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法人破産で必要な予納金とは?手続費用の全体像を理解しよう


法人破産

2026 . 02.16


目 次

法人破産で必要な予納金とは?手続費用の全体像を理解しよう

法人が破産手続きを進めるにあたっては、裁判所に納付する「予納金(よのうきん)」をはじめとした様々な費用が必要です。

特に予納金は、破産手続を円滑に進めるうえで欠かせない資金です。
その仕組みや金額の相場(20万円〜)を知ることで、より確実な準備が可能となります。

本記事では、法人破産による予納金の具体的な役割、少額管財・通常管財での金額相場、分割払いの可否について解説します

1. 法人破産の基礎知識

法人破産とは、会社などの法人が抱える債務を整理・清算するために、裁判所に申立てを行い、法法的に会社を清算し、法人格を消滅させることで、債務を処理する手続きです。

裁判所から選任された破産管財人が、管財人による調査や財産の換価処分、債権者への公平な弁済(配当)を行い、手続き終了により最終的に法人格は消滅します。

破産手続を開始するには、破産管財人の費用を含めた「裁判所への予納金」の納付が必要になります。

1-1. 法人破産の流れと手続き概要

法人破産の手続は、まず債務者である会社自身(自己破産)や債権者から裁判所に破産申立てを行うことで始まります。

受任・準備
弁護士に依頼し、資料収集と申立書の作成を行います。

申立て
管轄の裁判所へ書類を提出します。この時点で手数料(収入印紙)などを納めます。

即日面接(東京地裁など)
弁護士と裁判官が面接し、管財事件の種類(少額管財か通常管財か)や予納金額が決定されます。

破産手続開始決定
予納金を全額納付した後、裁判所が開始を決定します。

破産管財人の選任
選ばれた弁護士(管財人)が企業の財産を調査し、換価(現金化)作業を進めていきます。

 

換価後は、回収した資金から債権者に公平に配当します。
最終的に手続が終了すると法人は清算され、会社の活動は正式に終わります。

1-2. 破産手続きにかかる主な費用構造

法人破産の費用構造は大きく分けて、以下の3つで構成されています。

費用項目
内容と特徴
予納金
裁判所へ納める費用。
破産管財人の報酬や手続の運営に充当されるため、法人破産には必須となる支出です(最低20万円~)。引継予納金とも呼ばれます。
弁護士費用
申立代理人である弁護士へ支払う費用。
着手金や実費などが含まれます(事務所によっては報酬金が発生する場合もあります)。
実費
官報公告費、収入印紙、郵便切手代など。

これらの費用を見落としてしまうと、資金不足で手続きがストップする恐れがあります。

2. 予納金の役割と使い道

法人破産における予納金は、破産管財人報酬に充てられます(破産法第22条)。

2-1. 破産管財人への報酬・手続費用に充当される仕組み

管財人は、裁判所から選任された弁護士であり、破産会社の財産調査から換価、配当に至るまで様々な業務を担当します。
その報酬や事務経費をまかなうための原資として、申立人があらかじめ裁判所に納めるお金が予納金です

予納金を納付しなければ手続そのものが進まず、申立却下のリスクを招くこともあるため、資金計画を立てて確実に納付できるようにする必要があります。

2-2.法人破産は法テラス利用ができない

個人が破産申立てをする際には、資力がない場合に「法テラス(日本司法支援センター)」が費用を立て替えてくれる制度(民事法律扶助)があります。
また、個人破産における管財費用についても立替を受けられるケースがあります。

しかし、法人破産では、この仮支弁や法テラスの立替制度は原則として利用できません。

予納金の準備ができないまま破産を申立てようとしても、制度上の救済措置はほとんど期待できないのが現状です。
そのため、手元資金に余裕があるうちに、早めに弁護士に相談し手続きを検討することが大切です(具体的な資金確保の方法は後述します)。

3. 少額管財と通常管財による予納金の金額相場

法人破産の管財方式によって、納めるべき予納金の金額に大きな違いが生じます。
大きく分けて「通常管財」と「少額管財」の2つのパターンがあります。

手続きの種類
特徴
通常管財
(特定管財)
原則的な手続き。
負債総額が大きく、資産処分が複雑な場合。
予納金は高額(70万円程度~)。
少額管財
弁護士が代理人につき、一定の条件を満たした場合に適用される簡易な手続き。
予納金は低額(20万円程度~)。

