自己破産で銀行口座はどうなる?凍結・提出義務・新規開設の疑問を解消
個人再生
2025 . 10.15
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2025 . 10.15
目 次
自己破産を検討する際、
「給料が振り込まれる銀行口座は凍結されるの?」
「預金は全て没収されてしまうのか?」
といったお金に関する疑問は、生活に直結する最も切実な悩みの一つです。
預金が凍結される可能性や、裁判所に提出が必要な口座の範囲、新たに口座を開設できるかどうかなど、疑問は尽きません。
しかし、あらかじめ正確な情報を知り、適切な準備をしておけば、想定外のトラブルを防ぎ、ご自身の生活を守りながら手続きを進めることが可能です。
本記事では、自己破産と銀行口座に関わる手続きや注意点を、法律の専門家が徹底解説します。
まずは、自己破産の手続きで銀行口座がどのように扱われるのか、その基本を把握しておきましょう。
自己破産では、裁判所が申立人(債務者)の財産状況を正確に把握し、免責(借金の支払義務を免除すること)を許可すべきかを判断します。
そのため、あなたがどのような銀行口座を持ち、どれだけの残高があるかを詳しく調査されることになります。
この手続きにおける銀行口座のポイントは、以下の3つに集約されます。
原則として、すべての銀行口座の情報を裁判所に提出する必要があります。一般的には、直近2年分の取引履歴について申立人の通帳の写し(コピー)を提出します。
借入先である銀行において、特定の条件下(主に銀行からの借入がある場合)で、口座が一時的に凍結されます。
手続き後でも、原則として新しい口座の開設は可能です。
特に借金をしている銀行の口座は、その銀行があなたの預金と借入金を「相殺(そうさい)」する(互いの債権債務を帳消しにすること)可能性があるため、最も注意が必要です。
一方で、すべての銀行口座が自動的に凍結されるわけではありません。
借金のある金融機関の口座が凍結対象となることがほとんどで、借金のない他行の口座は通常どおり利用できる場合が多いです。
裁判所は、あなたが提出した通帳の写し(原則として過去1〜2年分)や取引履歴を細かく確認することで、以下の3つの重大な不正行為がなかったかをチェックします。
⚠️財産隠し
財産を隠して処分を免れようとする行為。
⚠️偏頗弁済(へんぱべんさい)
特定の債権者だけに優先的に返済する行為。
⚠️浪費、ギャンブルの確認
著しい浪費やギャンブルが原因で多額の借金を作った場合。
これらの行為は、債権者全体の利益を害する重大な不正とみなされます。
また、免責不許可事由といって、借金の免除が認められない理由の一つとなっています。
過去に使用していた口座であっても、解約済みでない限り申告が必要です。
裁判所や破産管財人(裁判所から選任され、財産調査や管理を行う弁護士)が「本当に他に資産がないのか」「不自然なお金の流れはないか」を徹底的に調査するため、たとえ残高がゼロでも、口座の存在自体が重要な情報となります。
「もう何年も使っていないから大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。
長期間使用していない休眠口座であっても、裁判所が資産を正確に把握するためには例外なく提出対象になります。
たとえ取引実績がほとんどなくても、その口座があなた名義で存在する以上、財産の一部とみなされます。
万が一、提出を怠り、後に裁判所や破産管財人の調査で口座の存在が発覚すると、「わざと財産を隠したのではないか」という強い疑いを招きます。
これは、破産法第252条1項1号に定められた免責不許可事由(説明義務違反)に該当する可能性があり、最悪の場合、免責が認められない(=借金がゼロにならない)リスクがあるため注意が必要です。
自己破産の手続き中、すべての口座が使えなくなるわけではありません。
しかし、あなたがお金を借りている銀行の口座は、高い確率で凍結されます。
銀行口座が凍結される最大の理由は、銀行が持つ「相殺権」の行使です。
あなたが弁護士に自己破産を依頼すると、弁護士は各債権者(お金を貸している会社や銀行)に対して、「受任通知」という手紙を送付します。
この通知を受け取った銀行は、あなたへの取り立てを停止すると同時に、銀行側の債権(あなたへの貸付金)とあなたの債権(あなた名義の預金)を相殺するために、口座を一時的に凍結します。
凍結されると、預金の引き出し、振り込み、口座振替などが一切できなくなります。
凍結の期間は金融機関の対応によりますが、通常1〜3ヶ月程度で、相殺処理が終われば解除されるのが一般的です。
また、借入れに保証会社がついている場合、保証会社があなたに代わって銀行に返済(これを「代位弁済」といいます)をおこないます。
代位弁済が完了すると、銀行のあなたに対する債権がなくなるため、口座の凍結は解除されます。(ただし、その後は保証会社があなたに対して返済を求めることになります)
弁護士への依頼直前に、凍結を恐れて預金を全額引き出す行為は、財産隠しとみなされるリスクがあります。
生活費として必要な分を引き出すことは問題ありませんが、その場合でも必ず弁護士に相談し、指示に従ってください。
自己判断での多額の出金は絶対に避けましょう。
銀行口座が凍結されると次のリスクがあります。
銀行のカードローンや住宅ローン、自動車ローンなどを利用している場合、当該銀行口座はほぼ確実に凍結されると考えておくべきです。
銀行は、預金情報と借入情報をシステムで一元管理しているため、受任通知が届けば機械的に凍結処理が行われます。
特に注意すべきなのは、その口座を給与振込先に指定しているケースです。
凍結されると、振り込まれた給料を一切引き出せなくなってしまいます。
これを避けるためには、弁護士に依頼する前に、以下の対応が必須です。
この準備をしておくだけで、自己破産手続き中の生活費を確実に確保できます。
パニックにならないように、凍結された口座がいつ、どのようして使えるようになるのか、手続き中に何ができて何ができないのかを事前に把握しておきましょう。
