借金の時効とは?原則5年で返済義務が消える仕組みを弁護士が解説
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2025 . 11.18
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長年返済していない借金について、債権者から督促状や法的な通知書が届き、対応に困っていませんか?
借金の返済義務は、一定期間(原則5年)の経過で消滅する「時効」という制度により免れる可能性があります。
しかし、単純に時間が過ぎただけでは時効は成立しません。
時効を成立させるには、3つの条件が必要です。
まず時効期間が経過していること、次に期間がリセット(更新)されていないこと、そして最後に債務者側から「時効の援用」という法律上の手続きを行うことです。
この記事では、借金の時効制度の基本的な考え方から、時効が成立する具体的な条件、必要な手続き(時効の援用)、時効が成立しづらいケース、そして時効を主張するデメリットや他の債務整理(任意整理・自己破産など)まで、幅広く解説します。
ご自身の借金が時効の対象になるか、また時効以外に解決策があるかを知り、最適な解決方法を見つけましょう。
まずは時効が成立する条件から見ていきます。
借金の時効(消滅時効)とは、債権者(お金を貸した側)が一定期間(原則5年または10年)権利を行使しない場合に、債務者側が「時効の援用」という意思表示をすることで、返済義務が消滅する制度です。
成立には「時効期間の経過」と「時効の援用」の2つが要件となります。
以下では、このうち「時効期間」や起算点(カウントの開始日)など、制度の重要なポイントを解説します。
現行民法では、時効期間は原則として「5年」ですが、いつ借りた借金かによって適用される法律(旧民法か改正民法か)が異なり、時効期間のルールも変わるため注意が必要です。
借金の時効期間は、2020年4月1日に施行された民法改正によって、ルールが大きく変わりました。
ご自身の借入時期(正確には「債権が発生した時期」)が2020年3月31日以前か、2020年4月1日以降かで、適用される法律と時効期間が異なります。
【旧民法の適用】2020年3月31日以前の借金
旧民法では、債権の種類によって時効期間が異なりました。
【改正民法の適用】2020年4月1日以降の借金
改正民法では、時効期間のルールが統一されました。以下のうち、いずれか早い方の期間が経過すると時効が成立します(民法第166条第1項)。
時効期間の計算を始める基準点を「起算点(きさんてん)」と呼びます。
時効期間が5年(または10年)といっても、いつから数え始めるかが非常に重要です。
通常は「権利を行使できる時」が起算点となりますが、具体的には以下のようなケースが考えられます。
✔ 契約で返済期日が決まっている場合
その返済期日の翌日から時効期間のカウントが始まります。
✔ 契約で返済期日を決めていない場合(特に個人間)
お金を貸した側(債権者)が「返してください」と請求(催告)した時から、相当の期間が経過した時点の翌日からカウントが始まります。
✔ 途中で一度でも返済している場合
最後に返済を行った日(最終弁済日)の翌日から、新たに時効期間のカウントがリセットされて始まります。
どの時点を起算点とすべきかは、契約内容や返済状況によって異なり、法的に難しい判断が伴う場合があります。
もし債権者から届いた通知書に「最終返済日」などの記載があれば、それが手がかりになります。
電話相談 [10分]・来所相談 [60分]による弁護士相談を実施しています。
なお、電話相談は平日9時~17時にお電話下さい。
一度進行し始めた時効が「更新」または「完成猶予」されると、時効期間が延びたりリセットされることがあります。
それぞれの代表的なパターンを確認しましょう。
時効に関する用語
時効の更新(こうしん)
それまで経過した時効期間がゼロにリセットされ、その時点から新たに時効期間のカウントがスタートすることです(旧民法の「中断」に相当)。
時効の完成猶予(かんせいゆうよ)
特定の法的手続きなどが取られている間、時効のカウントが一時的にストップすることです(旧民法の「停止」の一部に相当)。
これらを理解せずに放置していると、「もうすぐ5年間が経過して時効が成立するはずだったのに」という事態になりかねません。