 

通常管財事件では、負債総額や財産内容、資産処分の有無などを考慮して、予納金の金額が決定されます。
法人の負債が大きければ、その分だけ管財人の調査や手続が複雑になり、予納金も高額になりやすいです。

一方、少額管財事件として扱われるケースは、負債規模が比較的小さく、弁護士が代理人として関与するなど条件がそろった場合に限られます。
少額管財では管財人の業務量が緩和されるため、予納金が抑えられるメリットがあります。

3-1. 東京地裁を例とした実際の予納金額

東京地方裁判所(民事第20部)の運用基準を例に、具体的な金額を見てみましょう。

他の大規模庁(大阪、名古屋など)でも、これを基準とした運用がなされることが多いですが、詳細は管轄の裁判所によって異なります。

【少額管財の場合】

予納金目安: 20万円

多くの中小企業の破産事件で適用を目指すのがこの区分です。
負債額に関わらず、手続きが迅速に進む見込みがある場合に認められます。

【通常管財(特定管財)の場合】

負債総額に応じて、以下の表のように予納金の基準額(引継予納金)が定められています。

負債総額
予納金基準額(法人)
5,000万円未満
70万円
5,000万円以上 ~ 1億円未満
100万円
1億円以上 ~ 5億円未満
200万円
5億円以上 ~ 10億円未満
300万円
10億円以上 ~ 50億円未満
400万円
50億円以上 ~ 100億円未満
500万円
100億円以上
700万円~

※出典:東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧(令和5年4月1日現在)」
https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/min20/remeral/03hasann_mousitatehiyou_R5.4.1.pdf

一般的に負債総額に比例して予納金は増額されます。
特に破産管財人において証拠収集や資産換価に多くの手間や時間を要する場合は、手続費用も増大しやすい点に注意が必要です。
正確な金額は裁判所が最終判断します。
まずは地元の弁護士に相談し、自社のケースにおける見込み額を確認してください。

3-2. 営業停止中か営業中かによる金額の違い

破産申立て時点で事業活動を完全に停止している場合は、管財人が調査すべき対象も少なくなることが多く、少額管財(最低20万円)が認められやすくなる傾向があります。
その結果、予納金の負担も大幅に軽減されます。

一方、営業中で取引や在庫、賃貸物件の明け渡し、従業員の給与などの課題が残っている場合には、管財人による確認事項が増加し、通常管財事件として扱われる可能性が高いです。
これにより、予納金が高めに設定されることも少なくありません。

申立前に営業を停止すべきかどうかは、破産手続の負担だけでなく取引先や従業員への影響も考える必要があります。
企業の実態にあった選択をするためにも、弁護士などの専門家に相談することが大切です。

4. 予納金以外に必要な費用

法人破産の費用は予納金だけではなく、弁護士への支払い、官報公告費なども同時に発生します。
これらを合計した金額(総額)を見込んで準備しておく必要があります。

4-1. 弁護士費用(着手金・報酬金・実費)

破産手続きを弁護士に依頼する場合、弁護士費用が発生します。

費用項目
内容
着手金
依頼時に支払う費用。法人の規模によりますが、50万円~100万円程度が相場となることが多いです。
また、代表者個人も破産申立する場合、これとは別に30万円~50万円程度の弁護士費用がかかります。
報酬金
手続き終了時に支払う費用。
多くの事務所では報酬金は0円で、着手金のみの場合がほとんどです。

これに加えて、弁護士が出張や調査を行う場合の日当や実費も必要です。
着手金や報酬金の額は、事案の複雑さや負債総額の規模によっては100万円以上になるケースもあります。

費用の総額を抑えるためには、破産手続に詳しい弁護士を早い段階で見つけ、見積もりをしっかりと取りながら準備を進めることが重要です。

4-2. 官報公告費・申立手数料・郵便切手代などの実費

予納金とは別に、裁判所に納める「実費」も発生します。

申立手数料
法人1,000円 / 個人1,500円(収入印紙)
官報公告費
1万円~2万円程度(掲載費用)
郵便切手代
数千円程度~(債権者への通知用)

金額自体は予納金や弁護士費用に比べれば少額ですが、資金が枯渇している状況では無視できない出費です。

弁護士事務所によっては、こうした実費を含めた概算の費用をあらかじめ提示してもらえる場合もあります。
トータルコストを正しく把握し、費用面の不安を最小限にする工夫が重要です。

