年金の差し押さえはおかしい?その原因と回避策を徹底解説
任意整理
2025 . 12.1
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目 次
年金を受ける権利(受給権)の差し押さえは、法律で明確に禁止されています。
年金は本来、憲法で定められた国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度だからです。
しかし、「例外的な条件」において適法に差し押さえがおこなわれることがあります。
この記事では、「なぜ年金の差し押さえが法的に認められるのか(おかしいと感じる理由と現実)」という疑問を解消し、今すぐできる回避策を弁護士の視点から徹底解説します。
原則として「年金は差し押さえ禁止」です。
しかし、この原則には「2つの大きな例外」が存在します。
国民年金法第24条や厚生年金保険法第41条により、年金を受ける権利(受給権)を担保にしたり、差し押さえたりすることは禁止されています。
公的年金には国民年金と厚生年金の2種類がありますが、一部の私的年金も差し押さえが禁止されています。
以下は、差し押さえが禁止されている主な年金と根拠法です。
保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
2 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。
第三十二条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
2 租税その他の公課は、障害給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。
第三十四条 受給権は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金、脱退一時金及び遺族給付金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
2 租税その他の公課は、障害給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。
これらの法律により、借金(カードローンや住宅ローンなど)の返済が滞っても、債権者が年金そのものを差し押さえることはできません。
また、民事執行法第152条においても、公的給付の差し押さえは原則禁止されています。
年金が差し押さえられるのは、主に以下の3つのケースです。
これは、年金に関する法律(国民年金法など)の差し押さえ禁止規定に「ただし書き」として、税金や社会保険料の滞納がある場合は例外的に差し押さえができると書かれているためです。
国や自治体は、公租公課の滞納処分として、民事執行法の制限を超えて年金の一部を直接差し押さえることが法律上認められています。
年金が銀行口座に振り込まれ「預金」に変わると、差し押さえのリスクが生じます。
最高裁判所の判例(最判平成10年2月10日判決)では、「口座に振り込まれた時点で、年金は差押禁止債権としての性質を失い、一般の預金と同じ扱いになる」という判断が示されています。
そのため、一度銀行口座に振り込まれた預金は、全額差し押さえられる可能性があるため注意が必要です。
これに対して、「年金が振り込まれて預金となった場合でも、年金自体を差し押さえることと同じであり、差押えは認められない」と判断する判例もあります。
ただ、一度銀行口座に振り込まれた預金を差し押さえられる可能性があるため注意が必要です。
過去、公的年金を担保にしてお金を借りられる制度がありました。
例えば、2022年3月末で申込受付が終了した、独立行政法人福祉医療機構の「年金担保貸付制度(国民年金、厚生年金)」「労災年金担保貸付制度(労災年金)」や、株式会社日本政策金融公庫の「恩給・共済年金担保融資(「軍人恩給」「援護年金」等を受給されている方に限り、現在も申込可能)」が挙げられます。
これらを利用して、現在返済されている方に置いて、滞納(未納)がある場合には年金を差し押さえられる可能性があります。
税金や社会保険料の滞納をした場合、行政機関による「年金そのもの」を差し押さえることが法律で認められています。
借金(消費者金融、銀行カードローン、クレジットカードなど)の滞納による差し押さえの場合、債権者は裁判所を通じて「債務名義」(判決など)を取得しなければ差し押さえができません。
これに対して、税金・年金の滞納による差し押さえには、裁判所の判決は不要です。
督促状の送付など所定の手続きを経れば、行政の権限でいきなり差し押さえを実行できます。
電話相談 [10分]・来所相談 [60分]による弁護士相談を実施しています。
なお、電話相談は平日9時~17時にお電話下さい。
年金自体の保険料の未納がある場合、差し押さえを受ける可能性があります。
