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法人の破産申立手続の「必要書類」は何がどこまで必要?


法人破産

2021 . 05.28

 

執筆者【 弁護士・税理士 】
たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 橘髙 和芳

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士
弁護士・税理士 山田 純也

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事
。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。



0.はじめに

このコラムでは、廃業を決意された会社経営者の方に向けて、裁判所に対して破産申立をする際に添付する「必要書類」について解説しています。

1.法人破産手続の準備から申立までの流れ

法人の破産申立を決意された会社経営者、個人事業者の方は、どのように準備を進めることになるのでしょうか。

流れとしては、① 破産を申し立てる日を決め、② それに向けて破産申立書を作成し準備し、③ 管轄の地方裁判所に申立をおこなう、ことになります。

ここでは、破産申立までの対応・作業の多くを占める「②破産申立書の作成・準備」のための必要となる書類の収集や作成について解説します。

法人破産の申し立てに必要な添付書類の種類は多いため、いかに効率的に収集・作成するかが、スムーズな手続進行ができるかの重要なポイントとなります。

法人破産の手続きの申立から終了までに流れについては次のコラムで解説しています。

関連記事|法人破産手続の申立準備から終了までの流れ
経営者の方や、経理担当者向けに法人破産申立ての流れについて解説しています。

 

2.破産申立の必要書類

破産申立書の書式や添付する必要書類、破産手続の運用は、各地方裁判所によって異なります。
しかし、必要書類については大きくは変わらず、次のような書類が必要となります。

細かな書類を知るよりも、まずは「資産」と「負債」に分かれるという大きな分類で必要書類を理解される方が良いでしょう。

「破産申立書の必要書類(大分類)」
0.基本添付書面
 ・申立手数料(収入印紙を貼ったもの)
・法人登記の全部事項証明書
  (商業登記簿謄本)
 ・取締役会議事録など
  (取締役会・理事会での役員による自己破産の同意書面。
取締役会未設置の場合、全取締役の過半数の同意が要件)
 ・報告書(陳述書)
  (会社が破産に至る経緯・事情)
 ・委任状
  (弁護士に依頼した場合)
1.資産関連(プラス)

 ・預金、積立金
 ・売掛金
 ・貸付金
 ・退職金
 ・有価証券、会員権
 ・動産(什器備品、在庫・仕掛品など)
 ・不動産
 ・賃貸保証金
 ・保険
2.負債関連(マイナス)
 ・従業員関連の書類
 ・買掛金
 ・借入金、保証
3.経理関連
 ・決算書
 ・帳簿

 

2-1.資産関連の必要書類

資産関連には、次のような必要書類があります。

破産管財人が会社が保有する資産の換価業務を進めるにあたって、状況を把握するために必要となる書類です。

破産申立書の財産目録に記載をおこないます。
ただ、財産目録に資産を記載するだけでは足りず、財産評価額が分かる資料とともに提出します。

たとえば、会社名義となっている法人所有不動産の登記事項証明書、所有自動車は中古自動車の買取業者などによる査定書やレッドブック、法人の保険契約があれば解約返戻金などの疎明資料が必要になります。

「資産関連の必要書類の一覧」
1.預金の関係
 1-1.預貯金通帳
  おおよそ2年分の取引の記載がある明細が必要です。
  紛失の場合、銀行等に再発行を依頼します。
  また一括記帳がある場合には、一括記帳の明細の発行を依頼します。
  WEB通帳による場合は、画面を印刷し準備します。
代表者個人名義ではあるものの事実上会社の取引で利用していた口座の通帳も提出が必要になる場合もあります。
 1-2.当座勘定照合表・預金出納帳
 1-3.手形(帳)、小切手(帳)
 1-1.売掛台帳
2.売掛金の関係
 2-1.請求書(控え)
 2-2.納品書(控え)
 2-3.契約書、発注書
3.貸付金の関係
 3-1.金銭消費貸借契約書(借用書)
4.退職金の関係
  退職金がある場合にのみ必要となります。
 4-1.退職金規程
 4-2.退職金計算書
5.有価証券の関係
 5-1.株券、出資証券
 5-2.会員権証書
6.不動産の関連
 6-1.登記権利証・登記識別情報通知書
 6-2.不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
  法務局にて取り寄せをおこないます。
  共同担保目録などの記載がある謄本を取寄せます。
 6-3.固定資産税評価証明書
  役所の資産税課で交付を受けます。
 6-4.不動産査定書
  不動産業者による査定を依頼し、書面で査定書を出していただきます。
7.車両の関連
 7-1.所有車両の自動車検査証(車検証)
 7-2.所有車両の査定書
  ※ 有限会社オートガイド発行の下記資料写しでも可
   「オートガイド自動車価格月報」
8.賃貸保証金の関連
 8-1.賃貸借契約書
9.保険の関係
 9-1.保険証券
 9-2.解約返戻金証明書
10.行政の関係
 10-1.許可証

なお、財産目録と評価額の分かる疎明資料は、資産の換価処分を進めるだめだけではありません。
「提出された資料から分かる以外の資産がないか」「不正に処分された資産がないか」「破産の理由がギャンブルではないか」などの確認のためにも、これらの資料は利用されます。

意図的に会社の財産を隠した場合、破産詐欺罪(破産法265条:10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)や、個人の自己破産であれば免責不許可(めんせきふきょか。負債の返済義務を免除されない。破産法252条1項列挙事由参照)となり、借金が残ってしまう可能性があります。

また、不当に安い価格で会社の財産を処分した場合にも、免責不許可とされてしまう可能性があります(破産法252条1項3号)。
不当に安い価格で財産を処分することは、破産者に対する債権者へ配当するための原資である「破産財団」の減少を生じさせることになります。
そのため、破産管財人には「否認権(ひにんけん)」と呼ばれる権利があります。