5. 予納金が支払えない場合の対処法

「予納金が用意できない」という事態は、破産手続きにおいて致命的です。
予納金が払えなければ、破産手続そのものが開始されないためです。

5-1. 裁判所から申立てを却下されるリスクに注意

予納金を期限までに納付できない場合、裁判所は破産申立て自体を却下する権限を持っています。

一度却下されると改めて手続きをやり直す必要があり、破産処理が大幅に遅れるだけでなく、負債がさらに拡大する可能性も否めません。
その間、未払給与がある従業員の対応、債権者・取引先からの取り立てや督促、訴訟リスクにさらされ続けることになります。

このようなリスクを避けるためには、手続の初期段階から予納金を含む費用総額の概算を把握し、納付準備を行う必要があります。

6. 予納金を準備する具体的な方法
経営を続ける中で蓄えた資金に余裕がある場合は問題ありません。
しかし、手元資金が全く無い状況では様々な手段を組み合わせて予納金(および弁護士費用)を用意する必要があります。

6-1. 会社資産を処分して現金化する

オフィス什器、在庫、社用車、不要となった機械設備などを売却することは、予納金を確保するための一般的な方法です。
資産の処分時に売却価格を最大化するためには、急ぎ過ぎず適正価格で買い手を探します。

【重要】

ただし、特定の債権者にだけ安く売ったり、代金を隠したりすると「詐害行為」や「資産隠し」とみなされ、破産犯罪(詐欺破産罪など)に問われるリスクがあります。
資産の売却は、複数業者からの見積もりを取得し、最高値の業者に売却するなど適正価格で行ってください。
破産管財人から売却時の資料提出を求められることがあります。
こうした買取の見積書、売買契約書などは必ず手元に残しておくようにしてください。

6-2. 売掛金の回収と代表者個人資産の活用

未回収の売掛金を回収の上、破産申立費用に充てるのも一つです。

また、代表者個人が所有している資産(預貯金、解約返戻金のある保険など)から資金を法人に貸し付け、予納金を調達する方法もあります。

なお、資金を調達できたとしても、そのお金で特定の取引先だけに買掛金を支払う行為は避けてください。
特定の債権者のみを優遇する『偏頗弁済(へんぱべんさい)』とみなされ、破産手続上、問題となります。
申立後に裁判所から指摘を受けないよう、弁護士と相談しながら慎重に行うことが望ましいです。

6-3. 弁護士への依頼による少額管財適用の可能性

弁護士を通じて破産申立てを行い、財産状況が整理されていることを示すことで、少額管財(予納金20万円~)が適用される可能性が高まります。

通常管財(70万円~)と比較して数十万円以上のコストカットになるため、弁護士費用を払ってでも依頼する経済的メリットは非常に大きいです。

ただし、少額管財が認められるかどうかは、裁判所が負債総額や手続の複雑さなどを総合的に判断したうえで決定します。
必ずしも全ての法人破産案件で少額管財を認めてもらえるわけではないため、少額管財を目指す際には弁護士と十分に協議しておきましょう。

7. 分割払い・分納の可否と注意点

7-1. 少額管財を利用して予納金を抑える仕組み

結論から言うと、裁判所へ納める予納金の分割払いは、原則として認められません。
速やかに全額を一括納付することが開始決定の条件となります。

しかし、弁護士費用については、事務所によっては分割払いに対応している場合があります。

また、弁護士に依頼して受任通知を送ることで、債権者への支払いを一時的にストップ(返済停止)できます。
この返済に回していた資金を積み立てて、予納金や弁護士費用の原資にする方法が実務上よく取られます。

さらに、前述の通り少額管財が適用されれば予納金自体が20万円程度まで下がるため、分割ができなくても支払いが現実的になるケースが多いです。

なお、司法書士は依頼費用が安いものの、書類作成の代行のみです。
司法書士に依頼した場合、本人申し立てとなるため少額管財の利用はできません。

7-2. 分割払いが認められないケースへの対応

予納金の分割はできませんので、前章で解説した『資産の売却』や『代表者からの資金調達』を行い、一括納付できる資金を確保する必要があります。
時間が経つほど状況は悪化するため、一刻も早い専門家への相談が解決への近道です。