具体的な事例をしっかり把握することで、リスクを回避できるでしょう。
債権者(業者・会社)が、法的手続きによって請求を行うと、時効の完成が猶予(ストップ)され、その手続きが終了すると時効が更新(リセット)されます。
時効の更新・完成猶予に関わる法的手続き
裁判上の請求(訴訟の提起)
債権者が裁判所に訴訟を起こすと、その裁判が続いている間は「時効の完成が猶予」されます(民法第147条第1項)。
そして、裁判で支払いを命じる確定判決が出ると、その時点で時効は「更新」され、判決が確定した時から新たに10年の時効期間が設定されます(民法第169条第1項)。
支払督促(しはらいとくそく)
債権者が裁判所に「支払督促」を申し立てると、その手続き中は「時効の完成が猶予」されます。
その後、債務者(あなた)が異議を申し立てずに期間が経過し、仮執行宣言付支払督促が確定すると、その時点で時効は「更新」され、新たに10年の時効期間が設定されます(民法第147条第1項、第169条)。
差押え、仮差押え、仮処分
債権者が強制執行(差押えなど)を申し立てると、その手続き中は「時効の完成が猶予」され、手続きが終了した時点(差押えの取下げなどがない場合)で時効は「更新」されます(民法第148条)。
裁判所からの通知(訴状・支払督促)は絶対に無視しないでください。
もし裁判所から封筒(「特別送達」という郵便で届きます)が届いた場合、それは債権者が法的手続きを開始した証拠です。
これを無視して放置すると、債権者の主張が一方的に認められて判決が出され、時効が更新されて10年延長になるだけでなく、すぐに預金口座や給与を差し押さえられる(強制執行)危険があります。
裁判所からの通知が届いたら、すぐに中身を確認し、弁護士や司法書士などの専門家に連絡・相談してください。
時効の成立を妨げる最も一般的で、債務者が陥りやすいのが、この「債務の承認」です。
債務の承認とは、債務者(あなた)が債権者に対し、「自分には返済すべき借金がある」と認める行為を指します。
債務の承認を行うと、その時点で時効は「更新」され、それまでの期間はリセットされます(民法第152条)。
【債務の承認にあたる具体例】
債権回収の業者は、時効が近いことを知りながら、巧みに債務の承認を引き出そうと連絡してくることがあります。
「少しでもいいから払ってほしい」という言葉に応じてしまうと、時効の援用ができなくなるため、十分な注意が必要です。
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借金を消滅させるためには、債務者から債権者に対して「時効の援用」という意思表示の手続きが必須です。
時効期間が経過しても、自動的に借金が消えるわけではありません。
「時効の援用(えんよう)」とは、「時効期間が経過したので、私は時効の利益(=借金を返済しなくてよいという利益)を受けます」と債権者に対して明確に意思表示することです(民法第145条)。
この手続きは、債権者に対して「時効援用通知書」という書面を内容証明郵便で送付するのが一般的です。
援用手続きは自分で行うことも可能です。
しかし、いつの時点で時効が完成したのか(起算点の判断や時効期間の計算)など、専門的な判断が要求される場面もあります。
自力での手続きは相手方とのトラブルにつながるケースもあるため、不安があれば弁護士や司法書士などの無料相談を利用し、アドバイスを受けるとよいでしょう。
時効の援用は、後で「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、法的な証拠を残すために、「内容証明郵便」に「配達証明」を付けて送付するのが最も確実な方法です。
1時効の成立要件を確認する
確証がない場合は、参考情報として信用情報機関(CIC、JICCなど)に信用情報の開示請求を行い、取引履歴(最終弁済日)を確認する方法があります。
2時効援用通知書を作成する
内容証明郵便の作成時には、以下の項目を正確に記載する必要があります。
3郵便局から「内容証明郵便+配達証明」で送付する
【注意点】
【時効援用の費用】
自分で手続きする場合:
専門家(弁護士・司法書士)に依頼する場合:
専門家に依頼するメリットは、失敗のリスクを最小限に抑えられる点です。時効期間の正確な調査から、通知書の作成・送付、債権者とのやり取り、万が一の裁判対応まで、全てを任せることができます。