否認権は、破産手続開始前の破産者の行為や、第三者の行為による効力を否定して破産財団の回復をはかるための権利行使のことを言います(破産法160条)。
例えば、破産手続開始前に存在していた唯一価値のある不動産を不当に安く売却してしまったような場合に、その売却処分(行為)を否定して不動産を取り戻すことができます。

こうしたことからも、破産手続開始前に在庫商品や仕掛品などの売却処分をおこなう場合には、後から破産管財人に否認されないよう、不当に安い金額で売却することがないよう、適切な業者・企業に対して相見積もりのうえで適切な金額で売却処分をおこない、の過程で作成・受領した書類(見積書、売買契約書など)を保管しておくようにしましょう。

2-2.負債関連の必要書類

破産手続に必要な「負債に関する」書類は、次のとおりです。

「負債関連の必要書類の一覧」
1.借入金の関係
 1-1.借入、保証に関する契約書(借用書)
 1-2.リース物件の契約書
 1-3.滞納している税金(公租公課)の納付書
2.従業員の関係
 2-1.賃金台帳(直近2~3期分)
 2-2.給料明細、タイムカード、出勤簿、業務日誌(営業日報)
 2-3.就業規則、給与規定、退職金規程
 2-4.雇用契約書、雇い入れ通知書
 2-5.解雇通知
 2-6.源泉徴収票(所得税)
 2-7.給与所得者異動届(住民税)
 2-8.資格喪失届(社会保険)
 2-9.離職票(雇用保険)

従業員の関係

従業員に関する書類は、給与の未払がある場合において、破産管財人が「労働者健康安全機構」の未払い賃金立替制度(未払い賃金の一部を同機構が立替え、従業員に支払をする)の証明をおこなっています。
その証明作業のなかで必要となりますので、倒産後における従業員の生活を守るためにも、破棄することなく手元に保管しておくようにしてください。


ただし、解雇の日から破産申立の日が6か月を経過している場合には、立替えを受けることができませんので、ご留意ください。

なお会社破産における従業員の解雇予告をおこなわかった場合には、債権者集会に債権者として出席することとなり、債権者集会が荒れ混乱することがないようにします。
そのため、解雇予告はおこなっておくようにしましょう。

2-3.経理関連の必要書類

破産手続に必要な会社の「負債に関する」書類は、次のとおりです。

法律上(破産法や破産規則など)、貸借対照表および損益計算書を添付することなどが求められています。

相談時に「直近の決算書がない」とお聞きすることがあります。
それまでの顧問税理士等に手配をして、貸借対照表および損益計算書を作成しておくことが良いでしょう。
なお、裁判所から貸借対照表および損益計算書以外にも「決算書」の提出を求められることが一般的です。

「経理関連の必要書類の一覧」
 ・総勘定元帳(直近2期分)
  最終の決算以降の経理関係書類に加え未処理伝票、
  未請求となっている請求書、
  償却資産台帳なども用意します
 ・現金出納帳
 ・売掛台帳
 ・請求書控え、納品書控え、契約書・発注書
 ・預金通帳、預金出納帳、当座勘定照合表、手形帳、小切手帳
 ・決算報告書・税務申告書控え(直近2年分)
 ・ 経理データ

破産手続をスムーズに進めるために、次の点に注意しながら経理関連書類の収集をおこなう必要があります。

1つ目は、経理処理をおこなうソフトウェア、パソコンの確保の問題です。
廃番によりソフトウェア、パソコンの入手が困難となる場合があります。
そのため、経理業務で使用していたパソコン自体を破棄することなく保管すること。
あるいは、紙で全て打ち出しておくなどの作業をおこなっておくことが望ましいと言えます。

2つ目は、経理担当者の確保の問題です。
未請求となっている売掛金や、財務状況を経理担当者が一番よく把握している場合があります。
廃業、事業停止をおこなった時点で、経理担当者が再就職などにより連絡が取りづらくなることがあります。
そのため、経理担当者からの引継ぎを受ける、未処理の伝票を起こしてもらう、破産手続にあたり破産管財人からの協力要請にこたえていただくようお願いしておくことが望ましいでしょう。

3つ目は、建物明渡しの際の経理書類の廃棄の問題です。
破産申立前に、賃貸していたテナント・事務所・倉庫などを明け渡す際に必要書類を誤って廃棄してしまわれる方がおられます。
しかし、これまで解説してきたように破産申立にはさまざまな必要書類があります。
必要、不必要の判断が分からない会社経営者の方は、廃業を決断後すぐに弁護士に相談するなどして対応されると良いでしょう。

3.破産申立書の必要書類の収集(まとめ)

以上のように、法人破産に限らず経営者個人の破産申立について多岐にわたる書類が必要となります。
これらの必要書類は、会社に存在する書類であることがほとんどです。

しかし、「紛失した」「所在が不明」「どこまでが必要書類であるか分からない」「債権者から取寄せないといけない」など疎明資料の確認、収集、作成に手間がかかることがあります。

破産申立ての必要書類を効率よく集めることは、経営者の方のすみやかな生活再建をおこなう上では重要なポイントです。

当法律事務所では、申立書に添付する各種疎明資料の収集・作成から提出、債権者の窓口対応、裁判所・破産管財人とのやりとりについてフルサポートしております。
また、弁護士に依頼されることで、債権者からの取り立て・督促は止まります。
代理人として取引先、従業員、債権者の窓口対応をおこないます。

会社の廃業、破産による借金の清算を決断された会社経営者の方は、まずは一度「無料法律相談」をご利用ください。
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会社経営者や経理担当者の方は、ぜひお気軽にお問合・ご相談ください。

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