弁護士に依頼する前に、以下の準備を済ませておきましょう。
借金のある銀行を指定している場合は、必ず変更する。
口座振替にしている場合は、借金のない銀行の口座からの振替に変更するか、コンビニ払いなどに切り替える。
家族の携帯電話などの支払いを口座引落しにしている場合、振替口座を変更するか振込などによる支払いなどを検討しましょう。
凍結されても問題ないように、借金のない銀行の口座に当面の生活費(1〜2ヶ月分が目安)を移動させておく。
※ただし、多額の資金移動は財産隠しと疑われる可能性があるため、必ず事前に弁護士に相談してください。
凍結中の口座の機能について、表で分かりやすく整理します。
凍結解除は、多くの場合、銀行側が相殺手続きを終えた後に自動的に行われ、特別な手続きは不要です。
しかし、解除されたからといって、その口座を以前と同じように自由に使って良いわけではありません。
特に、破産手続きが「管財事件」となった場合、あなたの財産(預金口座も含む)の管理処分権は破産管財人に移ります。
たとえ凍結が解除されても、破産管財人の許可なく預金を引き出すことができないこともあります。
凍結解除後の口座の扱いについては、必ず弁護士や破産管財人に確認し、その指示に従うようにしましょう。
「破産したら、もう二度と銀行口座は作れないのでは?」という不安を抱く方もいますが、ご安心ください。
「破産したら、もう二度と銀行口座は作れないのでは?」という不安を抱く方もいますが、ご安心ください。
自己破産の手続きが完了した後でも、新たに銀行口座を開設することは法律上、何ら禁止されていません。
ただし、クレジットカード機能やカードローン機能が付帯したキャッシュカードの申し込みは、審査で否決される可能性が極めて高くなります。
具体的には、自己破産をすると個人信用情報機関(CIC、JICCなど)に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリストの状態)。
金融機関によっては独自の審査基準を設けていて、審査の際にこの情報を銀行が参照する可能性があります。
そのため、こうした機能がついているキャッシュカードの申し込みに通る可能性は低いと言えます。
しかし、クレジットカード・ローン機能がついていない通常の普通預金口座の開設であれば、信用情報の影響はほとんどなく、開設を認められるケースがほとんどです。
申し込みの際は、ローン機能などが付帯していない、最もシンプルな普通預金口座を選びましょう。
自己破産は個人の手続きですが、同居しているご家族の口座や、クレジットカードの支払いに使っている口座にどのような影響が及ぶのか、心配になる方も多いでしょう。
原則として、あなた以外の家族名義の口座が凍結されたり、財産が処分されたりすることはありません。
ただし、裁判所はあなたの財産状況を調査する過程で、家計全体の状況を確認します。
その際に、あなたの財産が家族名義の口座に不当に移されていないか(財産隠しが疑われる行為)、また家計収支表との整合をチェックするため、裁判所から同居家族の通帳の写しなどを提出するよう求められることがあります。
これは主に財産隠しがないかを確認するための調査であり、家族に直接的な不利益(借金の請求など)が及ぶことはありません。
しかし、家族に手続きの件を秘密にしていると、裁判所からの要請に対応できず、手続きが滞る原因となります。
事前に家族に事情を誠実に説明し、協力を得ておくことが非常に重要です。
「ネット銀行は通帳がないからバレないのでは?」
「PayPayの残高くらいなら申告しなくても大丈夫だろう」といった考えは、絶対に禁物です。
近年普及しているネット銀行やスマホ決済(PayPay、楽天ペイなど)の残高も、法律上は銀行預金と同じあなたの「資産」です。
したがって、破産手続きにおいてすべて裁判所に申告する義務があります。
裁判所や破産管財人は、専門的な方法であなたの資産を調査します。
例えば、提出された他の口座の取引履歴から、ネット銀行への送金記録やスマホ決済へのチャージ履歴が見つかれば、あなたがそれらの口座を持っていることは簡単に発覚します。
これを隠していたと判断されれば、財産隠しとして免責不許可のリスクに直結します。
また、ネット銀行やスマホ決済は紙の通帳がないため、取引履歴の提出方法で戸惑うことがあります。
多くのサービスでは、ウェブサイトやアプリから過去の取引明細をPDF形式などでダウンロードできます。
通帳の写しの代わりとして、印刷し準備しておくようにしましょう。
PayPayなどのスマホ決済アプリ内の残高(チャージ残高)も、実質的には預金と同じ換金可能な資産です。
たとえ数千円、数百円といった少額であっても、正直に申告しなければなりません。
裁判所や破産管財人は、金額の大小ではなく、「債務者が正直に全ての財産を開示しているか」という姿勢を非常に重視します。
少額だからといって申告を怠ると、手続き全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
自己破産手続きにおける銀行口座の取り扱いは、一見複雑に感じられるかもしれません。
しかし、正しい知識を持って事前に準備すれば、生活への影響を最小限に抑え、手続きをスムーズに進めることが可能です。
借金問題は、一人で抱え込まずに専門家に相談することで、必ず解決の糸口が見つかります。
あなたの再出発をサポートするために、私たちがいます。
たちばな綜合法律事務所では、初回相談料は無料です。
まずは、電話、メールフォーム、LINEなどでお気軽にご自身の状況をお聞かせください。
たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也
大阪弁護士会所属/登録番号:38530
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169
東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。
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