なお、親族からの申立費用の借入れは注意が必要です。
親族からの借入れについては、破産債権となります。
基本的に親族だけに返済することは、偏頗弁済に当たります。
そのため、親族から法人破産の費用を工面する場合には、借入れではなく「支援」として受ける必要があります。

8. 法人破産手続きを弁護士に依頼するメリット

法人破産は専門的かつ複雑な手続きが伴うため、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
破産申立書の作成や裁判所への対応などを自力(本人申立)で進めようとすると、誤りや不備が発生しやすく、予納金も高額な「通常管財」になります。

8-1. スムーズな手続進行と精神的負担の軽減

弁護士は申立てに必要な書類を準備し、手続きの代行から管財人や裁判所との面談への同席もしてくれます。
これにより、経営者自身は破産準備に伴う煩雑な手続きを大きく簡略化できます。

また、弁護士が「受任通知」を送付した時点で、債権者からの直接の督促や取り立てが止まります。
すべての連絡窓口が弁護士になるため、電話対応や返済交渉のプレッシャーから解放され、精神的なストレスを大幅に軽減できます。

8-2. 管財事件・少額管財の判断をプロに任せられる

法人破産の管財方式は裁判所や事案の特性によって決定されるため、適切な申立方法を見極めるには専門知識が必要です。

弁護士が「少額管財の適用が見込める」かなど状況を分析し、対応方針を判断してくれます。

破産申立前の財産の処分、売掛金の回収、賃貸物件の明け渡しなどのサポートも受けることができます。
これにより、意図せず財産隠しや偏頗弁済などの不正行為を行ってしまうリスクを回避しながら、資金を確保することが可能になります。

結果として手続期間が短縮され、予納金などの費用負担を抑えることにもつながるため、弁護士を活用する意義は非常に大きいでしょう。

9. 法人破産時に気を付けたい注意点

破産準備の段階での判断ミスは、後々大きなトラブルにつながる可能性があります。
特に「お金がないから」といって安易な行動をとると、取り返しのつかない事態になりかねません。

9-1. 早めの相談でリスクと費用を最小限に

資金が完全にゼロになってからでは、予納金も弁護士費用も払えず、破産すらできない「放置」状態になる恐れがあります。

ある程度の手元資金があるうちに相談することで、少額管財への誘導や適正な資産処分が可能になります。

対外的な取引を続ける限り、債権者に与える影響も考慮しなくてはなりません。
破産申立てのタイミングを誤ると、法的な問題を引き起こす恐れもあります。

9-2. 経営者の個人破産との関係性にも留意する

法人破産とは別に、代表者個人が会社の借入金の連帯保証人になっている場合は、代表者個人の自己破産も同時に検討する必要があります。
会社の債務が消えても、連帯保証人である代表者の返済義務は残るためです。
このような状況では、法人破産と個人破産を同時に申立てるのが一般的です。

なお、代表者個人について、必ずしも自己破産である必要はありません。
保証債務を含めて大幅に圧縮することで返済が可能であれば、個人再生手続きを選択することも可能です。
ただし、個人再生を利用するには『住宅ローンを除く負債総額が5,000万円以下であること』などの条件があります。
法人の負債額(保証債務)が大きい場合は利用できないこともあるため、弁護士による慎重な判断が必要です。
住宅ローン返済中の持ち家がある場合、個人再生手続きを取ることで売却処分せずに済みます。

10. まとめ

法人破産における予納金の正確な把握と、費用確保のための方法を押さえておくことが大切です。

法人破産の予納金に関するポイント
1. 予納金は必須: 破産管財人の報酬などに充てられ、支払えないと破産手続が開始されません。
2. 予納金の目安: 少額管財なら20万円程度、通常管財なら70万円~数千万円(負債額による)。
3. 資金確保: 会社資産の売却、売掛金回収、代表者からの借入などで準備します。
4. 弁護士への依頼: 少額管財への誘導により予納金を抑え、手続きを適正に進めるために不可欠です。

法人破産を決断するには様々な葛藤があるかもしれません。
ただ、的確な情報と計画的な行動によって、被害を最小限に抑えながら代表者の再出発を図ることが可能になります。

現状を冷静に見極め、必要とされる予納金やその他の費用を踏まえたうえで、まずは専門家への無料相談などを活用し、適正な判断を下していきましょう。

たちばな総合法律事務所では、破産管財人経験のある弁護士が在籍しています。
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