知りながら、それを隠して商品を仕入れる行為は、取引先をあざむいて財物(商品)を交付させたとして詐欺罪に問われる可能性があります。

📖 事例:不正な取引による詐欺破産

詐欺破産罪(破産法265条): 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方

適正評価に基づかない取引は、調査の過程で不正とされ、詐欺破産罪などに問われるリスクがあります。

こうした例は詐欺罪や詐欺破産罪が適用される可能性が高く、刑事罰に問われることがあります。

6.計画的な倒産を行う際のメリットと注意点

適切な手続きに則った倒産であれば、再起を見据えた経営再建も可能です。
その利点と注意すべき点を解説します。

計画的に倒産手続きを進める最大のメリットは、破産手続きをスムーズに進められることで早期に再起の準備を行える点にあります。

あらかじめ法律手続きの専門家である弁護士にと相談することで、債権者との交渉や資金管理による破産手続費用の確保をスムーズに行いやすくなります。

一方で、説明不十分な状態で倒産すると、多くの関係者に不信感を与え、破産手続きで裁判所に意見提出がなされ、その後の再出発が難しくなる可能性があります。

また、計画的な倒産では、適切に債権者への説明をおこなうことで社会的信用を一定程度保ちやすいです。
ただし、透明性を欠いた取引や財産隠しが見受けられると、計画倒産とみなされ、違法行為として処罰を受ける場合もあるため注意が必要です。

6-1.Xデーの設定と倒産までの流れ

弁護士への相談から破産手続きまでの大きな流れは次のとおりです。

弁護士への相談・依頼後の流れ

① 弁護士に相談・依頼する

✅事業の停止日(Xデー)を決める

・債権者、従業員への通知をいつにするか

✅財産の換価処分、賃貸テナントの退去などの対応

✅必要資料の確認、収集

✅申立書など裁判書類の作成

② 破産申立

破産決定があり、裁判所から選任された破産管財人のもと手続きが進められる

③ 債権者集会・債権者への配当など

④ 終結決定

計画的に倒産を行う場合、まずは倒産のタイミングを決定することが重要です。
一般的にはキャッシュフローが底をつく前に手続きをスタートし、必要資金の調達や従業員への告知などを進めるのが望ましいとされています。

弁護士のサポートを受けながらXデーを設定し、書類の準備や各種手続きを段取り良く行うことで、混乱を最小限に抑えることができます。

6-2.従業員・取引先への対応

倒産に至る見通しが立った段階で、従業員に解雇予告を行ないます。

会社が倒産してしまい、給料や退職金が支払われないまま退職せざるを得なくなった場合に、労働者の生活を守るためのセーフティネットとして「未払賃金の立替払制度」があります。

この制度は、国(独立行政法人 労働者健康安全機構)が、倒産した事業主に代わって、未払賃金の一部を労働者に直接支払うものです。

破産申立後に選任された破産管財人などから、未払賃金の額などを証明する「証明書」の交付を受け、証明書と一体になった「立替払請求書」に必要事項を記入し、労働者健康安全機構に提出(郵送)します。

これにより賃金や退職金の一部の支払を受けることができます。

なお、法人破産手続きでは、法律に従って会社の資産を換価し、それを債権者に配分する流れとなります。

従業員の給与や退職金は一般的に優先債権として扱われるため、他の債権者に優先して配当を受けることができます。

ただ、従業員や取引先に「破産すること」を伝えるタイミングには注意が必要です。

例えば、商品の納品が続いている取引先に、受任通知の発送前に「破産予定」だと伝えてしまうと、商品を確保しようとする「取付け騒ぎ」が起きるなど、現場が大きく混乱する恐れがあります。
債権者や従業員にいつ、どのように伝えるべきかは、自己判断せずに必ず弁護士と相談し、適切に対応しましょう。

6-3.再起に向けての手続き

会社経営者が、ひとりで法人破産手続きを進めていくことは可能です。
但し、実際には弁護士に依頼されるケースがほとんどです。
それは次のメリットが大きいためです。

弁護士に依頼する6つのメリット

✅ ① 債権者対応の窓口となり、精神的負担を劇的に軽減できる

✅ ② 複雑な申立書類を正確かつ迅速に作成できる

✅ ③ 破産管財人との面談や調査に同席し、円滑な進行をサポートする

✅ ④ 経営者個人の資産を守るための適切なアドバイスが受けられる

✅ ⑤ 不適切な財産処分による「詐欺破産罪」のリスクを回避できる

✅ ⑥ 裁判所に納める予納金を低額に抑えられる可能性がある

弁護士が代理人として申立てを行うことで、「少額管財」という簡易的な手続きが利用でき、予納金を大幅に低額に抑えられる運用が多くの裁判所で行われています。

7.倒産リスクを判断するための財務諸表の見方

倒産の危険性を早期に察知するには、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を定期的にチェックし、債務超過や資金繰りの悪化を素早く把握することが不可欠です。

特に、売上原価が上昇して利益を圧迫していたり、負債総額が資産総額を大きく上回る「債務超過」に陥っていたりする場合は、極めて危険な兆候と言えます。

さらに重要なのが、通帳や月々の資金繰り表などで、で「手元に事業を動かす現金が残っているか」を確認することです。
会計上は利益が出ていても現金が枯渇し、支払不能に陥る「黒字倒産」は決して珍しくありません。

そして、万が一事業の継続が困難だと判断した場合、この手元のキャッシュが法的な再出発をスムーズに進めるための生命線となります。

法人破産を申し立てるには、裁判所に「予納金」と呼ばれる費用を会社の現金から納付する必要があります。

資金が完全にショートしてからでは、この予納金が捻出できず、法的に整理された破産手続きすら開始できないという最悪の事態に陥りかねません。

財務諸表から危険信号を読み取った早い段階で弁護士にご相談いただければ、手元のキャッシュから計画的に予納金を確保し、債権者や従業員への影響を最小限に抑えながら、円滑な手続きへの道筋を立てることが可能になります。

8.まとめ

計画倒産は、債権者を欺く目的で会社を潰す違法行為であり、詐欺罪や詐欺破産罪に問われるリスクが高い行為です。

一方で、しっかり手続きを踏んだ計画的な倒産であれば、利害関係者への影響を最小限に抑えつつ、再起の道を開ける可能性があります。

倒産の必要性を感じたら、まずは早期に弁護士に相談し、手続きを依頼することで経済的にも早期に再生をはかることができます。

たちばな総合法律事務所では、法人・個人の借金問題に関する無料相談を受け付けています。
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