日本年金機構は近年、厚生労働省の方針に基づき、収納対策を強化しています。
特に「支払能力があるのに支払わない」と判断された人に対しては、容赦のない強制徴収が行われています。
具体的な法的根拠は国税徴収法の例による滞納処分です。
差し押さえが実行されると、本人の意思に関わらず、以下の資産が強制的に換価(お金に換えられること)され、未納分に充当されます。
ある日突然、差し押さえが来るわけではありません。
必ず段階的な「警告」が届きます。
封筒の色(青色→黄色→赤色)が変化することもあるため、無視せずに中身を必ず確認してください。
日本年金機構は「強制徴収の対象基準」を設けています。
この基準に該当し、かつ督促に応じない場合は、財産差し押さえの対象になる可能性が極めて高くなります。
電話相談 [10分]・来所相談 [60分]による弁護士相談を実施しています。
なお、電話相談は平日9時~17時にお電話下さい。
所得が低い場合や、学生、失業中などの正当な理由がある場合は、「免除・猶予制度」を申請し認められることで、差し押さえを回避できる可能性があります。
ただし、デメリットとして将来的に年金受給額に影響が出る場合があります。
本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定以下の場合、保険料の全額または一部(4分の3、半額、4分の1)の支払いが免除されます。
居住地域の年金事務所で申請書を提出します。
生活保護の生活扶助を受けている方や、障害基礎年金(1級・2級)を受けている方などが、届出により保険料が免除されます。
住民票登録のある市区町役場の国民年金担当窓口で手続きをします。
年金を差し押さえされた際に、「差押禁止債権の範囲変更の申立て」をおこなうのも一つの方法です。
本来、年金は法律で差し押さえが禁止されていますが、銀行口座に振り込まれると「預金」という扱いに変わり、差し押さえが可能になってしまいます。
差し押さえにより生活ができなくなることを防ぐため、裁判所に対して「この預金は実質的に年金であり、生活に不可欠なので、差し押さえの対象から外してください(範囲を変えてください)」とお願いする手続きです。
ただ、生活状況や預金の使用状況を踏まえて判断されるため、裁判所に必ず認められるわけではありません。
裁判所から「差押命令」が届いてから、1週間が経過すると、銀行は差し押さえたお金を債権者(貸金業者など)に支払ってしまうため、その前に申立てをする必要があります。
年金の差し押さえの原因が借金問題にある場合、債務整理について弁護士に相談することを強くお勧めします。
年金差し押さえに関する「よくある質問」をまとめました。
不安な点はここで解消しておきましょう。
A. 必ずではありませんが、放置すればリスクは高まります。
特に「所得が一定以上あるのに未納」「督促を無視し続ける」場合は危険です。
逆に、収入が少なく払えない正当な理由があり、免除申請を行っている場合は、いきなり差し押さえられることはありません。
A. 現金、預貯金、給与、不動産、自動車、生命保険など原則として、「滞納者のすべての財産」が対象となります(国税徴収法第47条)。
A. 基本的に「全額納付」しない限り非常に難しいのが現実です。
しかし、生活が立ち行かなくなるなどの特別な事情がある場合に限り、交渉によって解除(または停止)してもらえる可能性があります。
また、差し押さえにより生活が維持できなくなる場合、前述の「差押禁止債権の範囲変更申立て」を裁判所に行うか、換価の猶予(ゆうよ)の申請を行なうことが考えられます。
換価の猶予(かんかのゆうよ)の申請とは、滞納分の全額納付は困難だが、差し押さえにより生活が維持できない場合に、差し押さえた財産を現金化する(換価)のを一時的に待ってもらう制度です。
これは、国税徴収法第151条に基づく制度で、「差し押さえた財産をお金に換える(換価)のを、少し待ってもらう」措置です。
認められれば、差し押さえが一時的に解除されたり、差し押さえ状態のまま換価がストップしたりします。
ただし、その代わりに、「分割納付計画」を立てて、少しずつでも確実に支払うことを約束する必要があります。
国民年金は20歳以上60歳未満のすべての日本在住者が加入対象となる公的保険制度です。
年金は本来、老後の生活を守るために差し押さえが制限される仕組みですが、未納や税金滞納などの問題で例外的に差し押さえられるケースも存在します。
法律上、税金や保険料の滞納に対する回収権限は強力であり、放置することは自身の首を絞めることになります。
もし、借金問題が絡んでいてご自身での解決が難しいと感じたら、まずは弁護士の無料相談を活用してください。
たちばな総合法律事務所では、債務整理の無料相談を受付中です。
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