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銀行や消費者金融といった貸金業者だけでなく、個人間(友人、知人、家族間)の金銭の貸し借りにも時効は適用されます。
ただし、口約束だけのケースは争いが起こりやすいため、より慎重な確認が必要です。
個人間の貸し借りでは、契約書や借用証など正式な書類を取り交わしていない場合がよくあります。
そのため、債権者が請求を継続していたか、実際の最終返済日はいつだったかなど、事実関係が曖昧になりがちです。
【個人間の借金の時効期間】
2020年3月31日以前の借金:
原則として10年間です(旧民法第167条第1項)。返済期日の定めがなければ、「相当の期間を定めた催告」が必要など、起算点の判断がより複雑になります。
2020年4月1日以降の借金:
改正民法が適用され、「知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方となります。
後になって「言った、言わない」の争いになると、双方にとって精神的な負担が大きくなります。
個人間であっても、時効を完成させるためには「時効の援用」の通知が必要です。
借金の時効は、条件が揃えば成立しますが、実際には失敗事例が非常に多く存在します。
その最大の要因は、知らず知らずのうちに「債務の承認」(2-2参照)をしてしまうことです。
時効を狙うなら、よくある失敗事例を事前に把握し、リスクを回避しましょう。
時効援用に関する失敗事例
失敗例1:うっかり「債務の承認」をしてしまった
失敗例2:裁判所からの通知を無視してしまった
失敗例3:時効期間の計算を間違えていた
時効を成立させるには、債権者からの連絡に対し「債務の承認」をせず、裁判上の請求にも適切に対応(または放置しない)することが前提であり、細心の注意が必要です。
「時効の援用」は法的に認められた権利ですが、以下のようなデメリットを理解しておく必要があります。
借金の時効が成立したとしても、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に登録されている事故情報(「延滞」「異動」など)がすぐに消えるわけではありません。
時効の援用と信用情報機関の扱い
JICC(日本信用情報機構)
主に消費者金融などの貸金業者が加盟。
時効の援用が認められると、ファイルは「完済」扱いとなり、その時点から(または登録から5年経過で)削除される運用が多いです。
CIC(株式会社シー・アイ・シー)
主にクレジットカード会社が加盟。
時効の援用を行っても、事故情報が「異動」として残ったまま、契約終了(時効成立)から5年間は情報が消えないケースがあります。
このため、時効が成立しても、その後約5年間は新たなローンやクレジットカードの審査に通りにくくなる可能性が高いです。
信用情報機関の記録が消えたとしても、時効援用を行った会社(業者)やその関連法人の内部には、「過去に時効援用をした顧客」として半永久的に情報が残る(いわゆる「社内ブラック」)可能性があります。
その結果、将来的にその会社や関連グループ企業のサービス(クレジットカード発行やローン)は利用できなくなる可能性が極めて高いです。
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時効の援用が難しいケースもあります。
例えば、時効期間が経過していない、途中で更新事由がある場合です。
また、時効のデメリット(信用情報)を避けたい、複数の借金をまとめて整理したい、といったニーズには時効以外の解決策が適していることもあります。
借金問題の法的な解決策を「債務整理」と呼び、主に以下の3つの方法があります。
債務整理の主な3つの方法
任意整理
弁護士が債権者と直接交渉し、将来の利息をカットしてもらい、残った元本を3年~5年程度で分割返済していく方法。
裁判所を通さないため、手続きが比較的簡単で、整理したい借金を選べます。
個人再生
裁判所に申立てを行い、借金総額を大幅に減額(例:5分の1や10分の1に)してもらい、残りを原則3年で返済していく方法。
住宅ローン特則を利用すれば、家を手放さずに借金を整理できる場合があります。
自己破産
裁判所に申立てを行い、返済能力がないことを認めてもらい、借金の返済義務を全額免除(免責)してもらう方法。
一定の財産は手放す必要がありますが、借金をゼロにして生活を再建できます。
時効を検討するような古い借金(特に2010年以前からのキャッシング)の場合、利息を払いすぎており、「過払い金」が発生している可能性もあります。
この場合、時効の援用ではなく、過払い金請求を行うことで、逆にお金が戻ってくるケースもあります。
自力で時効を待つよりも、法的な手段をとったほうが早期に生活再建が可能となるケースも珍しくありません。
将来の目標や家計状況に合わせて最適な方法を選ぶことが鍵となります。
ここでは、借金の時効に関して、お客様から寄せられることの多い「よくある質問」にお答えします。
A. 主債務者(お金を借りた本人)が時効の援用をした場合、主債務が消滅するため、保証人・連帯保証人の保証債務も消滅します。
なお、主債務者や保証人・連帯保証人の行為(時効援用や債務の承認)が、お互いにどのような影響を与えるか、以下の一覧表にまとめます。
A. 絶対に無視せず、すぐに専門家(弁護士・司法書士)に相談してください。
2-1で解説した通り、裁判所からの通知書を放置すると、時効が更新(10年延長)されるだけでなく、強制執行(差押え)を受けるリスクがあります。
支払督促には「異議申立書」、訴状には「答弁書」を、定められた期間内に裁判所に提出する必要があります。
もし届いた書類に書かれた請求内容が時効期間を経過している場合は、その異議申立書や答弁書の中で「時効を援用する」と主張することが可能です。
対応には専門知識が必要ですので、速やかな相談が不可欠です。
A. 弁護士や司法書士に依頼して手続きを進めれば、ご家族や会社に知られる可能性は極めて低いです。
専門家に依頼すると、債権者とのやり取りはすべて専門家が代理人として行います。
債権者からご本人やご家族、勤務先の会社へ直接連絡がいくことは原則としてありません(貸金業法で禁止されています)。
ご自身で内容証明郵便を送付する場合、債権者から反論や確認の連絡が自宅に来る可能性はゼロではありませんが、専門家に依頼すればその窓口にもなってもらえます。
冠省 本職は、●●●●(昭和51年12月31日生。以下、「通知人」といいます。)の代理人として本書を呈します。
通知人は、約10年前に、貴協会を連帯保証人として、●●銀行から500万円の借入れをしました。通知人は●●銀行又は貴協会に最後の返済をしてから5年以上経過しており、消滅時効期間が経過していることから、本書で時効消滅援用の意思表示を行います。
なお、本職は、通知人の代理人に就任しましたので、今後のご連絡は本職宛にしていただくようお願いいたします。
草々
令和8年1月5日
〒530-0003
大阪市北区堂島1-1-5
関電不動産梅田新道ビル4階
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電 話 06-6467-8775
FAX 06-6467-8776
通知人代理人
弁護士 橘 高 和 芳
〒●●●-●●●●
●●県●●●●●●●1番1号
●●●●信用保証協会 御中
借金の時効は、返済義務から解放される非常に重要な制度ですが、手続きや知識が複雑なため、誤った理解やミスが大きなトラブルにつながります。
消滅時効を成立させ返済から解放されるには、以下の3つのハードルを全てクリアする必要があります。
時効の援用を正しく行うためには、最終返済日や契約内容、改正民法の知識が欠かせません。
時効の成立のみにこだわると、かえって不利な状況に陥る危険があります。
例えば、債権者からの連絡(督促状、通知書)を無視し続けたり、うっかり債務を認める発言をしてしまったりするケースです。
借金問題の解決には、時効の援用だけでなく、任意整理、個人再生、自己破産など、多角的なアプローチを含めた総合的な判断が求められます。
もし長年放置している借金の督促状が届いてお悩みの場合、ご自身のケースが時効に該当するのか、それとも他の方法が最適なのか、まずは弁護士や司法書士などの専門家へご相談ください。
専門家に相談すれば、あなたの状況に合わせた最適な解決策の提示とサポートを受けられ、精神的な不安からも解放されるでしょう。
たちばな総合法律事務所では、借金問題の初回無料相談を実施中です。
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